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2018.10.29

10月のブックカフェレポート

ニュース

2018年10月2日衣笠ブックカフェレポート

明るい秋の日の午後、衣笠ブックカフェが開催されました。
今回は産業社会学部3回生の方、法学部3回生の方、文学部1、2、3、4回生の方がお一人ずつと卒業生が参加してくれました。そのうち3人の方がポスターを見て初めて参加してくれました。

こんな本が話題になりました

●桜庭一樹が好きです。やはりいちばんだと思うのは『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』です。衝撃的な冒頭からショッキングな出来事が続きます。過去を辿っていろいろなことが見えてくる構成は秀逸です。
〇桜庭だと『赤朽葉家の伝説』はすごいです。女性3代の歴史が描かれているロマン大作で圧倒されます。
〇テイストはまた違いますが、『GOSICK』が大好きです。時代は第一次世界大戦と第二次世界大戦のあいだ。とあるヨーロッパの寄宿学校で会った知性あふれる、でも性格はちょっとなぁの少女と、彼女にこき使われる日本の少年の物語です。最後に苦労して二人が日本で出会えた時、本当に泣きました。宿命にさらされた二人の勝利がうれしかったです。
〇『私の男』は、過去にさかのぼっていろいろなことが見えてくるという手法がとてもよかったです。ちょっとインモラルな物語ですが、読みごたえありました。

●歴史的なものが好きなので『日本のヤバイ女の子』を読みました。出てくるのは歴史というか、かぐや姫や織姫だったりするのですが、機織りをしている女子が「のぞかないで」と言っているのにのぞいた男子を投げ飛ばすのですが、男の人の目線だと、女子が悪者になるけれど、女子の目線だとどうなのか?というように複眼で書かれているのが面白いです。

●11月18日にPENクラブで「京極夏彦さん」の講演会をしますが、とても人気です。
『百鬼夜行』のシリーズは民俗学と現代科学が融合された感じのミステリーです。『巷説』のシリーズは、民俗学と人間心理がまざった活劇ミステリーでこれもとても面白いです。
〇京極夏彦といえば「枕になる」と言われるほど有名な本の分厚さもさることながら、装丁家でもある京極さんのこだわりが本にあふれています。新書や文庫で、見開きで文章がどのようにありたいかを実施して、内容がちょっと違ったり、見栄えを変えたりすごいです。
〇『どすこい』は、いろいろなミステリーのパロディです。めちゃおもしろいです。

●京極夏彦と森博嗣というのは、僕の愛する西尾維新が敬愛する作家です。森博嗣の『すべてがFになる』は衝撃的でした。なにしろトリックがぶっとんでいます。90年代の作品のくせにロボットやセンサーを多用して書かれていますし。なにより犯人のカリスマ性に目を見張ります。最低でも完全犯罪ということなので、最高だと人には犯罪があったことがわからないということでしょうか。すごい天才です。この作品はもはや古典となっています。
〇森博嗣はすごい萩尾望都が好きで、『トーマの心臓』のノベライズも書いています。
〇このノベライズはなくてもいいです。コミックのトーマが最高です。

●北杜夫を読みました。『楡家の人々』ですが、これはものすごい傑作です。自身の家族をモデルに大正、昭和、戦前期に渡る精神科医の一家を描いています。一家の全盛期から没落へと物語は進みます。
〇この方はエッセイがおもしろいですよね。『どくとるマンボウ航海記』とか。

●ディケンズも興味深いです。『大いなる遺産』は孤児である主人公がその青春時代を回想的に語るという物語です。

●『ローマ人の物語』が好きです。その中でカエサルがいちばん好きです。塩野七生がカエサル大好きというのを隠していませんので、影響されたかなぁ。
〇その辺でいうと第二ポエニ戦争あたりのお話が好きです。ポエニ戦争はローマとカルタゴの戦争ですが、カルタゴのハンニバルがとても強くて、多大な損害と恐怖をローマ側に残しました。

●平安、鎌倉あたりの武士が好きです。平でいうと清盛はもちろんですが、泣かせる敦盛とか。平家の総大将が凡人なので負けたのでは?と思ったりします。平宗盛です。2番目の正妻時子さんの長男なので、トップに立っていますが、総大将は荷が重かったのでは?
〇源氏も家系が不幸ですよね。頼朝もようやく旗揚げをして鎌倉幕府を作ったのに、頼家は御家人の争いで惨殺、弟の実朝も殺されて血筋は続かない。『北条政子』を書いた永井路子は、乳母(めのと)制度を要因に挙げています。長男は比企一族が乳母で囲い込まれていたので、政子の妹夫婦が乳母である実朝に変えようとしたと。自分の子どもを自分で育てない制度だったのですね。

