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2018.05.07

4月のブックカフェレポート

ニュース

5月のブックカフェのご案内はこちら

4月12日(木)OIC4月19日(木)BKC4月26日(木)衣笠

2018年4月12日(木)OICブックカフェレポート

風の強い春の日、ひさびさのブックカフェが開催されました。今日の参加者は、心理3回生の方、心理2回生の方4名 心理1回生の方2名、政策4回生、2回生 経営3回生の方の合計10名が駆けつけてくださいました。

こんな本が話題になりました

●辻村深月の『凍りのくじら』を読みました。結局はファンタジーでハッピーエンドだと思うのですが、主人公のよんどころない状況がよく書かれていて、後ろ暗い感じがよく出ています。このお話の主人公は藤子・F・不二雄が好きで、藤子さんはSFをサイエンスフィクションではなくて「少し不思議」と呼んでいます。それにならって主人公は「少し不在」など自分や廻りの人を定義づけています。よく見ると伏線が編みこまれていて、2度読み、3度読みで物語が深まっていきます。

●辻村深月さんは、本屋大賞第1位になった『かがみの孤城』が秀逸でした。集められた少年少女が同時代に生きていたのではないことが一つの仕掛けなのですが、最後に2回くらいどんでん返しがあります。

●辻村さんと言えば『ツナグ』ですよね。1回だけ死んだ人に会える物語で感動ものです。

●最近『君たちはどう生きるか』がめちゃ盛り上がっていて、なんだかなぁと思います。
時代なのかもしれませんが、「豆腐屋の子を助けてあげた」みたいな階級差の上から目線を感じたりして。

●この物語が書かれたのが昭和12年という時代を思えば、がんばってリベラルなお話を書いたのではと思います。日中戦争が始まる年ですし、もう少しで太平洋戦争になります。この時14歳のコペルくんはもしかしたら徴兵をされたかもしれません。でも私も漫画のコペルくんはイメージが違ってちょっといただけません。

●僕のお薦めの作家は穂村弘さんです。彼はとても面白い人でふわふわ人間です。人の目に自分はどう映っているのか気にします。短歌をつくっているのですが、切れ味がするどいです。でも彼はなかなかいろいろなことを決めきれません。それは単に優柔不断ということではなくて、観察眼が鋭すぎて賢すぎて回りが見えすぎるんです。だから決断ができにくい。それとエッセイなんか見るととてもロマンチストです。ある時包帯を巻いた女性を見ると「小鹿ではないか」と言ったり、「ある料金所で女の人に出会う。意外性のある出会いを果たすとその相手が女神のように見える」と書いたりしています。
とにかく『蚊がいる』を読んでみてください。

●原田マハさんの『アノニム』はすごいです。美術の知識があふれかえっています。
その美術の教養を書き込みたくて、その結果、物語が止まったりいろいろしていますが、読んでいるうちに関係なくなります。オークションの描写とか専門書読んでいるみたい。

●『一緒にいてもスマホ』は考えさせられます。最近の人は待てなくなっていると言われています。調べものもすぐわかるし、誰でもすぐ連絡はつく。そうでないと耐えられない。普通ならヒマな時間が人間にはあって、創作をしたり、自分自身を見返したり、精神安定の場でしたが、今はそれがすべてスマホになってしまっている。一過性のイライラが積み重なっています。自分を振り返った方がいいかもですね。

●あさのあつこさんの『ミヤマ物語』は注目の本です。いじめにあっているトオルと別の世界の最下層で暮らすハギは、決して会いまみえることのない世界のそのはざまで出会います。果たして二人は世界を変えられるのか・・。二人の世界のせめぎ合いの中で進む物語はたくさんありますが、この系統がとても好きです。

●僕はカフカの『変身』が大好きです。読めば読むほど解釈に困ります。最後に虫になったザムザを死んでしまって、でも妹は笑っていて去るところが気になります。

●人のいのちとは何なのかが問われている感じがします。例えば虫というのが、植物人間の比喩だったとすると、体は人間でも中身はもはや人間ではない。答えはむずかしいですね。

●カフカはなんと同じ人と3回婚約して、3回破棄したそうです。信じられませんよね。
結婚前には迷って、破棄したら惜しくなっての繰り返しでしょうか。不条理ものを書いているわりにははっきりしませんね。

