TRANSLATE

PickUp

2018.06.07

5月のブックカフェレポート

ニュース

2018年5月17日(木)OICブックカフェレポート

5月にしては暑い日の午後、OICブックカフェが開催されました。本日の参加者は、総合心理の1回生の方1名、2回生の方5名、3回生の方1名、政策2回生の方1名、4 回生の方1名、経営3回生の方1名、政策の修士の方1名が参加してくれました。そのうち5 名の方は初めて来てくれました。

こんな本が話題になりました

●最近読んだ『アリエリー教授の行動経済学』ですが、この人は行動経済学の火付け役の人と言われています。太るとわかっているのに食べてしまうとか、解約したい有料チャンネルをいつまでも続けるとか人の振る舞いに潜む不合理をユニークな実験とケーススタディでひも解く本です。

●『なぜ心を読みすぎるのか』は人と関わり合おうとするとき、人の心の中で何がおきているのかという、人間の心の社会性や他者とのつながりのあり方に迫る本です。心理の問題は人の心に関係するのですごく興味があります。

●ドストエフスキーの『罪と罰』ですが、とてもめんどうくさいです。まず名前が愛称を含めて何通りかの表記があって誰だか迷います。くじけてしまいそうです。ラスコーリニコフという大学中退の男がいて、彼は「1つの悪は、100の善で帳消しになる」という思想を持っています。欲深い金貸しの婆さんがいて、殺すと決めますが、殺すまでがグジグジと長くなかなか殺しません。ようやく殺したと思ったら、出会わないはずの妹にばったり出会って妹の命も奪ってしまいます。やっとここまででも本当に長いです。今、挫折しています。ロシア文学はなかなか進みません。

●寒い国の文学は長いというか寒さに負けない体力があるから、長くて難解なのでしょうか。

●もっと短い『白夜』とかにチャレンジしてみたらどうでしょう。『貧しき人々』の男女の書簡集で読みやすいです。ドストエフスキーはけっこう重いテーマを扱っていて、帝政ロシアの時代なので身分制や社会的不平等も扱っているし、その頃は識字率が3割あるかないかなので、その他の人々はみんな必死に生きているのに、貴族は働きもせず、代々の財産で贅沢をしている。やるせないですよね。『白夜』は短くていい話があります。ぜひどうぞ。

●『罪と罰』に戻りますが、主人公のラスコーリニコフはコミュニケーション障害だと思います。社会的に大学まで行けたという恵まれた位置にありながら、内的人間性が幼いというか、社会との関わり方を知らない。社会と関わろうとしない。だからこそ起きた事件だと思います。

●なんか朝井リョウの『何者』と似たものを感じます。就活中にラスコーリニコフ的主人公がツイッターに投稿しまくっています。自分は他者とは違う。他人は馬鹿だ。意識高い系を演じていますが、その腐り方がラスコーリニコフのようです。でもツイッターでいい感じに発散しているので事件にはならない。ラスコーリニコフの時代もそんなものがあったらと思ったりします。

●トーマス・マンの『トニオ・グレーゲル』にもそんな青年が登場します。文学と音楽を愛し、美への限りない憧れを抱くトニオ。彼の細やかな感性は少女との恋愛にも堪えられないものだった。青春の喜びと悲しみを美しく奏でる物語です。彼は現実には生きられる見えないものに向かって生きています。

●『暗黒女子』はとてもグロいお話です。お茶会のボスが自殺するというところから物語が始まりますが、どろどろの展開です。最後はむなしいです。裏切られて報われない登場人物とか、死んだと思った少女が生きていたとか、何度もひっくり返ります。心が強い方、読んでみてね。

●コミックなのですが、『幸色ワンルーム』という変わったお話です。親から虐待を受けて、クラスで苛められて、教師に乱暴された少女が誘拐されます。そして誘拐されているのにこれまでより幸せに生活している様子が描かれます。どれほどの不幸を抱えているのか、とても切ないです。

●好きなのは上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』です。ファンタジーなのに現実感ある設定やその書き込みの細かさに圧倒されます。全巻読みました。

●これもコミックですが、『トリマニア』は、翼を持つ人間の国に普通の人間の女の子が留学します。内容はとても現実的で「今は自分は不幸だけれど前を向いて生きていく」とか、「三角関係で悲しいけれど、相手のことは考えないようにする」「振り向いてくれない。待つしかないのかな」とか、めちゃリアルな感情が描かれます。でここは18歳になると自分で性別が選べるという設定になっていて、またそれを巡ってひと悶着が出てくるのです。