●さくらももこさんが亡くなったのをきっかけに読んでみようと思って『たいのおかしら』を手にとりました。『モモのかんづめ』『さるのこしかけ』に続くエッセイなのですが、めちゃおもしろいです。ほのぼのとした中に毒があるという感じです。さくらももこのシニカルさが最大限発揮されています。

●チャンドラーなどのハードボイルド的小説に興味があります。『長いお別れ』とか『さらば愛しき女よ』とかですが、これは人間関係の中で謎を追求するという動機がメインのミステリーです。
〇ハードボイルドといったらハンフリー・ボガードを思い出します。帽子とトレンチコートを着て、映画「カサブランカ」のようにやせ我慢をする。ちょっと空元気?キザッぽくシブいおっさんがハードボイルドかなぁ。

●子供のころ夢中で読んだのが、南洋一郎の「怪盗ルパンシリーズ」です。あれは原作と違ったとしても読ませるとてもおもしろい工夫がありました。私にとってのルパンは南洋一郎です!!!
〇アニメのルパンもいろいろシリーズがあって楽しめますが、第一シリーズがいちばんフィリップ・マーロウの世界に近いようないがします。子どもにはウケなかったけれど。

●星新一はたくさん読みました。簡潔な文章で、ショートショートの方式でこれだけの傑作を書けるのはすごいです。自分のスタイルの中で、長く書き続けているのに劣化しないのは奇跡です。発想のセンスの良さと、落とす時の切れ味。すごいです。
〇80年代に同じような短編の切れ味で活躍した阿刀田高さんという作家さんがいますが、この方はもう書けなくなりました、今はほんわかしたムードミステリーを書いています。

●『三月のライオン』などで知られている羽海野チカさんですが、才能というのは持っていてすごいねと言われますが、それしかできなかった結果と言えます、と言っていました。
持っていない私はどう考えたらいいのでしょうか・・・。

●村上春樹のラジオはとてもおもしろいです。作品はやはり『風の歌を聴け』に戻ってしまいます。若々しさが感じられて、短編のような味わいがとても良いです。この人も自分のスタイルがワンパターンのタイプです。最近は出てくるのがおっちゃんばかりなのでちょっとなぁ~と思っています。
〇この人の文章は英語的と言われていますよね。訳しやすいとか、海外作家からの影響も大きいですよね。フィッツジェラルドとか大好きですよね。どんどん訳も出していますし。
思い入れを感じます。

●羽田圭介さんの『スクラップアンドビルド』を読みました。人を見下すことで自分のアイデンティティを保つというような印象があって、読むのに疲れました。

●有川浩さんの「図書館戦争シリーズ」ですが、シリーズものだと知らなくて『図書館革命』から読んでしまいました。ちょっと失敗です。内容がちょっとついていけませんでした。
〇このシリーズは恋愛あまあまばかり目立ちますが、本を守るということは自分たちの考えを守ること、人に左右されずに選択して生きること、などをきちんと語っていると思います。

●東尾圭吾の『新参者』はおもしろいです。刑事が新しく来た土地で観察をして発見もあって、事件を解決していきます。その手法がとても人間的で感銘を受けます。
〇主人公の加賀恭一郎は作者のお気に入りの人物で、何か良いトリックを思いついたら、加賀で使おうと思うらしいですよ。

●昔から出ている『空想科学読本』ですが、おもしろいです。何かの単位をジャイアント馬場であらわして「1ジャバ、2ジャバ」という単位で呼んだり、荒唐無稽なところはありますが、真実を鋭く貫いてもいます。

●『空想法律読本』というのもありますよ。法律の日常を取り上げていておもしろいです。

●『ペンギンハイウェイ』のアニメを見ました。名作です。青山くんと内田くんがかわいいです。
〇研究好きの青山くんは、偉くなるために切磋琢磨して毎日を過ごしていて、その真摯な姿というか・・・すごいなと思います。それと、小学生だから子供だから思いが小さいのではなくて、いろいろ考えるし、感じるし、恋もするし、そこのところがせつなくて、青山くんが愛おしいと思いました。

●みなさん知らないかと思いますが、三津田信三という作家のミステリーは面白いです。ホラーとミステリーを組み合わせた、ジャンルを超えたエンターティメントな作品です。

もっといろいろなことが話されましたが、なかなかまとめきれませんでした・・・。
次回は10月30日、事前予約等は不要です。皆さん、いらしてくださいね。

2018年10月11日(木)OICブックカフェレポート

雨模様の夕方、OICブックカフェがA棟ルーム8にて開催されました。
本日の参加者は、総合心理1回生、2回生、3回生の方、政策の4回生、院生の方、経営の1回生、2回生の方お二人です。

