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学園探偵事務所 第九話

立命館ノベリストクラブ

 

「ねえキミ、ちょっといいかな」
  関西の某県某市の某大学。静まり返った部屋で一人、横になって寝てしまおうかと思った矢先、ちょうど部屋にやって来た室長に声を掛けられた。
「なんですか、室長。またネットゲームのお誘いですか? いくら依頼が全然こなくて暇だからって……」
「違う」
  全力で否定された。
「本当はそうするつもりだったのだけれど、部屋に置いていたパソコンが、いつの間にか壊れてしまっていたので、今日はネットゲームはなしだ」
  毎日ネットゲームが当たり前の室長にとって、パソコンがないのはとてもストレスの溜まることだろう。
「そんなことはさておき、本題に入ろう。……キミ、久々にきた依頼を達成してきてくれたまえ」
  それは約一か月ぶりの依頼だった。依頼がきていることに正直驚き眠気が消えた。
「本当は、この前入った女の子に任せたのだけれど、どうやら彼女は勘違いをしているようなので、キミに任せることにした」
  ちなみにその女の子の名前を僕は知らない。
「で、その依頼というのは?」
  僕は訊ねる。更なる問題は、どんな依頼が来たかということだ。
「えっと、『マックを買ってきてほしい』という依頼」
「……わかりました」
なんだよ、その依頼! と思わずツッコミそうになったけれど、素直に承諾。
「はい、これ」
  室長の手には札が数枚握られていた。それを受け取りポケットに突っ込む。
「何も言わないんだね」
「まあ、言いたいことはあるんですけれど、めんどくさいのでいいです」
「ありがとう。……それに比べて彼女は、『私はパシリですか!』とか、お札を渡そうとしたら『マック買うくらいの金、私が持っていないとでも?』とか言って、挙句の果てには、自腹を切ると言ったので私は感心した。さすが東京出身だ、とね。でもそれから私は驚いたよ。だって彼女の財布には千円札一枚しかなかったもの。足りるかどうか訊いたら足りると言った。『百円マック十個買ってくる』とか言って、さっき出て行った。どっちかって言うとがっかりしたよ」
  たしかにそれは僕でもがっかりする。東京出身なのに。いや、『だから』か。
「で、話を戻しますが、ここらへんだと、どの辺が一番近いですかね?」
  僕はマックを売っている場所を訊ねる。僕はこういうことには疎いのだ。
「んー、そうだな。駅からちょっと離れたショッピングモールに行けば、あるんじゃないかな? もっとも、彼女は駅に向かって行ったけどね」
  やっぱり。でも、あの駅に行ってもマックはないのに。
「それじゃあ、いってきます」
  僕は、自転車でショッピングモールへと駆けていった。

 数時間後、無事にショッピングモールでマックを買うことができた。早速帰って、部屋のドアを開けると、すでに部屋の中は食べ物の匂いで満ち溢れていた。
「頑張って処分してね」
  そこには、椅子に座りながらコーヒーを啜る室長と、マクドで買ってきたものを頑張って食べている女の子の姿があった。
「ただいま」
  僕は買ってきたパソコンを室長に手渡す。室長の依頼したパソコンだ。
「ありがとう。キミなら私の依頼を達成してくれると思っていたよ」
そして早速、室長はパソコンを机の上に置き、起動し始めた。
仕事を終えた僕は、室長にネットゲームに誘われる前に部屋から立ち去ろうと踵を返す。
「帰る前に、彼女が勘違いして買ったマクドの処分を手伝ってあげてくれないかな。もちろん正式な依頼だ。既に彼女から依頼金はもらった。あ、私はダイエット中なのでやらないよ」
依頼なら仕方がないと思いつつ、僕はマクドのハンバーガーを手に取る。
「マックと言ったら、普通これよ!」
  隣で、女の子が文句を言っていた。
「あのさ、ここ関西だよ。だから、これはマックじゃなくてマクドだよ」
  室長が、それを指さして言った。だが目線はパソコンの画面だ。二人が色々と言い合っている間に、僕は残りの全て食べ終えた。
「ミッションコンプリート」

 

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