●敵役についてのお話をしたいのですが、前に辻村深月さんがエンデの『モモ』で、最初に読んだときはモモに感傷移入をしていたのに、中学になったら時間泥棒に感情移入してしまったと聞いたことがあります。モモは孤児で人の話を聞くのがうまい少女です。何を言うわけではなく、ただ聞くだけなのですが、聞いてもらった人の心を晴れやかにします。
時間泥棒は時間銀行を作って、人々の時間の切れ端を集めます。そのために人々はせわしなく生きることになります。そして時間泥棒も働いて働いて自分の時間を持てません。そうしているうちに自分の仕事に対する価値を見いだせなくなります。
そんな中でモモの武器は自分を信じることのみです。時間泥棒は敵役ですが、自分たちも被害者です。そんなふうに思うとただ単に憎むことが出来なくなります。

●ミステリーが好きですが、その中でも海堂尊が好きです。『チームバチスタの栄光』を皮切りに『ケルベロスの肖像』などで、死亡時画像診断(AI)を確立していくお話が描かれています。『ジェネラルルージュの凱旋』は、天才救命医の黒い疑惑を描いています。救命医の大変さに圧倒されます。『螺鈿迷宮』は、本ストーリーとは別の展開のお話ですが、人の死いついて丁寧に描かれた本です。どのシリーズも田口と白鳥のコンビのキャラが立っていて楽しいです。高校の時、後輩に海堂尊の本を時系列に並べて・・・とお願いしたのですが、あれからどうなったのかなって心配しています。
前のドラマで解剖医の活躍を描いた「アンナチュラル」がありましたが、海堂先生は機械であるAIと解剖医が共存する社会がよいと考えているようです。

●医療もので『がん消滅の罠』というのを読みました。いつのまにかガンが消滅していて保険詐欺とか患者が追い込まれるのですが、結局、ガンを治す新薬が開発されていたという一刀両断の解決でちゃんちゃん♪と思った次第です。もっとミステリーとしての精度を高めろよ~って叫びました。

●『ソクラテスの弁明』は絶対読んだ方がいい本です。「ただ生きるのではなく、よりよく生きるんだ」(クリトン)というようなことが書いてあって、読書は裏切らない。生きることの支えになります。これを始め岩波文庫にはいっぱい良い本があります。ただ、よく売れるわけでありません。読者として出版社を買い支えていくということも必要だと思います。
大学では思想のどの思想が正しいと教えるのではなくて、どの思想がどのようにあるのか、正しく考える道具として定義していく意味があるのだと思います。

●ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』ですが、文学の役割として、読んでいる私たちはいろいろあっても死なないけれど、苦しさを抱えた主人公が変わりに死んでくれる。そうした代償行為の役割もあると思います。悩みがない人間に文学はいらないけれど、悩まない人間なんていないから、ある時死を考えたりして「死との距離」が近づく場合もあるけれど、文学は変わりに死んでくれる存在なんです。

●高野悦子の『二十歳の原点』という本があります。せっかく立命館に来たなら読んだ方がいいですよ。でも読んだら揺さぶられるというか、精神的に病んでいるときは手を出さない方がいいです。学生運動とのはざまで追い詰められていきます。
「二十歳の原点」は、「未熟であること、孤独であることこれが私の二十歳の原点だ」という文章によります。

●けっこう作家も死んでいますよね。ヘミングウェイは猟銃自殺ですし、川端康成は文学者としての限界からのようですし。三島はどうですかね。

●三島由紀夫は、政治的には未熟な感じがします。彼の死はロマンティシズムからとしか言いようがないと思います。ドイツロマン主義の影響があるとすれば、保守主義はロマンティシズムとの親和性が大きくて、理性の限界から死に向かうというのがあるのでは?