こんな本が話題になりました

●最近、昔読んだ本を思い出しています。ジュール・ベルヌの『十五少年漂流記(原題:二年間の休暇)』は無人島に漂流した少年たちが力を合わせて生活していく様子が描かれています。大統領を選び、島を植民地として運営していく体制が整えられていく中で、主人公のブリアンとボニファンとの対立から始まる仲間割れは少年たちに影を差します。またビリアンの弟の抱えている秘密が大きな衝撃となってきます。1888年刊行ですが、わくわくして読めます。

●今年の本屋大賞を取った『かがみの孤城』は傑作です。いじめやキラキラネーム、ひきこもりなどやリアルに描かれています。ひきこもりの低年齢化など現代社会の様子を映し出していて、主人公たちは中学生なのですが、その誰もが社会になじめず苦労しています。
どうやって乗り越えていくのかというどころで、童話が出てきて、オオカミの指示の元、鏡の中の世界で、課題をこなしていきます。
〇この本は2度どんでん返しがあるのがすごいです。それと時間軸のマジックがとても効いています。
〇家族と素直に離せない子が母親と語り合えたところに「うるっ」ときました。
〇長い物語で読むのに体力いるけれど、ぜったい損はしません!!

●有川浩の『キケン』を読みました。工科系の大学のお話で、有川と言えば恋愛系とおもわれがちですが、ぜんぜんそんなことありません。どちらかと言えばハチャメチャな青春小説です。2回生の先輩が部室を取られそうになったとき、爆弾を使って防ぐとか荒唐無稽なのですが、それに振り回される1回生との関係がすごくいいです。1回生が良いつっこみ役をやっています。
〇お店の子と呼ばれてる学生が、学園祭でラーメンを工夫して売っていくエピソードが大好きです。理工系学生のバイブルになるのもわかります。
〇最後が泣かせるんです。ノスタルジアというか、もう戻ってこない大学生活を愛おしむというか・・いいお話です。

●越谷オサムの『陽だまりの彼女』はおもしろいです。話すとネタバレになるので黙って読んでもらいたい本です。表紙がかわいくて魅力的です。
〇帯に彼女が男子に読んでもらいたい本とあって、それに騙されて買いましたが何ともなりませんでした・・・。

●中学の時に読んで印象的だったのは、森絵都の『カラフル』です。一度死んだ「僕」は、前世の過ちを償うために、下界に戻って違う男の子に乗り移って過ごすホームスティの修行をすることになります。様々な大変な体験を重ねますが、最後に種明かしがされ、生きることについて深く感じるのです。感動作です。中学生は全員読んで自分を大切に生きた方がいいですよ。

●この間直木賞を取った島本理生の『ファーストラヴ』を読んでいます。父親殺しの女子大生が逮捕された。彼女はなぜ父親を殺さなければならなかったのか

。家族というなの「迷宮」を描く問題作です。母親が「良かった」といって送ってくれた本です。

●村田沙耶香の『コンビニ人間』ですが、主人公は変わり者で人間関係も希薄な毎日ですが、コンビニで働いていると、そのマニュアルの中にいることに安心感を覚えているという小説です。なんとか常人であるとふるまえる世界としてコンビニが描かれているのです。
〇村田さんは変わった世界観の持ち主でありえないことを描いています。『消滅世界』という小説は、近未来を書いていますが、家族とかセックスが否定されている世界で、子どもは人工授精で生まれます。主人公は母親が通常恋愛で生まれたのですが、それを疎ましく思っています。たとえ自分の子どもであっても自分で育てられないとか、受精卵を男性に戻して男性も出産できるとか、ありえない世界が書かれていて、この人はどういう感性の持ち主なのか考えてしまいます。
〇そういえば『殺人出産』という本があって、これは10人子供を産めば、合法的に1人の殺人が認められるという世界を描いています。怖いです。

●貴志祐介さんの『新世界より』はSFですが、これは、人々が念動力を手にした1000年後の世界のお話です。タイトルはドヴォルザークの交響曲9番の「新世界より」に由来するそうです。人々はバケネズミと呼ばれる生物を使役して平和に暮らしています。主人公の少女はある時、友人たちと町の外に出かけ、先史文明が残した図書館の端末で1000年前の文明が崩壊した理由と現代にいたる歴史を知ってしまいます。禁断の知識を得て、彼女たちの平和は徐々に歪んでいくという物語です。バケネズミの襲来とか様々なことが怒ります。長い物語ですが、一気に読めます。