●サンデル教授の『これからの正義の話をしよう』は納得できません。電車が暴走していて一人の死と複数名の死を選べるのかという問いは倫理的にはあってはならないことです。

●村上春樹は小学生の時に『1Q84』を読みました。何言っているかわからないふわふわ感が魅力的だなと思って、春樹を読むようになりました。『騎士団長殺し』も読んだのですが、これは『1Q84』よりはっきりとした物語で、でもふわふわ感は一緒でした。

●そして百田尚樹なのですが、これはがっつりはっきりの物語で、『永遠の0』より『海賊と呼ばれた男』の方が面白かったです。世界資本に対抗した出光の一代記です。

●伊坂幸太郎の『魔王』ですが、まんがとかいろいろなバージョンがあって読ませます。
結構SF的で兄弟がでるのですが、自分が思っていることを人に言わせられる能力があって、けっこう政治的な感じです。

●『教団x』は深夜読み進んでいたのですが、暴力的な場面とか多くて怖くて途中で読むのをやめました。中村文則さんの作品はどれも暗くて読みにくいです。

●『ネシャン・サーガ』は現実世界と悪神のつくった異世界の二つが同時進行する物語です。
キリスト教がベースにあって、モーゼに選ばれて神の力で敵を倒すというような物語です。

●倫理の授業のテキストである『愛とか正義とか』は面白いです。「デスノート」や「スターウォーズ」で物事を語るというところがあって、そして先生が倫理や哲学は結論を出しませんが僕は答えを出しますと言っていました。これから楽しみです。

●これまで小説を読みませんでしたが人に薦められて住野よるさんの『きみの膵臓を食べたい』を初めて読んでみました。泣かされないよと思っていたのですが、泣いてしまって住野よるにはまりました。

●『図書館の魔女』は異世界系の物語で、言葉で世界を開こうと主人公の少女は動きます。
最初は展開が遅くぐだぐだと思っていたのですが、実は伏線がたくさん仕込まれてあってそこに気が付くとめちゃおもしろい!!お薦めです。

●『陽だまりの彼女』は最初恋愛小説だと思って読んで、最後にえっ~と驚いて次に読むとSFチックな物語で、もう一度読むと恋愛だからとなります。

●この本は表紙の女の子がかわいいということで、評判になりました。僕も女子が男子に読んでほしい本1位ということで読みました。

●『古事記』はけっこうおもしろいです。イザナギとイザナミが出会いのとき女の方から声をかけたから、骨のない子どもがうまれたとか、死んだ嫁を読みの国に迎えに行った問いに途中で振り返ってダメにするとかなんだかんだとつっこみどころが満載です。

●カリギュラ効果というのがあるそうで、この映画化されたものが18禁で見てはだめだということになったら、みんなが見たい見たいということで何度もリバイバルされました。でもそんなたいしてエログロではないような...。話題になれば中身以上の評判がたつということですね。

●『喰う寝るふたり住むふたり』は同棲8年くらいのカップルのお話で男子目線と女子目線がそれぞれ出てきておもしろいです。

●『オーバーロード』は、異世界への転生ものです。世界の終りと再生がテーマで。おもしろいです。

●『サマーウォーズ』は本でもいろいろなバージョンがあって、女の子と男の子が、熱烈恋愛のもあれば淡いやつもあり、そんなでもないもあり、一つに収めたくなかったのかなと思ったりします。

●昔読んでどの本だか知りたいのがあります。ジョーカーが出てきてRPGをします。

●もしかして『デルドラ・クエスト』ではないですか。

●わ~!出会えました!!