●やっぱり本にはジャケ買いってありますよね。『夜は短し歩けよ乙女』や『謎解きはディナーのあとで』の中村祐介さんや『神様のカルテ』のカスヤナガトさんなんかが有名です。
なんでも手に取るきっかけは必要です。

本当はもっともっといろいろな話題が出たのですが、かなり今回はめずらしく難しい話題も多くて、なかなか表現できていません(汗)。気になる方は、実際にその場で聞いたり語ったり・・・ぜひご参加ください。

●『犬と私の10の約束』は泣きました。前足が白いので「ソックス」と呼ばれる犬を飼うことになった一家。女の子は母親から犬との約束を学びます。「私を信じてください」とか「私にも心があることを知ってください」とか「私にたくさん話しかけて。言葉は話せないけどわかっています」とか「私は10年位しか生きられません。できるだけ私と一緒にいてください。死ぬときはそばにいてください」とか、いろいろあって 最初は密だった女の子との関係も娘に成長していくうちに変化がありって、だんだん犬の扱いもぞんざいになって行きます。主人公にとって犬のポジションは変わっていくけれど、犬は変わりません。そこがせつないです。いつもあることの感じ方、受け止め方が変わって行くのが実感できます。自分もそうだったなぁとか。人間は変わって行きます。でも犬はいつもと変わらずいてくれる存在。そんなことが胸に迫ってきました。

次回は6月14日(木)です。この回は特別にコミック限定!でブックカフェを行います。
興味ある方、コミックなら語れる自信のある方、ぜひいらしてくださいね。

2018年5月29日(木)衣笠ブックカフェレポート

5月の蒸し暑い日の夕方、衣笠ブックカフェが開催されました。
今回の参加者は、産業社会学部3回生の方、文学部1回生の方、3回生の方お二人、4回生の方、合計5名の方が参加してくれました。

こんな本が話題になりました

●カントの『永遠平和のために』を読みました。比較的短いのと、カントにしてはごりごりと精神が痛むことはない本です。「いかなる国も他国に干渉してはならない」とか当たり前のことが書かれています。

●大江健三郎の『キルプの軍団』は救済や許しをテーマに書かれた本です。オリエンテーリングに励む高校生おーちゃん。ディケンズの『骨董屋』を原書で読み、作中のキルプという悪役にシンパシーを感じています。そのうち事件に巻き込まれて・・。一読の価値ありです。

●救済と言えば遠藤周作の『沈黙』と繋がるところとかありますか。

●これはカトリックで、世界にカトリックを拡げようという政策のもとで日本にやってきたバテレンと日本人の話です。ものすごく迫害されます。でも作者なりの救いが書いてあります。

●『少年陰陽師』は53巻出ている超長いシリーズですが、まだ半人前の阿部清明の孫が妖怪退治するお話です。式神を使ったりします。気軽に読めます。

●式神を使うとなれば、万城目学の『鴨川ホルモー』もそうですよね。陰陽師道を取り上げた奇抜な設定で、京大青竜会に入ってしまった主人公が、立命館や龍大や産業大の同じクラブと「ホルモー」という競技でバトルしあうというゲームです。オニが式神の使い手になるための訓練など、なさそうなのにありそう!に思わせて楽しいエンターティメントです。

●『銀河ヒッチハイクガイド』は、ある日宇宙船団が地球にやって来て「銀河ハイウェイの立ち退き期間が過ぎたから工事を開始する」ということで、地球が壊してしまいます。数少ない生き残りの地球人は、宇宙を放浪することになってしまいます。大森望によればバカSFの大傑作ということですが、小さなエピソードの集合したお話で楽しめます。

●池波正太郎の『剣客商売』は、その頃、先端であった価値観を違った見方で書いていたりしています。田沼意次は都市の商売を推奨した人で賄賂政治をおこなったので嫌われていますが、池波正太郎は「政治の世界ではそういう汚いこともやらねばならない」と言って必要なこともやっていたとしています。

●『魔女裁判』は興味深くて、司法的世界・司法システムが確立されていなかった時代に、権力者だけれどズブの素人がやっていたので、あんな悲惨なことになったと言えます。
中身は「頼んだのに結果が出なかった」とか現代でいう民事裁判が主です。その頃、イタリアとかスペインは諮問機関ができていたのに、ドイツやフランスでは全然・・・ということで、乱れていったようです。たくさん本も出ています。

●『聖書』はおもしろいです。アブラハムが神のお告げで息子を焼きつくし、捧げよと言われてそのとおりにしようとします。その時天使が現れて「やめよ。その心意気だけでよい」と言われるとか。聖書は不思議な世界が多いですが、トライアンドエラーを繰り返して修正を加えているような気がします。

