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2018.10.29

9月のブックカフェレポート

ニュース

2018年9月27日BKCブックカフェレポート

雨が晴れあがった日の夕方、BKCブックカフェが開催されました。新学期の喧騒の中、来れない方たちもいて今日は理工学部4回生の方、情報理工学部4回生の方のみの参加となってしまいました。

こんな本が話題になりました

●『イニシエーション・ラブ』読みました。言われている通りだなぁと思いました。読み返すのが悔しかったので、あとでネットで時系列に内容をチェックして「あ~この時そうだったのか」とか納得していました。
〇女ってこわいなって思いますよね、複数の人と付き合うコツは、呼び名を一つにまとめることですよね。
〇よくありますよね。女の人を「姫」とだけ呼ぶとか・・。

●『紙の動物園』は古き良きSFという感じでよかったです。その中で「結縄」というのは、アジアの山奥の村が舞台で、そこは文字がなくて、変わったことに縄の結び目で文字を表す文化を持っていました。あるとき外の人間がその結び目をタンパク質の結合を表せるのではないかと思いついて、結び目の達人をアメリカに連れて行って、目論見が成功します。その村は少し豊かになって米のもみだねを購入することもできるようになるのですが、その種は1年しか実らなくて、毎年買うしかなくなります。そうした資本主義に巻き込まれてしまったのがその村にとって幸せだったのか・・。考えさせられます。それから「よい狩りを」というお話は、中国の男の子と妖狐の女の子のお話です。妖怪退治が仕事の男の子はその力をだんだん失っていきます。女の子も力を失っていって、とうとう狐の姿に戻れなくなっています。あるときに、その女の子は事業家の愛人になっているのですが、女の子は体を機械に取り換えられていきます。再会した男の子は女の子の体を機械サイボーグ化するのを手伝って、とうとう機械を組み替えたら、元の狐の姿に組み替えられるようにします。女の子は狐の姿で飛び出していきます。そこで男の子は「よい狩りを」と声をかけるのです。深いです。

●『バナナフイッシュ』のアニメ版を見ました。画像がきれいで感動します。
〇昔、コミックス19巻を読みました。恵まれない環境だけど主人公のアッシュ・リンクスが美形で知性的で、とても魅力的です。いわれのない攻撃に耐えて勝っていきます。その彼が見守るのが日本人の男の子なのですが、その何物にも左右されない信頼の心がうれしいです。最後は泣きました。作者の吉田秋生は、他にも魅力的な本を出しています。
作品でいうと「座敷童し」というのがあって、主人公が親の実家の田舎に行ったとき、ちょっと古い着物を着た男の子と知り合いになって一緒に遊びます。遊び終ってみんなと家の縁側に集ったとき、家の人がスイカを出してくれます。口々に主人公もいとこたちも1個足りないと大人に訴えます。でも大人はおかしいなぁ、人数通りだよ、と言います。そして20年以上経って男の子だった主人公は子供を連れて田舎に里帰りします。自分の息子もいとこや親せきの子たちと外で精一杯遊びます。そして子供たちが戻ってきて、縁側でスイカを出した時に、口々に1個足りないと言い出します。大人になった主人公はスイカを出してやります。そしてもう今は自分には見えなくなった空間に向けて「お帰り。また会えたね」というのです。こういうノスタルジーとても好きです。

●『からくりサーカス』実はめっちゃ伏線が張り巡らしてあって、最後にその全てが回収されるというカタルシスに満ちた作品です。ある富豪の愛人の子が多くの遺産を相続します。それで命を狙われたりするのですが、果たして・・・!!という物語です。

●ハウツー本をよく読みます。山口真由さんの『七回読み勉強法』は、教科書は七回読んですべて覚えるというものですが、実用書は作者の自己主張を読むのが面白いなと思いながら読んでいます。
〇僕は読書というのはライブ感を確かめながら楽しむ読み方なので、程よい疾走感を感じられる小説が好きです。自分もすでにその中で生きているように感じて楽しいです。
〇確かに実用本は、自分はこうした、こうやったら達成できる、あなたもやってみましょうとせまってきますが、小説はいろいろなテイストがあって、小説の作者はその書きたいものはテーマだったりキャラだったり時代の状況だったり、様々なことが出てきてそこが面白いのかもしれませんね。
〇でも『7つの習慣』や『人を動かす』など何十年にもわたって、人の役に立って支持されている本もあるので、ハウツー本すごいです。

