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今月は短編集特集!

 

 後期セメスターも始まり、みなさん夏休みボケの解消は進んでいますか? 季節はいつの間にか秋。そんな今月の読書百遍は、一冊でたくさんのお話を読むことができる「短編集」を特集します! なんといっても短編集は一度で二度おいしい。いや、一度で二度、三度、四度もおいしいものです。そして何より、短編集は一話完結で話が短いものが多いので、本を読む習慣がない人でも、お気に入りの話を一つずつ、ゆっくり読むことができるという魅力があります。また、短編集とひとことでいってもミステリー、恋愛、青春、感動ものなどさまざまなジャンルがあるということも忘れてはなりません。「本を読むのが苦手…」という人は、短編集からチャレンジしてみるといいかもれませんね。
  秋といえば、「読書の秋」という言葉をよく耳にしますが、なぜ「読書の秋」といわれるのか知っていますか? 中国の文人である韓愈(かんゆ)という人が、唐の時代に「燈火親しむべし」という詩を残しました。「秋になると涼しさが気持ちよく感じられ、あかり(燈火)になじむようになる」…つまり、秋は読書に一番適した季節であるということを表現したこの言葉が、読書の秋の由来とされています。ちなみに、秋は気温が14度から16度と脳の活動に最適な温度になるため、読書や勉強に没頭しやすい時期となっているそうですよ? みなさん、このチャンスを逃すべからず!

 

儚い羊たちの祝宴
 「インシテミル」の著者、米澤穂信が放つ“最後の一撃”にこだわった短編集。
屋敷で起きた惨劇の翌年から同日に近親者が殺害される丹山家。使用人の秘密の手記から始まるこの物語。その最後の一行にあなたは戦慄を覚えるでしょう―「身内に不幸がありまして」六綱家にそびえ立つ別館、北の館。お屋敷に飾られた一枚の奇妙な絵と北の館に飾られた一枚の絵。あっと驚く最後を読み終えたあなたはその本当の意味に気付くでしょう。「北の館の罪人」辰野家自慢の別荘、飛鶏館で能力を持て余す使用人。そこに突如現れた待望のお客。読んでいくうちに浮かんでくる予想は果たして…―「山荘秘聞」小栗家の一人娘の誕生日に現れた、使用人でありながら唯一信頼できる存在。しかし一つの事件をきっかけにすべては狂い始める。彼女の本心は一体…―「玉野五十鈴の誉れ」廃れたサンルームに置かれた日記。「バベルの会はこうして消滅した」から始まるこの日記を読み進めるうちにわかるバベルの会の存在意義。そしてそのバベルの会を消滅させた原因とは―「儚い羊たちの祝宴」優雅な「バベルの会」をめぐる五つの短編にちりばめられたいくつもの伏線にあなたは気付くことができるでしょうか?

出版社:新潮文庫
著者:米澤穂信

 

淋しい狩人
 東京の下町の小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれたこの古書店を舞台に、本にまつわる哀しい人間模様を描いた連作短編集。
  失踪した姉の残した「歯と爪」という言葉が結婚式の引き出物の本すべてに落書きされていた。果たして一体―「六月は名ばかりの月」急逝した父の本棚にあった302冊にも及ぶ同じ自費出版の本。押し入れに隠された謎の12万円。平凡な人生を送ったはずの父は、非日常的な計画を実行していたのか―「黙って逝った」電車の網棚に忘れられていた小説。しおり代わりに挟まれた名刺。小説の一節に感動したことから、名刺の人物を訪ねることにした―「歪んだ鏡」ミステリー作家の未完の著作、淋しい狩人。小説通りに殺人を犯し、謎解きをすることで小説を完成させるという人物が現れ、現実に連続殺人事件が繰り広げられる―「淋しい狩人」他2編を含めた六つの短編が読むことができます。どれもが、イワさんと稔という魅力的なキャラクターのおかげでさくさくと読み進めることができます。著者の別作品を彷彿させるものもあり、著者のファンで未読の方にもおすすめです。

出版社:新潮文庫
著者:宮部みゆき

 

午後の恐竜
 まるで予言のようだと思った。星新一が放つショート・ショートはどれを読んでも、予言のように思える。もしかしたら彼には見えていたのかもしれない。私たち人類が歩む未来と、そしてその未来が作られてきた過去が…。
ショート・ショート。それは「短編集より短い短編集」。どの話も原稿用紙10枚以内に収められる短い物語だ。星新一の描く物語は、どれもゾッとするような快感を味わえるものばかりだ。
  表題作となっている「午後の恐竜」。いつもどおりの日曜日の午後、全世界に恐竜の蜃気楼のようなものが現れた。姿かたちは見えるのに、誰も触れることはできず、害はない。人類は不思議に思いながらも、害はないのだとそれを楽しんでいた。しかし、その裏に隠された衝撃の事実…、時が進むにつれ、進化していく蜃気楼の恐竜たち。話の結末では、言葉にできない切なさと、絶望感のような驚きが胸を打つ。

出版社:新潮文庫
著者:星新一

 

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