たくさん話題は出ましたがなかなかまとめきれずにこの位で。
次回のブックカフェは5月17日(木)になりました。そしてOICビブリオバトルが5月24日(火)5時からに決まりました。みなさん見に来てくださいね。

2018年4月19日(木)BKCブックカフェレポート

穏やかな春の午後、BKCブックカフェが開催されました。本日の参加者は、情報理工2回生、理工4回生の方お二人 経済5回生の方が参加してくれました。就職や実験で来られない方もいて、数は少なかったけれど白熱したブックカフェでした。

こんな本が話題になりました

●今日初めてブックカフェに来ました。今年100冊の本を読もうと決意しました。きっかけは、湊かなえの『告白』を読んだことからです。初めて映画を見てその迫力に圧倒されました。あんな普通っぽい人があんなハードな物語を書くなんて信じられません。

●カズオイシグロの『夜想曲集』が好きです。作者初の短編集ですが、5つの音楽と夕暮れをめぐる物語で、人生の黄昏や、愛の終り、かなえられなかった夢などが書かれています。

●カズオイシグロは『わたしたちが孤児だったころ』は変わった物語です。イギリス人の主人公は両親が失踪し、イギリス人の伯母に引き取られます。彼が育ったのは上海の租界で、そこはアヘンに汚染された地域でした。後にその怠慢や腐敗を嘆いていた人たちの恩恵を受けて、自分が生きて来られたことを知るというお話で、ミステリーチックに描かれています。

●ジョージ・オーウェルの『一九八四』はディストピア小説の系譜の小説で反全体主義のバイブル的存在です。

●日本のSFでいえば、伊藤計劃は注目の作家です。『虐殺器官』で、ある世界がおわりを告げた後、その後の世界として『ハーモニー』という押し付けられた理想社会の物語を書きます。自分は病気で死にそうなのに、純度の高い健康社会を描いたというのは何かすさまじいものを感じます。

●図書館で借りてドストエフスキーの『罪と罰』を読んでいます。ルーブルやカペイカという紙幣価格の価値もよくわかりません。ましてや読みにくい言い回しの文章だし、人の名前が一人の人の愛称とかいろいろ出てきてよくわかりません。

●寒い国の人は体力があるのか、長文だし、たいそうな言い回しで読みにくさをアップさせているのは納得ですね。

●真面目な人類史の本を読んでいます。『銃・病原菌・鉄』というタイトルで、どうして人類は発祥のアフリカでなくてヨーロッパ大陸で世界のリーダーが生まれたのか。食糧生産の問題を挙げています。狩猟生活で移住して生きているようでは、余剰生産も生まれないし、農民が生きていくのが精いっぱいで、技術者などを養えません。そこの差が力量の差として出てきます。またインカ帝国が4~5万人もいたのに、ピサロのスペインのたった1,000人に滅ぼされてしまいます。それは銃と馬をスペインが持っていたこともありますが、沿岸部がスペインに侵略されていたことが伝わっていなかったとか、文字がないため伝達能力が低かったなど言われています。すごく学べる本です。

●辻村深月さんの『かがみの孤城』は、いじめなど読んどころのない少年少女が集められますが、同世代なのにおかしい・・。あとで生きている時代に差があることがわかったり、あっという仕掛けがあったり、読み応えがありの本です。

●辻村深月さんは『ツナグ』がよかったですよね。
すごく共感で来て感動させられます。いろいろあってもハッピーエンドなのがいいです。

●司馬遼太郎を読むと歴史がわかります。ただ司馬史観といって彼独特の観方ではありますが・・。いちばんすごいのは彼が『竜馬がゆく』を書かなかったら、竜馬の功績がこれほど評価される世の中になっていませんでした。彼の目をとおして書かれた竜馬が歴史上の竜馬として認識されたのです。

●最初に読むとしたら『燃えよ剣』がいいかもです。世に名を轟かした土方歳三も最初は半分農民で夜這いとかかけている毎日でしたし、そこからどんどん姿が変わって行きます。武士のあるべき姿を守ろうとする意志、最後は滅びの美学というのか、五稜郭で自ら死んでいきます。古き体制と共に。

●『花神』は一介の村医者が討幕の司令官に上り詰めたという男の物語です。最初は冷奴がすきだとか、もらった嫁がヒステリーで困るとか、つっこみどころが満載です。

●『関ヶ原』は誰もが知っている天下分け目の戦いを描いていますが、賢くてとんとん拍子に出世した石田三成が本当に人望がなかったりとか、その当時の武将たちの動きがよく分かります。

●『国盗り物語』は一介の油売りの商人が美濃一国の主(斎藤道三)となり、その娘が尾張の織田信長の妻になり、舅から婿へ国盗りが続いていくという物語です。

●SFでいえば、まず入門書としてはハインラインの『夏への扉』がお薦めです。
冷凍睡眠(コールドスリープ)やタイムマシンが出てくる場面がありますが、主人公が裏切りやいろいろなものに打ち勝ってハッピーエンドなのがいいです。また出てくる猫がとてもかわいいです。

