教職員の方へ

読みたいと思わせるコメントは? 熱いコメントに白熱する審査会

「読書マラソンコメント大賞」は、学生の書いたコメントをきちんと評価しようと始まったイベントで、今回で6回目を迎える。心を打つコメントは、大学生協の書籍売り場で「ポップ」のように張り出されることもあり、多くの人がその本を手に取るきっかけにもなる。選考会は10月29日、東京・杉並区の大学生協会館で開かれた。今年は9264通の応募があり、昨年を511通上回った。選考会には、評論家で早稲田大学教授の永江朗氏や大学生協職員、学生代表ら12人が審査委員として参加した。「出だしの表現で、読んだことのない人にいかに読みたいと思わせるか」「その本を読んだことで、何かのアクションにつながったか」「自己満足ではなく、伝えたい気持ちがあるかどうか」「ストレートで熱いコメントを」と、審査委員も真剣勝負で選考会にのぞんだ。選考会は難航を極めた。審査委員は「本当にこれが賞にふさわしいのか」と互いの意見をぶつけ合い、議論を重ねた。今年は金賞、銀賞、銅賞、奨励賞のほかに、専門書を対象とした「アカデミックコメント賞」が設けられた。小説や文庫が中心の読書マラソンコメント大賞に、新たなジャンルと可能性が加わったといえる。

永江 朗氏

あえて「手書き」で伝えるおもしろさ

 
 

評論家・早稲田大学教授
永江 朗

感想文でもなく、書店のポップでもなく、ツイッターでもない。あるいはそれらをすべて含んだものが、読書マラソンのコメント。だからほかにはない、オリジナルな魅力がありますね。大学生協ならではのイベントといえるでしょう。僕は今年で3回目の参加になりますが、コメントがどんどんうまくなってきたように思います。どう書けばアピールできるか、わかってきた感じがします。素直な声を書くだけじゃなく、どれも小技がきいていて、読ませる力がある。ポップをつくるような感覚で書いているのかもしれません。いまどき、あえて手書きで伝えようなんて、アナログでいいじゃないですか。最初は「こんなことやって、本当に応募がくるのかな」と疑心暗鬼だったけれど、それは僕の杞憂でしたね。自分の温度をより伝えやすいのは、やっぱり手書き。みんな、どこかでそれを感じているんだと思う。自分はこんなふうに感動して、これをすすめたいんだという思いが、グッと迫ってきます。コメントから、いまの学生が同世代の作家の作品を好んで読んでいることがわかります。本離れが進んでいるとかよくいわれますが、そんなことはありません。コメントを書くことによって、「伝える喜び」あるいはその難しさを知る。みんな、おもしろがってやっていますね。コメントを読んで、僕も読みたくなりました。(談)

全国賞受賞者喜びの声
金賞福井大学 4年 鈴木鯖子さん

「あしたはうんと遠くへいこう」

わたしは本が大好きです。どんなジャンルの本も読みます。ただ不思議に思うことがあります。それは、自分が体験したことのないものに関する物語にも、現実にはありえないファンタジーにも、必ずどこかに自分と通じるものがあることです。そんなとき実感します。すべての根本に「その人」があることを。文章は怖いものです。書いた人自身を丸ごと映します。だからこそ書くことは怖い。それでもわたしは、この本の感想を文章にしたくてたまらなかった。こんな本があるんだよ、とたくさんの人に知らせたかった。わかち合いたかった。この賞をいただいて、それを伝えられたことを本当にうれしく思います。ありがとうございました。

銀賞早稲田大学 2年 和紙さん

「ペンギン・ハイウェイ」

  小さく硬いぶどうの房を、ぱつん、と花鋏で落としたときに受賞の封筒を受け取りました。中には「銀」の文字がぶら下がるA4用紙にその他もろもろ。陽と紙の眩しさに目を細めて庭から家内まで引き上げ、しばらくむっつり腰を掛け、ああロートレアモン伯爵、ランボーの全集も買えるかな、とただそれだけを思った。屋外よりも暗い灯 りの下、椅子を引いて座り直し、前傾姿勢のままシャーペンを握って、まんじりともせず下線の空白を見詰めていた。視線で埋めつくしても、勝手に文字が紙上を埋めることはない。かきだせない、戸山図書館円卓の席上。後頭部に風を滑らせ無言の学生たちが通りすぎる。頭の中では文字にならずにたくさんの言葉が流れていく。ようやくペン先が着地しても、なんどもけしてかきなおす。そうやってコメントもこれも、書き、書きました。感想代理、もうこれ以上は消しません。