●谷崎潤一郎はマゾヒズムとかいろいろ言われていますが、『春琴抄』を読むと、できた小説だと思います。二人の主従関係とか、すごく幸せな関係性を感じます。
〇谷崎と比べて川端康成は清廉潔白のように言われていますが、それは『伊豆の踊子』のイメージから来ているのではと思います。ピュアな若者の淡い恋が描かれています。
〇谷崎は人を選ぶと思います。でも昔、ノーベル文学書の候補だったときもあるんですよ。
〇谷崎の艶っぽい文章と、だらだらとどうでもいいことを書いているような文章を書きながら、読ませるテクニックは最たるものだと思います。魅力的ですよ。
〇川端だって艶っぽい話を書いています。『眠りの美女』ですが、川端後期の前衛的作品です。主人公が老人限定のクラブで、意識がなく眠らされた裸体の美女を前に一夜を過ごすというエロシズムに満ちた小説です。

●川添愛の『自動人形の城』は今話題のAIの話ですが、わがままで勉強嫌いの王子の浅はかな言動がきっかけで邪悪な魔法使いに城中の人間が自動人形に変えられてしまう。「人工知能」がぶつかる問題を分かり易く解き明かした本。人工知能はいかに意図理解に取り組むのか、どういうAIを求めるのか。いろいろ学べます。AIは笑いに弱いということもわかりました。コミュニケーションの中の笑いが分からないそうです。
〇同じ著書で『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』という本がありますが、AIは囲碁に勝てるのに、なぜ簡単な文がわからないか。そもそも言葉の理解とは何かを考えさせる本です。AIの展望と限界が分かります。

●加藤シゲアキの小説を時々読みます。『ピンクとグレー』とか読むとこの人は闇を抱えていると思います。アイドルなのにアイドルらしくない感性です。また映画は小説とは時系列がパキっと分けられていて、小説は行き来していたのになぁと残念に思いました。

●時系列が行きつ戻りつすると言えば、伊坂幸太郎の『アルヒと鴨のコインロッカー』もそうでした。傑作です。これは映像では描けないのではと思っていたのに、うまく映画化されていました。映画も見応えあります。最後に伏線が回収されてやられた感満載なのがいいです。

●好きだったのは重松清の『流星ワゴン』です。いろいろあってもう死んでもいいかなと思い始めた主人公。ある時お酒を飲んで酔っ払っていると、ロータリーに1台のワゴンが止まっていた。それは5年前、交通事故で死亡が報じられた親子が載っていた。そのワゴンは主人王を人生の起点に呼び戻すという物語で生きているっていいなと思わされます。感動作です。

●ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』は、苦しくて生きていたくないと思ったときにハンスが変わりに死んでくれて浄化されるところがあります。
〇そういう考え方もあると思いますが、小説と言うのは「うたかた」というか「もののあはれ」や「はかなさ」感じてそこにたゆたう、というのでもいいのじゃないかと思います。『火垂るの墓』という小説がありますが、こんな状況で死ななければならない心優しい人の姿を書いた小説だと思います。『車輪の下』もそうですが、ヘッセも神学校に行って、エリートになれそうだったのに挫折して、うまく行かなかった人生を抱えています。この小説はレクイエムとして書かれたような気がします。

●朝井リョウの『何者』は、主人公が性根のくさったヤツで、人の悪口を言うわ、ネットでしょうもないこと書き連ねるわ・・なのですが、こんな感じで生きていてもいいのかと思わされますし、最後にぼこぼこにされるので当然と思ったりします。

●坂口安吾の『桜の森の満開の下』は、妖艶な桜のもと、盗賊が女の言いなりになって、人の首狩りを続けたりして、最後には一切が消え去っていく描写があります。その不条理さは戦争中に安吾が亡くなった人の死体を焼きに山に行ったときの経験から、ということなので、命の儚さとか感じたのかもしれません。「桜の下には死体が埋まっている」と言ったのは梶井基次郎ですが、桜にはそんな妖しさがありますね。

●ライトノベルについて、最近は多すぎてどれがライトノベルか迷いますよね。
〇角川スニーカーとか電撃文庫とか、ライトノベルと言われているレーベルで判断するしかないですね。
〇ライトノベルというのは、人気が出たら長く続けられるような設定と、カワイイ絵柄の表紙、キャッチーなタイトルで構成されているようなきがしますね。
〇筒井康隆が「一番最初にライトノベルを書いたのは自分だ。『時をかける少女』が最初だ」と言っていました。

ここからライトノベルの話、特に転生系を中心に盛り上がりました。なかなか筆者がついていけず、文章化ができていません・・・。
次回は11月15日(木)です。誰でも参加可能です。よろしくね。