●ブラッドベリィの『華氏451度』は、主人公がファイヤマンといって、本を燃やすのが仕事ですが、燃える火にエクスタシーを感じています。人々から思考力を失わせ、逆らわないようにするために、本を敵視しているとは気づいていません。でもある時、ある人との出会いで活字やその意味の価値を認識して、政府に逆らう側になるというお話です。

●同じ作者の『火星年代記』はSFファンタジーですが、大好きな本です。その時、火星には火星人が住んでいて、テレパシーなどの高い能力を持っています。ある時、地球から調査隊が火星に来ますが、いろいろ抵抗して地球人を返してしまいます。火星は不可侵だったわけですが、ある日滅びてします。地球人がもたらした病原菌によって。そこから火星人のいなくなった火星に地球人の入植が始まります。その当時若い地球人のカップルが火星で一旗揚げようとホットドックのお店をたちあげます。こんがりと焼いたソーセージや玉ねぎの匂いなどが満ち溢れます。そのとき地球が爆発して滅びてしまいます。核爆発がおこったのです。もくろみが崩れた若妻は「オフシーズンになったわ」と言います。
そうしたエピソードが重ねられて、火星の歴史が語られます。
最後の「100万年ピクニック」では、地球が滅びるまでに家庭用の宇宙船で逃れてやってきた地球人親子が出てきます。親子がやってきた火星は緑の木々も美しく、湖にはなみなみと清浄な水がたたえられています。そのときいちばん下の男の子が尋ねます。「火星人はどこにいるの」父親は答えません、でもあるとき、湖の水面に自分たちの姿が映ったとき、父親は言います。「ごらん。これが火星人だよ」詩情を讃えた作品です。

●ホラーSFというジャンルがあって、小林泰三の『脳髄工場』がありますが、この社会は皆ほとんど人工の脳髄をつけて生活しています。ホルモンを定期的に分泌したりして、感情の抑制をしたりしています。主人公も脳髄をつける年頃になり、どうしょうか迷っているという物語です。

●鈴木光司の『リング』は映画で貞子像が増長されてとんでもないようになっていますが、原作はもっとシンプルです。あるペンションに置かれたビデオテープを見ると「このテープを見たものは1週間後に死ぬ。死にたくなければ」のところでテープが消されていて、どうすればいいのかわからない。探索をするというところから始まり、結果ダビングして他人に見せればその人は助かるというものでした。

●『らせん』は「リング」の後日談です。「見ると呪い死ぬビデオ」の解明を分子生物学的観点からおこなうというものです。

●解決編の『ループ』は困ったものです。リングの出来事が架空の世界にプログラミンされたものと言う破天荒な作りになっています。

●鈴木光司だったら、『楽園』が好きです。人類の遠い旅の記録を描いたものです。

●もはやSFの古典となっている『冷たい方程式』。

●日本のSFと言えば筒井康隆ははずせません。小松左京が『日本沈没』を書いた2週間後に『日本以外全部沈没』を書いたというトリッキ-なところもおもしろいです。

●やはり七瀬シリーズが好きです。『家族八景』『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』は、超能力者の孤独とやるせなさが描かれています。

●『ジョジョの奇妙な冒険』は変わったマンガです。最初は劇画調だったのですが、今は芸術的になってしまって、時間を左右する書き方がちょっと難しすぎる気がします。
「やばい!殴られる」となったときに、時間を吹き飛ばしてすでに殴られている状態になってしまっているとか。超高速な描写が不可解です。

●名探偵コナンはまだ薬で小さくなって半年しかたっていませんが、コナンは戻れるのか、戻れない場合、今の年齢から成長ができるのか。成長できた場合、17歳位の新一と27歳の蘭で成立するかなとかいろいろ考えてしまいます。