銀賞弘前大学 2年 M.Kさんさん

「レインツリーの国」

  本を読むと、心があたたかくなったり、逆にとても落ち込んだりします。 そうやって人の心を動かせるってだけで、本というものはすごいのだと思います。そしてそのすごい本と同じくらい、本を通じて感じたことというのも大切なのだと思うのです。なので今回、自分の気持ちを言葉に残す機会を得たこと、そしてそれが認められたことがとてもうれしいです。これからもたくさんの本と出会えたら幸せです。

受賞コメント作品

金賞

あしたはうんと遠くへいこう

著者
角田光代
出版社
角川文庫

 私はこの女が嫌いだ。小説の主人公にあるまじきアンポンタン。どーしようもない男達に、どーしようもないほど惚れて、利用し、利用され愛されたいよ、褒められたいよ、と必死に叫ぶ。誰から見ても愚かな子だ。
 それなのに、この物語の最後、私は不覚にも涙を流した。一緒だったから。私だって願っているのだ。自分でも驚くほどに誰かを好きになった時、「すげえな、おい」と笑える日が来ることを。あるいはその台詞を愛する人から聞くことを。訂正する。これは誰かと誰かの恋愛小説じゃない。私とあなたの自伝でもあるのだ。

ペンネーム 鈴木鯖子     福井大学 4年
銀賞

ペンギン・ハイウェイ

著者
森見登美彦
出版社
角川書店

 ブラックコーヒーにカカオの効いたチョコレートを1欠片溶かしこみ、それを飲む。さすれば諸君も『ペンギン・ハイウェイ』を味わったと同然である。などと大言壮語すれば作者に怒られるかもしれない。
 しかし他に良き喩えがあるだろうか、反語。主人公のアオヤマ少年は、大人というには早過ぎて、子供というほど幼くなく、かといって盗んだバイクで走り出したり、妄想の世界に没入する年齢でもない。ほんのわずかな精神的余裕と正直に突き進む好奇心を持って、目の前の現実を生きているのだ。汗や唾液や鼻水から出来る「すっぱい森見登美彦」は、この作品に(あんまり)いない!全てを巻き込み、飲み込んで、綺麗なコーヒーを作ったのだ。

ペンネーム 和紙さん     早稲田大学2年
銀賞

レインツリーの国

著者
有川浩
出版社
新潮社

 こんな風に人と出会えたら、どんなに素敵だろう。読み始めてすぐそう思った。読み終えてすぐ、無性に誰かに会いたくなった。他人のことを本当に理解することなんて、できない。その人と自分にどれだけ強い絆があっても、だ。現実に氾濫する共感の言葉が薄っぺらなものだってことは、きっとみんなどこかで気付いている。疑うならば「その気持ちわかるよ」なんて台詞が揺ぎ無い本心から発せられて いるか考えて欲しい。そのことを改めて、言葉というもので、この本は突きつけてくれる。他人と繋がることがいかに難しいことかも、それゆえに懸命になることも伝えてくれる。
 きれいごとだらけだったなら、きっと胸は打たれなかった。

ペンネーム M.Kさん     弘前大学2年
銅賞

こころの処方箋

著者
河合隼雄
出版社
新潮文庫

 まあいっかって気にさせてくれる本です。この前テストがあって、ものすごくがんばったんですが、全然うまくいかなくて落ち込んでいた時にこの本をみつけました。まず、この本をよみはじめた時も、ああ、はやく勉強しなきゃとあせっていたのですが、「マジメも休み休み言え」って書いてあったので、そうかなあとよみすすめると「やりたいことはまずやってみる」。ああ、たしかにストレスたまっていたなあ。「逃げるときはもの惜しみしない」。中途半端に休んでたかもなあ。1冊よみおわると、少しほっとしました。人間なんてたいしたことないですね。
 しょうがないことってありますよね。各章のタイトルが処方せんになっているので、いつでも使えるよう、メモしておきます。

ペンネーム みかんさん     名古屋工業大学1年
銅賞

回転ドアは、順番に

著者
穂村弘・東直子
出版社
ちくま文庫

 こんなに素敵な本は始めて読みました。 既存の小説の形をとらず、短歌と詩によってのみで男女の出会い、初デート、プロポーズ、別れ、を描くという斬新な作品。小説ならば100説明するところを、この手法では60、70ほどしか説明できません。ですが、短い言葉の連なりの中に男女の繊細な気持ちを想像させるモノがあり、読んでいる間中、綺麗な言葉の連なりと頭の中で絶えず生まれていくイメージを楽しむことが出来ます。誰かにプレゼントしたくなるような、とってもとっても素敵な本だと思います。