●ヒトラーは画家とかになれなかったから才能豊かなユダヤ人を攻撃した、という説もありますが、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』で描かれたヒトラーが実はユダヤ人というのは本当でしょうか。

●それは違うような気がします...。

●泉鏡花もおもしろいですよ。この人は結構オタク系です。また読んでいると文体が変わっていっていて、ああここで言文一致の時代だなと予測ができます。『天守物語』は戯曲で、泉鏡花が舞台にかかるのを望んでいましたが、生前はかなえられませんでした。

●泉鏡花の『絵本の春』は短いので読みやすいし、春を感じられる名作です。

●平山夢明の『ダイナー』はめっちゃ怖いお話ですが、出てくるハンバーガーがほんとうにおいしそうです。後はお酒が出てきて、1億円のお酒というのが物語の展開の柱になります。

●宮沢賢治の『やまなし』は谷底の蟹の兄弟たちが見る世界を描いたものですが、最後にやまなしの実りでお酒が出来ます。

●本屋大賞をとった『かがみの孤城』ですが、学校に通えないでいる少年少女7人が集められて課題を与えられるお話です。鏡を通じて存在する城での生活。変化の訪れ、そして判明するそれぞれの登場人物の生きている時代が少しずつずれていること。仕掛けがとてもおもしろいです。

●本屋大賞第2位の『盤上の向日葵』は将棋がテーマで、今の棋士の動きと昔の殺人事件がかぶさっていくところが良いです。

●本屋大賞では伊坂幸太郎の『AX』に注目していました。『グラスホッパー』と『マリアビートル』に続く殺し屋の物語で、今回は足を洗いたがっている中年のお父さん殺し屋が否応なく陰謀に巻き込まれていくエンターティメントです。

●子供が大人と戦うテーマでいえば『ぼくらの7日間戦争』ですが、校則で抑圧する教師や勉強を押しつけようとする親たちに中学生たちが闘いを挑むという内容です。映画も評判良かったし、すごい評判になりました。でももうゲーム機も古いし、携帯もないし。今読むとよくわからないんじゃないかな。

●同じようなテーマでいうと、児童文学で大石真の『チョレコート戦争』があります。
ケーキ屋のガラスを割ったという冤罪をかけられた小学生が戦って、勝利を勝ち取り、そのケーキ屋のケーキが学校のクラスに順番に配られるようになるというお話です。

●この事件発生も冤罪がわかったのも小学校新聞部マスコミが関係して、小学生の勝利につながっていますね。

●村上龍の『希望の国のエクソダス』は現代版7日間戦争と言えます。子どもたちが戦って独立国家をつくります。自分たちで稼ぐ経済シスエムを構築するのです。すごい本です。

●宮部みゆきの『ソロモンの偽証』も自分たちで犯人を捕まえようとする闘いのストーリーです。

●北村薫の『スキップ』は現実のせつなさを感じます。体育祭の準備をしていた17歳の女子高生が家に帰って午睡の夢から覚めると、時間が経っていて40代の夫持ち・子持ちのおばさんになっていたお話です。彼女にそれまでの記憶はありません、作者はどうしてそうなったかの説明はしません。現実があるばかりです。本来なら体験するはずだった大学受験も大学生活も、恋人との出会いも、就職も、結婚も、出産も過ぎ去った過去なのです。作者は非道です。彼女に戻る道はありません。40代から人生を歩み直すしかないのです。
最後に主人公は、いつだって人生は始められると明るく思いますが、起こったことは本当にせつなくて、受け入れがたいことですよね。

●異世界に行ってしまうというお話ですよね。『僕たちの戦争』は平成の青年が昭和19年に飛ばされ、昭和の青年が平成に飛ばされます。昭和にやってきた青年はこの戦争がいつ終わるか知っています。だからなんとかやり過ごして生き延びて未来に戻ろうとします。
平成に飛ばされた青年は、平成の若者が年寄に冷たく当たっているのを見たりして、僕たちはこんな日本をつくるためにあの日々を戦っていたのかと嘆きます。
昭和19年で青年は、自分の平成での彼女のおじいちゃんだという男性との出会いを果たします。彼は「回天」という海の特攻で死ぬことが決まっていました。このまま進んだら彼女は生まれなくなる・・。と悩み、ついに自分が代わりに回天に乗る決意をします。切ない物語です。