●『センゴク』はあまり好意的な評価をえていない美濃の出身の武将を、センゴク史上最も失敗を撤回した男として描いていいます。新しい視点で楽しめておもしろいです。

●前にここで話題に出た『昭和天皇物語』読みました。半藤一利の歴史観が色濃くでています。『日本のいちばん長い日』などを書いた作者です。

●『コミュニケーションするロボットはつくれるか』ですが、ロボットは心を持てるかというのは結論の出ない命題です。プログラミングした内容を答えているのか、それ以上の感情はつくれるのかというのは興味ありますね。

●神林さんの『プリズム』ですが、世界の空に漂う要塞があって、世界のすべてを制御しています。その考えに逆らうことは許されていません。見つかったら追放されてしまいます。

●『1984』とかディストピアもの系ですよね。おもしろかったです。
なんか、日本とドイツが戦争に勝った歴史の物語とかもありますし、P・K・ディックの『高い城の男』も。第2次大戦の枢軸国が勝っていて、アメリカが東西に分割されている世界の話とかなんだなぁと思いながら楽しんでしまっています。

短い時間でつまった交流をしたひとときでした。次回は5月31日(木)になりました。
みなさんよろしくね。

2018年4月26日(木)衣笠ブックカフェレポート

春風の吹く夕方、新年度1回目のブックカフェが開催されました。本日の参加者は、法学部3回生の方、産業社会学部3回生の方、文学部1回生の方、文学部3回生の方、文学4回生の方3名、合計7名でした。

こんな本が話題になりました

●読書会用に芥川龍之介の『あばばばば』を読みました。たばこ屋にいた若い女の子をからかったらすごく恥ずかしそうにしていたのに、数年後、子どもを産んで「あばばばば」と子どもをあやしている姿を見ているとそんな恥じらいはみじんもない。女って変わるんだなというちょっとエッセイっぽい小説です。

●「階段島シリーズ」は『サクラダリセット』を書いた人が著者なのですが、とてもエモいので好きです。現実とは隔絶された世界が舞台で、現実世界では捨てたイヤな部分や、何かに夢中になって治らないもの、そんなことが集まって作られています。どういう意味なのかなと考えさせる、遠回しの言い方が多用されているので、読みにくい人もいるかもしれませんが、イメージ的には語り口の少ない西尾維新という感じです。この出版社は流通されていないので手に入れるのが大変です。

●桜庭一樹が好きです。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は少女小説風の文体や萌え系の表紙などとはうらはらに非常にショッキングな話なので印象的です。最初に人が死んでいます。

●『推定少女』は、家出をする女子中学生が主人公で、出先である少女と出会いますが、主人公の焦燥感などがひしひしと伝わります。最初はバッドエンドだったのが、編集者の意向でハッピーエンドに変わったそうです。

●西尾維新の『少女不十分』は主人公の男子と彼を監禁する少女Uの過去のエピソードが語られますが、二人の描写が綿密で、より緊張感を味わえます。西尾維新はこの小説を書くのに10年かかったと言っているそうです。

●『美少年シリーズ』は西尾維新の入門書としてとても読みやすいので最適です。

●突然って感じでスミマセンが、ハンナ・アーレントの『全体主義の起源』を読みました。

絶対主義王政の中で根付いていた国民国家は非情な階級社会で、資本主義が台頭していくと資本家が政治に介入する帝国主義が出てきます。そんなことがつらつらと学べる本です。

●『ヴァイオレット・カヴァーガーデン』は、自動手記人形と言われる代筆屋の少女を中心に展開される群像劇です。主人公は昔は少女兵で高い戦闘力の持ち主でしたが、かつて戦場で大切な人から聞かされた言葉の意味が分からず、理解できなかった彼女は、代筆屋をしながら人々と関わり合い、その言葉の意味をさがしています、というお話です。

●『ミリオン・クライン』は、舞台は人類が滅びに瀕した数百年後の世界。環境制御システムの暴走により国土の大半が水没した日本を復興するため、異形化した巨躯の怪物と戦う人類という設定です。退廃的でシリアスな世界観がたまりません。

●光原百合さんの『扉守』を読みました。病気がちの伯母に頼まれて伯母の小料理屋を手伝うことになった主人公。常連客の一人が息子の家に行くのに、店の奥にある井戸の水を飲む。必ず戻ってこられるという言い伝えを信じて・・。不思議が漂う商店街の物語です。