2018年10月25日(木)BKCブックカフェレポート

ちょっと時雨れたような秋の夕方、BKCブックカフェが開催されました。
今回は残念なことにみなさん用事があって、経済学部4回生の方がお1人の参加でした。でも、初めて来ていただいたのに熱心な本好きの方で、とても盛り上がりました。

こんな本が話題になりました

●『朗読者』は「愛を読む人」という映画から入って読んだのですが、名作です。15歳の少年が年上の女性と恋愛関係になるのですが、彼女は少年から本を読んでもらうことを何よりも楽しみに過ごしていました。それから時がたって少年が学生になり、たまたまナチスの裁判に立ち会うようになります。そこで被告として訴えられている昔の彼女に出会います。彼女は、ナチスに加担した証拠として、文書の書き換えを疑われているのですが、彼女はそれを否定しません。実は、彼女は文盲だったのです。でも彼女のプライドがそれを認めることができず、あえて罪を引き受けます。少年も気が付くのですが、彼女の思いを汲んでなにも言いません。いろいろ考えさせられます。ドイツでこの件、文盲の人をナチスの罪で告発できるのかなど論争になったようです。

●文盲が悲劇の切り口になった小説としてル-ス・レンデルの『ロウフィールド館の惨劇』というのがあります。ある裕福な家庭の出来のいい家政婦なのですが、彼女は字が読めません。でもそんなことおくびにも出せず、自分の才覚で字が読めるようにふるまって過ごしています。でもある時、家の奥さんに気づかれてしまいます。それは許せないことでした。
そして家族全員を惨殺してしまうのです。人間の尊厳、プライドについて考えさせられます。

●書籍部の職員になったときに読んだ本が『本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない』です。書籍業界が衰退している中、「思考の整理学」が「文庫X」を仕掛けて躍動する本屋のお話です。本屋というのはやりがいのある仕事だと実感できましたし、アプローチして輪を広げる大切さを学びました。

●夏目漱石の『吾輩は猫である』はとても面白いです。これは連載小説だったので行間があり、盛り上がりが一杯ありますし、なにしろ猫の描写が一級品です。ちょっと長いですが、チャレンジして損はないです。

●浅田次郎の『きんぴか』なのですが、これは悪漢が主人公のピカレスクロマンです。
「ドン・キホーテ」で有名なスペイン文学がもとにあるらしいのですが、中年オヤジ3人がやりたい放題で、世相を斬る物語です。やりたいことをやりつくして自然消滅するというような感じです。

●『不平等の再検討』は、数学者が哲学的に経済を見るというような本です。どこに不平等が見えるのか。研究し続けてて誤りを見つける、とします。経済学は間違ったときのダメージがこの上もなく大きい学問だと思います。

●坂口安吾の『白痴』は、知能指数の低い女の人と関係をもった男性が、その彼女に対して魂の真実を求めようとする孤独な姿が描かれています。

●同じ作者の『堕落論』は、ダメで何が悪い!と開き直っている本です。戦後の日本の中で戦争に負けたから堕ちるのではなく人間だから堕ちるのだと開き直っています。明日を生きることを考えた本だとは思います。

●同じ作者の『桜の森の満開の下』は、「桜の下に死体が埋まっている」と言ったのは梶井基次郎ですが、そのような感傷がぴったりの本です。この本を書くきっかけになったのは、戦争で亡くなった人の死体を焼きに山に入ったときに見た桜が恐ろしいほど美しかったからと言われています。

●『復讐の子』は、未婚の母とそのマザコンの息子が出てきますが、母親には味方がいないばかりか親戚などに苛められています。息子は苛めている人間に復讐をしていきます。ラストの20~30ページで、コイツこんなにもイカれてる、というのがわかって恐ろしいです。

●ウェルズの『タイムマシン』は80万年先の未来にも行きますが、ウェルズ自身イギリスの支配階級の支配が80万年先にも続いていると思っているらしいのがおかしいです。

●中村文則の『悪意の手記』ですが、病気で死にそうだった主人公が名医の登場で助かります。生きている実感のなかった主人公が、健康になってこれまであまりにも死と近すぎていたために、周りとのコミュニケーションも取れずに死を身近に感じないと生きられないようになっていきます。そこで主人公は人を殺す選択肢をするのです。そして自分自身も社会的に死に導くのです。

●どーでもいいですけれど、今年のコメント大賞の応募作品は『きみの膵臓を食べたい』がめちゃ多いですよね。流行っているんですね。
〇10年から15年周期で純愛ブームというのが来る感じで、前のブームは『世界の中心で愛を叫ぶ』や『今、会いに行きます』だったり『電車男』だったような気がします。今は「きみすい」が独り占めですね。