●テレビの必殺シリーズは、裏の代弁者ですが、やっつけたあと捕まるとか、悪いことをしたらこうなるというように、社会で折り合いをつける作り方をしています。

●ドフトエフスキーの『悪霊』は、絶対悪で行き過ぎるのもついていけないと思います。

●浅見光彦シリーズは構造を考えてから、書いたことがないそうです。すごいですね。設計図がないんですね。神が現れてつじつまを合わせてくれるのでしょうか...。

話は尽きなかったのですが、時間で終了となりました。
次回は6月28日です。来たことがある方も、初めての方もぜひ来てください。

2018年5月31日(木)BKCブックカフェレポート

春風の吹く夕方、新年度1回目のブックカフェが開催されました。本日の参加者は、法学部3回生の方、産業社会学部3回生の方、文学部1回生の方、文学部3回生の方、文学4回生の方3名、合計7名でした。

こんな本が話題になりました

●司馬遼太郎の『燃えよ剣』読みました。新撰組の人たちの成りあがりの様子がよくわかります。土方歳三が魅力的に描かれています。

●僕も読みましたが、知らない単語とか多くて少し難しかったですね。例えば壬生(みぶ)が読めなかったりとか。

●最近時間があるので、たくさん本を読んでいます。二階堂奥歯さんの『八本足の蝶』はいろいろな人の著者や言葉が抜き出されているのですが、どれも注目で夢中になりました。
これを読んで「人間、好きなことをすべきだ」と思って、大学を休学することにしました。

●ええっ~!!!!!

●今年の本屋大賞の『かがみの孤城』は注目の本です。学校に行けないような子どもたちが7名集められて、課題を与えられていくのですが、大体同じ年で一緒の時代に生きているのに、少しずつずれていた時期を生きていたとか、伏線が細かくて驚きます。

●子どもが集められてというだけだったら、『バトルロワイアル』を思い出します。中学2年生のクラスが選ばれて殺し合いをするお話です。ありえないと思いますが、大東亜共和国という日本の姿や細かなキャラ設定に惹きこまれます。世間的にも話題になって、ホラー大賞かなんかできっぱり否定されて賞も取れませんでしたが、読みたいと声が大きくなって、本来文芸出版社じゃない太田出版から出されました。

●映画は深作欣司監督で、戦時中のことを考えたら戦闘に巻き込まれてしまうのも日常でその中の中学生を描写しようとしていたのかもしれません。見ていくとなんとなくハートウォーミングな感じを感じてしまうのは何かのマジックでしょうか。

●『一行怪談』という本があります。1ページにぞくっとさせるすごく短い文が載っています。想像力が喚起されぞくっとします。

●津原泰水さんの短編集に載っている「天使解体」は、小説の寄稿を磨きあげた孤高の職人の作品と言えます。日常と非日常、生と死、至上の美を描いていいます。

●ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』は恐怖小説の形を取っていますが、異常な状況下における心理的な駆け引きを描いており、心理小説の名作として知られています。怖いですよ。

●P・K・ディックの『高い城の男』は、第2時世界大戦で枢軸国が勝利し、アメリカが三つに分断されている世界を書いています。ありえない設定ですが、その中でも現実が動いていきます。ディックの代表作とも言われています。

●ハインラインの『宇宙の戦士』は、冷戦まっ最中でベトナムが戦争に大きく傾いて行った時代に刊行された本です。軍事教練や力による教育や、対峙する勢力にはこちらも相応の力を有しなければならないなど、そのスタンスが多くの議論を呼んだそうです。

●『未来の二つの顔』が、高度な知性を持ったコンピュータが反乱を起こすというものですが、コンピュータ工学的に裏付けられた科学性で、意思を持たないコンピュータがなぜ人間へ反旗を翻すのかについて答えを出した一作。ホーガンの代表作です。

●星野之宣の『ヤマタイカ』を日本の古に火の民族と日の民族が争っていたと設定し、その火の民族・邪馬台国の卑弥呼の後継者が出現するところから物語は始まります。壮大なSF歴史スペクタクルです。