●本をタイトルや表紙で買うことってありますよね。とくにジャケ買い。でも例えば『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』や『人は見た目が9割』のようにキャッチーさで売れている本もたくさんあります。そういえば衣笠の学生が書いた『パンツあたためますか』というライトノベルがありますが、作者は『マイナスイオンオレンジ』というタイトルをつけていたのに、編集者が勝手にタイトルをつけたそうです。でも手にとってしまうタイトルですよね。戦略があるのかも。

●世の中に本がすごい影響を与えることがあります。昔、新潮社から出ていた『恐るべきさぬきうどん』ですが、まださぬきうどんがそんなにメジャーではなかった時代、この本が変えました。大きな話題となり、ユースケサンタマリアが主演する映画が作られ、世の中に「さぬきうどん」ありと示したのです。

●最近、心安らかに川端康成の『伊豆の踊子』とか読んでみたいなと思っています。
〇読むとあまりにも抑揚のなさに驚きますよ。男子学生と旅の一座が行き会って、その踊り子にちょっと心を寄せて、でも何もなく別れていくお話です。ちょっとした気持ちを描いています。
〇川端康成だと『雪国』の方が大人の読み物ですよ。「国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった」は有名すぎるほどの冒頭ですが、もう一つ有名なセリフがあります。「この指が君を覚えていた」というセリフを豪雪に振り込められた宿の一室で、障子から差し込む雪明りの中で言われたら・・・。エロいですよね。でも読む年代によってわからないかもしれませんよね。

●読んだ時わからなかったなと思ったのは『亡国のイージス』です。その政治的な設定や組織の動き、人の動きなど実際の世の中がわかっていないとキツイ作品でした。その当時は小学5年だったので、話は面白いと思いながらもわからないことだらけでした。やっぱり読む時期ってのがあるのですかね。

●夏目漱石の『こころ』もほとんどが一斉に高校の教科書で出会いを果たしていますが、あんな遺書を送りつけていながら、先生は本当に死んだのかというのが話題になりました。
過去の自分の罪を同等の罰であがなおうとするのはよくわからないけれど、友人を裏切ったことは確かなので、考えさせられました。
〇同じように「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」のセリフは流行りましたよね。恋愛で先んじて得ようとするのは当たり前のことだし、Kもそこまで、死ななくてもよかったのにと思うのは、現代の感覚なんでしょうか。
〇だらだらとはっきりしないのは、新聞小説だったからじゃないでしょうか。小さな盛り上がりを繰り返して、ほどよきところで終ろうと思ったのに、次の連載の作者の準備が遅れに遅れて、遺書の部分を長く書くしかなかった。ちょいと送ります、という分量ではないですからね。

●伊藤計劃の『ハーモニー』はディストピアものとしては秀逸です。これが幸せだと特定された管理社会が舞台です。大戦争の起こった後の世界を描いています。すべてのことが決められていて、食べ物も管理する人が出すそのままを食べて、だからそこにいる人は似たような体型の人々でという感じです。作者は2009年3月死んだのですが、惜しい人をなくしました。こんな物語が書けたのはガンに侵されていたからかな、尋常でない感じです。10日間で書き上げたそうです。健康体だったらどんな作品を書いたのかなと思うと、そこまでは凄まじくないかもと思ってしまいます。

●最近話題の『君たちはどう生きるか』ですが、コペルくんが学ぶ社会科学の様子も勉強になって、行っているのは自分の目で見て、自分で考えて、自分で判断しょう、ということだと思います。大勢が言っているからと惑わされるな、ですね。
〇この小説を思うと泣きたくなってしまいます。この舞台は昭和12年日中戦争が起きた頃です。この時コペルくんは14歳。昭和18年には二十歳を迎えます。もしかしたらコペルくんも戦争に行ったのではないか、コペルくんの目に太平洋戦争はどう映ったのだろう。
もしかしたら戦死だってしたかもしれないと考えるとやり切れなくなるのです。

ここで参加者の方は19時から他のご予定があるとのことで、ブックカフェはお開きとなりました。次回はもっと参加者も増えていろいろお話が展開しますように。