●『チベットわが祖国』はダライ・ラマの本ですが、私たちを思うがままに生きさせてほしとう願いがこもっています。人間というのは狂おしいもので、それを脱せられるのは仏になること、仏になれば苦しみから解放されると仏教は解きます。ブッダが仏になれたのだから自分たちもなろう。一切を受け入れて過ぎ去って昇華をすることで救われるのです。

●『グレートギャッツビー』は成りあがっていく男の物語ですが、かなりいろいろな人に影響を与えています。『ライ麦畑でつかまえて』にもこの本が出ていますしね。

●『絶望名人カフカの人生論』は、「誰よりも落ち込み、誰よりも弱音を吐き、誰よりも前に進もうとしなかった人間の言葉」がつまっています。自分の心の弱さ、その他ありとあらゆることに絶望した時に読む本とされています。すごいです。なにしろあの不条理のカフカですからね。カフカの絶望の言葉には不思議な魅力があるのです。覗いてみてくださいね。

●ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』はエリートの少年の挫折を描いています。ヘッセ自身もおなじような挫折を味わっていて、老境に入ったとき、やっと過去の事を冷静にみられるようになって書いた本です。タイトルの「車輪の下」はドイツ語で「おちこぼれ」を表しているそうです。原題そのままの訳だとヘッセの気持ちが伝わりませんね。

●ノーベル賞作家、川端康成の『雪国』は冒頭の「国境のトンネルを抜けるとそこは雪国だった」でこの小説の世界観をすべて言い表しています。主人公の男が温泉街に出向き、そこで出会った女たちの美しく哀しい様子が、男の虚無の目を通して鏡のように映し出されています。ほんとうにこの男は淡々としているというか、冷淡ささえ感じるほどです。
〇このお話はけっこうエロいですよね。大人の小説って感じです。

●カフカの『変身』はのっけからぶっとびます。なにしろ人間が一匹の虫なってしまいます。カフカの不条理は理屈では何も語れませんし、読んでいると迷うことだらけです。けれど理屈に収まらないところ、自分では把握できない世界になんだか魅力を感じてしまうのです。本当に生産的じゃないのですけれど・・。
〇カミュも安倍公房も今度じっくりお話してみたいですね。

●また話題は書店なのですが、『傷だらけの店長』はカリスマ店員でもなく、ただ実直に本が好きな店長の不器用なリアルな生き方を描いた作品です。プレッシャーをかける上司、うまく扱えないアルバイト、繰り返される万引き、ノルマの数々・・・。その中で疲労していく店長の姿。そして事件が・・。ライバルの大型店が近くにできる!!!!!彼は書店員を続けることができるのか!!というリアル本です。まったくもって他人事ではありません。

少ない人数でしたが、大変盛り上がったひと時でした。
次回は11月29日です。みなさん、よろしくね。

2018年10月30日(火)衣笠ブックカフェレポート

肌寒い秋の夕方、衣笠は10月2回目のブックカフェが開催されました。本日の参加者は、文学部1回生の方、2回生の方、4回生の方がお二人、産業社会学部3回生の方、法学部4回生の方と卒業生の方、合計7人の方が駆けつけてくれました。

こんな本が話題になりました

●『MONO』は写真部の話なのですが、ロケハンばかり行っています。訪問先が山梨なので、山梨の名所がバッチリわかります。

●『ゆるキャン』はゆるゆるとキャンプをするお話ですが、キャンプ場でのリクェーションや野外調理といったアウトドア趣味を満喫できる魅力と、キャンプを身の丈に合った形で満喫する女子高生たちのゆるゆるな日常を描いています。おすすめです。

●医療事務系のところに就職が決まりました。
〇すごいですね。高野文子の『るきさん』も、月に1回忙しく仕事をしてあとはゆるゆる暮らしています。そんな生活だといいですね。

●卒論はハンナ・アーレントです。政治哲学者です。ユダヤ人でアメリカに亡命した人です。全体主義を生み出す大衆社会について研究しています。ナチがユダヤ人に対して行ったことについて、人間がなしうること、世界がそうありうることへの言語を絶する恐れが彼女の思想の原点です。

●『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は、フィリップ・k・ディックの有名すぎるSF小説です。第三次世界大戦後の未来で、賞金稼ぎの主人公が火星から逃れてきたアンドロイドを処理するというお話です。科学技術が発達して本物そっくりの生物も存在しています。
その技術によってつくられた人造人間は感情も記憶も持ち、人間そっくりで、自分自身でさえ自分が機械であることを認識できていません。そんな人造人間を識別して処理する役割の主人公は、次第に人間と人造人間の区別をつけられなくなっていきます。人間とは何か?人間と人工知能の違いは?を問う作品となっています。