●『ダブルブリッド』は「あやかし」と呼ばれる特異な遺伝子を持ち、常識を覆す特徴を持つ生物が各地で発見されたという世界が物語の舞台。その「あやかし」とヒトの間に生まれたダブルブリッドを呼ばれる主人公と「あやかし」の捕縛を生業とする人物の交流の物語。

●ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』は、神話をモチーフに言葉遊びの限りを尽くした本。でもとても難解で読めたものじゃありません。大江健三郎だって、原著を30年かかっても読めなかったそうですよ。

●花村萬月の『ブルース』は、錆ついたギタリストとエキセントリックな歌姫、そしてホモのヤクザが奏でる悲しい旋律の物語。かなり引用の多い本で、ボブ・ディランが黒人のマネをしたとかいろいろ書いてあります。

●村上春樹はキライですが興味があります。「1Q84」とかその世界観をありのままに楽しめて、スタイリッシュな都会的雰囲気を受け入れられたらいいのでしょうか。

●『ノルウェイの森』は病気の人たちのお話ですしね。

●『夜のくもざる』は実はラヴェルの『夜のガスパール』のもじりだそうです。
何度も読み返したくなる短編が揃っています。

●春樹のいちばんの長編は『ねじまき鳥クロニクル』だと思いますが、戦争などの巨大な暴力を扱っていて注目です。大幅に推敲によって削られた部分が『国境の南、太陽の西』になったそうです。最近はハルキストと呼ぶことは少なくて村上主義と呼ぶそうですよ。

●星新一はバイブルのようにたくさん読みました。

●SFは、星新一、手塚治虫、藤子・F・不二雄で語りつくせるかもしれません。

●『鉄腕アトム』は、手塚治虫の作った心を持ったロボットですが、生まれたのは2004年です。1960年台から見た2004年は相当な未来だったのでしょうね。

●アトムに影響を受けて書かれたのが、浦澤直樹の『PRUTO』です。アトムの世界観を見事に表現していますし、最後に原作のようにアトムが太陽に突っ込まなくてよかった~と思いました。

●浦澤直樹は注目すべき作品が多いです。『20世紀少年』『MONSTER』でもいちばん話題になったのは『MASTER KEATON』です。なかなか新版が出なかったのも、漫画家と原作者のバトルがあったからと言われています。原作者はほとんどストーリー作りをすることなく、浦澤と編集者が毎週がんばっていたのですが、原作者は設定とキャラという世界をつくるのが大仕事で、それに基づいての作品なのですべて俺のものだ!という主張で、そうした原作者の主張に「美味しんぼ」の原作者も同調して...と収まらなかったそうです。

●手塚治虫の『火の鳥』が好きです。なかでも復活編が好きです。人間を人間として見られなくなった少年の話で、ロビタの生誕の物語も書かれています。

●『火の鳥』は最初に歴史の曙である『黎明編』が書かれて、次に『未来編』で地球の最後を描くというように、過去、未来を繰り返し描いています。

●『ドラえもん』は究極のSF漫画だと思います。いろいろ出てくるドラえもんの道具にセンスが感じられます。

●ペンクラブの先輩が書いた『パンツあたためますか』ですが、第2巻が出ました。
第1巻は大学生の悩みを的確に描いているのでお薦めです。でも本人は「マイナスイオンオレンジ」とタイトルをつけたのに、編集者に「パンツあたためますか」に変えられて、でもそれがヒットにつながったので何も言えないそうです。

◆小学校の頃何を読んでいましたか。

●宗田理の『ぼくらの7日間戦争』を好きで読んでいました。中学1年生の男子全員が工場に立てこもって大人と戦う話です。わくわくして読みました。

●『ドラゴン・ラージャ』は元は韓国のファンタジー小説ですが、翻訳されて日本でも人気を呼びました。仲間たちとの旅、迫りくる謎...はらはらして読めます。

●ホラーは古典でも楽しめます。『フランケンシュタイン』はいのちの謎を解き明かし、自在に操ろうとするところから始まりました。

●『ドラキュラ』はしんしんと怖い本です。自分自身が違うものにかえられて死ぬというのは究極の恐怖です。

●西洋ものでいちばん怖いのは『猿の手』だと思います。ある老夫婦が少しばかりのお金を「猿の手」に望んだために、息子の死の代償にお金が入ります。母親は息子が生き返ることを望みます。そうして息子は異形のものとなって帰ってきます。父親は息子を安らかに眠らせるように望み、息子は帰っていきます。かなえられるという3つの望みが思いがけない結果となって帰ってくる怖さがあります。