●京都のアスタルテ書房へ行ったのですが、そこでバタイユの『眼球譚』の価格が絵とかがついて3万とかありえない・・。古本に入り込むのはやめようと思いました。

●さっきのコンピュータの続きですが、『ニューロマンサー』はとにかくすごいです。

コンピュータも未熟でインターネットもない時代に、インターネットが普及している時代のことを書いて、AIとの融合を果たしています。

●『老人と宇宙(そら)』は、75歳以上だけは入れるコロニー防衛軍の物語で、各惑星への植民地を始めた人類を守る役割を持ち、考え方も姿も違うエイリアンたちとの戦いに明け暮れます。ヘミングウェイの「老人と海」のもじりが強いですが、一読の価値ありです。

●怖い本を読みました。『睡眠負債』は、日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を与えるというものです。重なると生活や仕事の質が低下するだけでなく、うつ病、ガン、認知証の可能性が出てくると言われています。みなさん...気をつけましょう。

●チェーホフの『かもめ』を読みました。他のロシア作家と比べてとても読みやすい作品でした。戯曲であるというのも書き込まれていなくてシンプルさが出ているのかなぁ。

ある田舎屋敷を舞台に、芸術家やそれを取り巻く人々を描いた群集劇です。作者の身近で起きたエピソードが盛り込まれており、チェーホフのもっとも私的は作品を呼ばれているそうです。

●『桜の園』はチェーホフによる最晩年の戯曲です。破産の危機に見舞われ、家屋敷である「桜の園」も売りに出されている一家。現実に対応できない女主人。失っていく寂しさを感じます。

●太宰治の『斜陽』は『桜の園』にインスパイアされて書かれたとか・・。同じように没落していく様を描いています。戦後、あちこちにあった変わりゆく様子が切ないです。

●冒頭の「おかあさまがスウプをひらりひらりとのむ」様子が貴族の象徴として描かれていて大好きでした。

●太宰と言えば『人間失格』ですが、共感して読みました。人間としてはダメな主人公ですが、こんなことあるよなぁと思っていました。

●いろいろあっても一切は過ぎ去っていくんですよね。主人公が落ちているから、ゆったりと読めるのかもしれません。

●太宰では彼が女学生言葉で書いた『女生徒』が好きです。ためらいも不満もある中、善き一日を目指して自ら生活をデザインしている様子が好ましいです。

●太宰の短編の中できらりと光っているのは「駆け込み訴え」です。ユダがキリストに対する無実を切々と訴えるという内容で、ユダの言葉だけで構成されています。とんとんと繋がっていく名調子のリズムがとてもよく惹きこまれてしまいます。

●最初の結婚をした頃の明るい太宰が描いた『富嶽百景』が好きです。「富士には月見草がよく似合う」ってやつです。

●夏目漱石の『こころ』は、読んでも読んでも最後まで行きません。友だちは、こんな重い遺書送ってこれるかぁ!!と言っていますが、そこをまだ味わえていません。

●僕は小2の時に読んでおもしろかったです。あとになって読むと心境の変化というか男女のごたごたが目立って、冷静に見れなくなりました。

●ホラー小説が好きですが、その分岐的はエドガー・アラン・ポーの『黒猫』です。飼い猫を思わず殺してしまった男が同じような黒猫に追いつめられていく物語です。

●私はポーなら『アッシャー家の崩壊』が好きです。旧友アッシャーとその妹が住む屋敷に招かれた語り手が体験する様々な怪奇現象を書いた物語です。

●田中芳樹の『銀河英雄伝説』に注目します。遠未来の銀河系を舞台に数多くの英雄たちによる闘いを描いた小説です。いかに自由が素晴らしいのかを描きながら、自由をなぜ選ばなかったのかを語る様子は日本らしいと思わされます。今季、あのアニメのキャラ変は納得いきません。ラインハルトが王子様じゃなくなっています。

●『不思議の国のアリス』はホラー小説的な要素があります。ディズニーの絵は明るいですが、ルイス・キャロスの挿絵は暗いです。またアリスが大きくなるという表現も原作ではアリスの首だけが伸びていき、グロテスクです。

●トールキンの『ホビットの冒険』は、こまかな作りこみがすごいです。劇中で歌う歌も作曲してるみたいです。またエルフ文字や言語もすべて構築しています。前提としてこの物語はエルフ語で書かれたものを英訳しているということになっています。読み応えがある本です。

本当はまだまだいろいろな話題が出ていましたが、まとめられたのはこれまで、です。
次回は6月21日(木)に決まりました。誰でも参加できます。よかったらのぞいてみてくださいね。