●『人工知能の核心』という本は、2016年3月に人工知能の囲碁プログラム「アルファ碁」が世界ランクの棋士を破ったことで、羽生善治はその勝利の要因を、「人工知能が人間と同じ"引き算"の思考を始めた」としています。もはや人間は人工知能に勝てないのか。しかし、そもそも勝たなくてはいけないのか─。など今のホットな話題を提供しています。

●川添愛さんの『自動人形の城』は城に住むわがままな王子が召使いにかしづかれて生活していますが、召使の振る舞いに満足できません。そこに悪い魔法使いがやってきて、召使いをすべて自動人形に変えたら自分の思い通りになりますよと囁きかけて、王子はそれを選択します。それでどうなったかというと、まったくもって思いどおりにいきません。「服を脱がせ」というと来ている服をビリビリに破いてしまいますし、「食事を持て」というと皿だけをよこします。そこで王子は、これまで召使たちが王子を思いやって気働きをしていたことを思い知ります。見えない、指示のないところでの適切な判断ができないAIの限界を示した本です。

●宮沢賢治の短編を読んでいるのですが、その中の『オツベルと象』は変わったお話です。
あるところの地主のオツベルのところに白いゾウがやってきます。オツベルは倒れるまで象を働かせます。「苦しいです。サンタマリア」と願った象は、月の助言を受けて仲間の象へ手紙を書きます。すると仲間の象たちが大勢オツベルのところへ押しかけます。そしてオツベルを踏み潰します。最後は「おや(一字不明)、川にはいったらいけないったら」という不明の言葉で終わります。不条理さを感じさせます。
〇不条理といったら。カフカ、カミュ、安倍公房、吾妻ひでおですが、今度比べてみたいですね。

●『夜は短し歩けよ乙女』を読みました。黒髪の乙女がとても素敵で「お友達パンチ」がかっこよかったです。
〇そういえば今年2月の事件、「百万辺交差点にこたつで鍋」はこの小説が元ネタですよね。知る人ぞ知るって感じですが。

●有川浩さんをよく読みます。いちばんよかったのは『阪急電車』です。阪急電車の乗客が織りなすさまざまなエピソードが描かれています。ウェディングドレスで元彼の結婚式に出る彼女とか、日本語の不自由な交際相手を持った女子高生とか、戦うおばあちゃんとか読むと痛快ですきっとします。

●『ラブコメ今昔』は自衛隊員の恋愛を描いた短編集です。有川ナイズされた物語です。
自衛隊三部作(「塩の街、空の中、海の底」)とか「クジラの彼」と一緒にお楽しみください。

●司馬遼太郎をよく読みます。『関ヶ原』は徳川家康と石田三成の対立を軸に、天下分け目の戦いとなった関ヶ原の戦いを描いた小説です。物語は家康とその寵臣や三成とその腹心の人間模様と謀略戦が描かれています。また各地の有力大名の内情も描かれるというマクロ的視点が特徴です。

●『竜馬がゆく』はまず主人公竜馬の魅力に圧倒されます。維新の英雄としての竜馬像を創造した作品で、今日の竜馬のイメージはこの作品によります。個人的には捉えどころのなさが魅力なのかなと思います。

●『坂の上の雲』は維新を経て、近代国家の道を歩み、ついには大国ロシアに勝つところまでを描いています。坂の上の天に輝く雲を目指して一心に向かう昂揚感が描かれています。

●『世に棲む日日』は長州の思想家吉田松陰とその門下生で騎兵隊をつくった高杉晋作が主人公の物語です。幕末の長州の勢いが感じられます。

●『国盗り物語』は斎藤道三と織田信長が主人公です。一介の油売りからうまく画策して武士になり、下克上そのままに美濃の藩主となった斎藤道三。斎藤道三が描かれている小説はこれしかありません。そして道三の娘、帰蝶が織田信長に輿入れをした濃姫です。それから信長が主人公となり、成りあがっていく様が描かれます。わくわくして読めます。

●『新史太閤記』は言わずと知れた太閤秀吉の出世物語です。尾張の貧農から身を起こして天下人になるというスぺクタルは人を惹き付けます。商人より武士の方がはるかに才覚が必要で出世の糸口ありと見極めた才能とか、人たらしの様子とか見どころ満載です。

●『魔女裁判』は異端審問としてヨーロッパ各地で見られますが、人を陥れる手立てとして使われる場合もあれば、ロシアなどは単なる民事裁判として行われるなど開きがあります。16世紀半から17世紀にかけて魔女の大迫害の時代がやってきます。魔術を使ったとされる人に対しての私刑が横行します。これは無知による社会不安からきた集団ヒステリーではないかと言われています。