ペンネーム もとみやさん     早稲田大学1年
銅賞

砂 漠

著者
伊坂幸太郎
出版社
新潮文庫

 日本国中の大学生に告ぐ!今すぐこの本を読んでほしい!シラバスとにらめっこして、少しでも楽な授業計画を練っている君!!なんとなく大学生活にたいくつしているそこのあなた!!今いるこの"大学"がオアシスだって知ってた!?私は知らなかった。就職活動で洗礼を受け、この本に出会ってあらためて確認し覚悟を決めた。正直もっと早くこの本に出会っていれば......と思う。だからこそ、今あなたに読んでほしい。人生の先輩がくれた、砂漠に出る直前のオアシスでの過ごし方を考えさせてくれる物語を。

ペンネーム ちょこすこさん     大阪大学4年
アカデミックコメント賞

「分かち合い」の経済学

著者
神野直彦 
出版社
岩波新書

 市場原理万歳、もっと競争しましょう、敗者は努力が足りません。
 当然の結果だよ、落ちこぼれるのは、自己責任でしょ。われわれの生きる社会はいつからそれが「当たり前」になってしまったんだろう。しかし誰も不思議に思わぬのだろうか。誰がそう言った科白を吐いているのか、ということを。人は一人では生きられぬという人がいる一方で、何でも金で買えると豪語する輩もいる。社会は自分一人で動かせるものではない。人がまともに生きるのさえ困難な時代だからこそ、「分かち合い」窶萩、存、協力とでも言えるのか、それがいかに大切なことか。
 この本が世に問うたことがいつ評価されるかわからないが、誰もがこの社会を生きる当事者であることを自覚し、行動しなければならないのではないか。世迷い言だ、絵空事だとののしられようとも。

ペンネーム Mr Rさん     千葉大学大学院生
アカデミックコメント賞

政治の象徴作用

著者
マーレー・エーデルマン
(法貴良一訳)
出版社
中央大学出版部


 政治学の専門書で、一部には「読みにくい」と言われるけれど、美しい。美しさにおいて、この本は詩や小説にも劣らない。 美しさの秘密は、説明しているようで実は語っていること。美しい言葉が連なって流れている。
 この本の語る政治学は、ふわふわしてゆらゆらして捉えどこ ろのない政治学。ファジーという言葉がぴったりな政治学。官僚とか政党とか地方自治とか......政治と聞いて、こういうものしか思い浮かばない人には是非読んでほしい。

ペンネーム ツバ子さん     同志社大学3年
アカデミックコメント賞

論理哲学論考

著者
ウィトゲンシュタイン
(野矢茂樹訳)
出版社
岩波文庫

 何を言ってるんだかよくわからない。しかし、それがズバ抜けて凄まじいことであるという点は理解できるという種類の物が存在する。本書は私にとってまさにそのような一冊となった。 比較的短く記されていく彼の「命題」は、一つ一つが意味不明の弾丸として身体を撃ち抜く。私は改めて体内に残された弾丸の意味を理解するため、それらを取り出し、観察しなければならない。後に私は知ることになるのだろう。ウィトゲンシュタインと出会ってしまった自分は、もうそれ以前の自分に戻ることができないということを。

ペンネーム しむしむさん     早稲田大学4年
奨励賞

キケン

著者
有川浩
出版社
新潮社

 大学生。
思いっきりばかができること。自分の専門が見つかること。
悩み苦しむこと。その実、その悩みはくだらないこと。
一生ものの友ができること。けんかもすること。
笑い話に底がないこと。
大人になること。同時に子どもになること。
そして何より、一生で一度の学生時代に終わりが来ること。
大学生。
私は"キケン"の彼らのように大学生になれているだろうか。

ペンネーム うめさん     広島大学2年
奨励賞

夜は短し歩けよ乙女

著者
森見登美彦
出版社
角川文庫

 読み始めてすぐに「やられた!」と。こんなにも心地 のよい物語に私は出会ったことがなかった。
 現実的であり非現実的であり。現代風であり古風であり。
 本来同時に存在し難い相反する二つ事象が成り立っている。 それはファンタジックでノスタルジックでアンニュイな不思議な世界観を、京都という舞台が、独特な言いまわしが見事に表現しているからではないだろうか。かつて見たこともな いような風景、出会ったこともない登場人物。活字で表されているだけなのに、色彩や表情、匂いまでもが浮かんでくる。
 恐るべし森見氏。私も黒髪の乙女に恋をしたようだ。