●小学校の頃は、ホームズとルパンの児童もののシリーズをすべて読んでいました。シャーロキアンにはなりきれませんでしたが、かなり入れ込んでいました。ルパンも南洋一郎さんの大胆な描写と意訳で数倍楽しめたと思います。

●「古畑任三郎」のビデオを見ていたら、古畑が部下の西園寺くんから「古畑さんと同じ誕生日の人物はシャーロック・ホームズ」と教えられてほくそえんでいました。

●『デルドラ・クエスト』。デルドラ王国は7つの宝石で守られていたのですが、それも怪しくなり、国を守るための戦いが始まります。大河的なファンタジー小説です。

●『ごんぎつね』は本当に救いがないので心に残っています。「ごん。おまえだったのか・・。」ですぐ泣けます。取り戻せないものってあることを学んだんですね。

●うちの小学校に置いてある『かちかち山』には最後に婆さんがババ汁になるところまで書かれていました。小学生に良かったのかな。

●『羊男のクリスマス』は反対に教科書に入れてほしいなぁ。

●芥川だと『奉教人の死』を教科書で読みたかったです。

●太宰治の『走れメロス』ですが、リルタイムでメロスの走っている距離をはかれる機械があるそうです。

●でもメロスってほんとうは走っていないよね。(皆から「そう、そう!」の大合唱)

●僕は谷崎潤一郎が好きなのですが、未読の方にはぜひ『春琴抄』を読んでほしいです。
短い作品ですし、被虐的な関係とそこにある純愛を感じてほしいです。

●坂口安吾の『桜の森の満開の下』もぜひ読んでもらいたいです。桜の妖しいまでの美しさと冷たい女に尽くし続ける怪盗に悲哀を感じます。最後にはすべて消えてなくなります。
戦争体験があったからこそ書ける物語だったかもしれません。

●手塚治虫の『新宝島』を読みました。古い作品なのに僕の知っている手塚治虫とさほど変わらない印象でした。

●究極のミステリは芥川の『藪の中』かもしれません。本当は誰が殺したのか皆目わかりません。

●宮沢賢治の『やまなし』は谷川の底の蟹の兄弟たちが見る世界を描いたものです。一度目を通してみて。

●誰かゲーテの『ファウスト』を分かり易くよける本を知りませんかぁ~!!!

●僕は本を読むとき、最後の1ページに目を通してから本格的に読み始めるのですが、これで失敗したなぁと思った本が『陽だまりの彼女』です。まるっきりネタバレして楽しめませんでした。

●村上龍の『69』ですが、解説で「時代の流れに乗れないのはだめ」と書いていたのに20年たったら、「あの時は若かった」と書かれていて笑いました。

●デビュー作の『限りなく透明に近いブルー』はパリピ(パーティーピープル)の小説だともいました。退廃的が受けた時代なのかなぁ。

●『デファレンス・エンジン』は19世紀のヨーロッパが舞台で、科学革命の中身がすべて蒸気機関にある世界のお話です。上下巻、なかなか難しくて、一足飛びには読み切れません。

●『名探偵コナン』は映画が素晴らしかったです。また漫画ですが、何かの加減で高校生に戻れた新一が蘭に告白するのとか、わくわくものです。

●夏目漱石の『吾輩は猫である』ですが、だらだらで読みにくいと思って挫折しました。
あの頃はこれが大衆小説で読みやすくちょっと笑える本だったのですよね。それで考えると今のライトノベルも何年後かは純文学に出世するかもです。

●『夢十夜』が好きです。第一夜の100年の恋とか、第三夜の背負っている子どもが重くなってくる話とか、あと何夜目だったか運慶の話とか、どれも印象的です。

●ふだん恋愛小説とか読まないのですが、最近『きみの膵臓を食べたい』を読んでとことん泣いてしまいました。心が洗われた気がします。

もっともっとたくさんの話題が出たのですが、追い切れないほど、盛り上がったひと時でした。次回は5月29日(火)です。誰でも参加できます。よろしくね。