●『ホモ・デウス』は「サピエンス全史」を書いた人の著書ですが、人類は「不老」「幸福」「神性」を手に入れられるかと問うています。これまで人類の悩みは「飢餓」「疫病」「戦争」であったけれど、それぞれ人類史上初めて「飽食」「寿命」「自殺」の数値を下回っています。これは人類を神へアップグレードさせる取り組みであり、このアップグレードの中核にあるのは生命科学と情報技術の発展によるものと言っています。興味あふれる話題ですよね。

●伊坂幸太郎の『魔王』ですが、弟と二人暮らしの主人公は自分が念じれば、相手が必ずそれを口に出すということに気づきます。その力を使ってある人物に近づいて・・・というお話です。宮沢賢治の引用がたくさん出てきます。

●『ファウスト』はゲーテの長編戯曲ですが、ファウスト博士は錬金術や占星術を巧みに操り、悪魔と契約して最後には体を四散して終わる奇怪な伝説を元に書かれた本です。
読んでいるといろいろキリスト教の引用があるんだろうなと感じるのですが、まったくキリスト教の知識がないためにまったく何もわかりません。惜しいなと思います。

●『聖書』を知りたければスマホで「日本聖書協会」を出して検索すればたいていのことはわかりますよ。いろいろ簡単に説明した本もありますし。

●聖書に関わってですが、ノアの方舟ってありますよね。世の中どこの地域でも、どの神話にも「洪水伝説」があるのを不思議に思いませんか。『大洪水が神話になるとき』は、はるか古代に洪水があったかではなく抗えない大災害と戦ってきた人間の精神史を描いています。神話はかつてあったことを乗り切った記録なのかもしれませんね。

●神話というば『ギリシア神話』ですよね・オデュセイア、イリアス。トロイア戦争いろいろありますが、ゼウスが浮気者でヘラが嫉妬するという構図は、様々な神話との合体がはかられて、ゼウスが全知全能の神とされたために、各地の神話の美女たちと関係をもったことにされているのですよね。

●阿刀田高の『ギリシア神話を知っていますか』はギリシア神話のいいとこどりやその骨格、その精神性を簡単に学べます。

●コミックですが、『幸色のワンルーム』は14歳の少女は主人公ですが、両親から虐待され、学校でも苛められ、自殺寸前のところをお兄さんに留められて「誘拐」されます。お兄さんと主人公は一緒に過ごす中でお互いに心を通わせ絆を深めていきます。そして逃げ切れたら結婚しょうと誓い合います。お兄さんの正体は不明です。不思議な物語です。ドラマにもなっています。

●話は戻りますが、日本の神話と言えば『古事記』ですよね。いろいろ見どころは多いのですが、ヤマトタケルやスサノオが女装するくだりがあって、これが何のメタファかなと思ったりします。それと太陽神はだいたいどこも男性神なのに日本だけは女性のアマテラスですし面白いですね。

●『BILLY BAT』は大いなる人類史の物語です。歴史の闇に踏み込んだ壮大なミステリーで、善と悪、陰謀と裏切りをテーマに紀元前から2001年までをジャンプしながら語ります。注目の本ですよ!

●壮大と言えば手塚治虫の『火の鳥』も壮大なミステリーといえます。古代を描いたと思えば宇宙時代を描き、縦横無尽に物語が拡がります。文明にしてもこれまでいくつも文明が隆起してはなくなり、と語り、ある時はナメクジが文明の長であった時代も描いていいます。

●またAIに戻るかもしれませんが、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」というのは稀有な存在と言えるかもしれませんね。何しろ心や感情をもった存在ですものね。
〇のび太がドラえもんをこき使いすぎて未来から裁判起こされるというお話もありましたよね。それほどのび太のためにイヤと言えず働いているのですね。忖度しまくりですね。
〇「鉄腕アトム」の最終回はちょっと悲しいです。人類を助けるために太陽に突っ込んでいきます。悲しいです。
〇アニメがそうだったので、マンガでは助かる話も書いていますよ。
〇オマージュして書かれた『PLUTO』のアトムは最後に死にません。よかったなと思いました。
〇今度の月面に行くドラえもん映画の脚本は辻村深月さんです。楽しみですね。

●辻村作品でいちばん好きなのは『ツナグ』です。死者と生きている人をつなぐことのできる才能を持った人間の物語です。しみじみと読めます。

●『かがみの孤城』は傑作です。7名のひきこもりの中学生がかがみの城に集められて課題をこなしていきます。現世に戻ったときに会おうねと約束しますが、会えません。ここには2段構えのびっくりがあります。一つは時系列のマジックです。読んでみてくださいね。

今回はいろいろ脱線しながらお話が盛り上がっていきました。
次回は11月27日(火)です。みなさんよろしくね。