ペンネーム サムスンさん     愛知教育大学3年
奨励賞

リズム/ゴールド・フィッシュ

著者
森絵都
出版社
角川文庫

 叶わない夢もあることを知ったとき。夢を追い続ける だけの情熱と覚悟が自分には足りないと悟ったとき。長年やりたいと思ってきたことが本当は違ったと気付いたとき。
 自分が空っぽになる恐怖を感じた。
 主人公のさゆきが自分の夢に向き合った15のとき。タイミングは人それぞれでも、誰にでもそのときはやってくるのだろう。そんな"15のとき"に自分らしくいられるヒントをこ の本はくれる。将来の夢が見つからない人も、夢の過程でつまずいた人も、みんな自分のリズムを忘れているだけなのかもしれない。あなたは、自分のリズムを大切にしていますか?

ペンネーム れおさん     慶應義塾大学2年
奨励賞

[小説]フェルマーの最終定理

著者
日沖桜皮
出版社
PHP研究所

 全くもって自慢にならないが、数学が嫌いだ。高校時代は正直憎くすらあった。数字と記号の羅列は意味不明の暗号でしかなくて、授業は眠く、スラスラと問題を解いていく友人は頭のつくりが違うのだとしか思えなかった。ところが、この本を読んでうっかり「数学って面白い」なんて思ってしまったのだ ! 本文が小説形式で読み易かったのもあるが、それ以上に、数学者たちが実はロマンチストで、何より数学というもの が美しいのだと知ったからだ。正直理屈の1割も分かってないんだろうけど、それでも3世紀半もの間人々の心をとらえた数式の魅力の一片は、私にも十分伝わった。ああ! せめて高校生の時にこの本があったら、私と数学の間にある絶望的溝は生まれなかったんじゃなかろうか。

ペンネーム 落窪姫2     立命館守山高校
奨励賞

デモクラシーの帝国

著者
藤原帰一 
出版社
岩波新書

 誰もが民主主義の実現を平和の条件だと信じている現代。
 本当にそうなのか?! 疑問を持つことなく受け入れて、私たちは今デモクラシーの帝国の支配におどらされているのだ。この本を読むことでその事実に気付く。そして、世界の本当の幸せについて考え、偽善の平和を見破ろうとする意識を持つことができるようになる。そうした人が増えなければ私たち人間は知らぬまにデモクラシー帝国のための奴隷と化すだろう。


ペンネーム 石内弥里さん     立命館高校3年

立命館からえらばれたナイスランナー賞

タイトル 著者 出版社 ペンネーム
鞄に本だけつめこんで 群 ようこ 新潮社  
凍りのくじら 辻村深月 講談社文庫 ぼたん
小惑星探索機はやぶさの大冒険 山根一眞 マガジンハウス
鴨川ホルモー 万城目 学 角川文庫 じゃんが
子どもが育つ条件 柏木恵子 岩波書店 たんぽぽ
99のなみだ 花 池田晴海 秦文堂 プーさん
サマーウォーズ 岩井恭平 角川文庫
砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない 桜庭一樹 角川文庫 湖妃
ダレン・シャンⅠ~ⅩⅢ ダレンシャン 小学館 ちょこ
ハッピーバースディ 青木和雄 金の星社  
永遠虹路 綾崎 隼 メディアワークス 如南露
世間のドクダミ 群 ようこ 筑摩書房 ハリネズミ
グッドバイ 太宰 治 新潮文庫 5
宇宙への秘密の鍵 ホーキング 岩崎書店 おち
卒業うどん 服部千春 講談社 こっちゃん
桐島、部活やめるってよ 朝井リュウ 集英社 苹果
歳三、往きてまた 秋山香乃 文春文庫 京純
私はなんでも知っている 令丈ヒロ子 ポプラ社 Tukasa
世界屠畜紀行 内海旬子 まそっぷ!  
我らが隣人の犯罪 宮部みゆき 文春文庫 まっちゃ
ブレイブ。ストーリー 宮部みゆき 角川文庫  
そのとき彼によろしく 市川拓司 小学館文庫 なぎっちF
ドグラ・マグラ 上 夢野久作 角川文庫  
屍鬼 小野不由美 新潮文庫  
西の魔女が死んだ 梨木香歩 新潮文庫 えりのん
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