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2018.07.03

6月のブックカフェレポート

ニュース

2018年6月21日(木)BKCブックカフェレポート

蒸し暑い日の夕方、BKCブックカフェがリンクカフェテリアで開催されました。
本日の参加者は、理工学部4回生の方がお二人、生命科学部院生の方、情報地工学部2回生の方が参加してくれました。

こんな本が話題になりました

●浅田次郎の『蒼穹の昴』を読みました。清代の中国を舞台にした歴史小説で、著者はこれを書くために作家になったと豪語している作品です。主人公は貧しい身の上のために宦官となって出仕をして出世する物語です。西大后とその反対派の戦いが描かれています。

●『ニューロマンサー』はお薦めです。雰囲気がすごく良くて、ブレードランナーの世界観も持ち合わせていて、書かれているのはハイテクな世界なのに、昭和感があります。外国モノなのに、汚い路地でうどんをすすっているような既視感があります。

●ドストエフスキーの『地下生活者の手記』を読みました。ドストエフスキーについてはあいつキライだな」と思いました。自意識過剰なために地下にこもる男の物語で、ドストエフスキーの全作品を解く鍵と言われていますが、とにかく暗いです。

●本屋大賞1位『かがみの孤城』、ようやく6人待ちを突破して借りることができました。

●まだ読んでいないのですね。次回、読まれた後にお話しましょう。今皆さんで話すとネタバレになるので...。

●アランの『幸福論』を読みました。「負の感情は自然には湧いてこない、自分で作っている」や「悲しみに浸ってはいけない、悲しみは病気だと思えばすぐ抜け出せる」「幸福になる一番のルールは自分の不幸についてけっして話さないことだ」「幸福は降ってくるものでも与えられるものでもない。自分でつくるものなんだ」...平易で読みやすい人生論です。

●アニメやコミックをきっかけにボードレールの『悪の華』を読みました。これは詩集ですが、男女間のことだけでなくあらゆることが愛欲的に描かれています。最初は旧字体が読みにくくてわかりにくかったですが、後半は旧字にも慣れて読み易くなりました。

●外国の詩は訳が入る分、わかりにくいですよね。日本の詩の方が楽しめませんか。有名な中原中也の『汚れちまった悲しみに』とか。

●谷川俊太郎もいいですよ。有名なのは『二十億光年の孤独』ですが、「万有引力とは引き合う孤独の力」というところが大好きです。

●『室生犀星詩集』の「故郷は遠きにありて思うもの」のもいいですよ。

●『高村光太郎詩集』の中の「道程」は定番ですよ。「僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る」昔、教科書で読んだ頃を思い出します。

●茨木のりこの詩は、「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」はストレートすぎますよね。

●やられた感を味わいたくて叙述トリックの本をたくさん読みました。『ハサミ男』はハサミを使った連続猟奇殺人を書いた本です。でもその犯人であるハサミ男をそっくりまねた殺人が起こってしまい、ハサミ男が自ら調査をしていきます。あっと驚きます。

●『葉桜の季節に君を思うということ』も驚きの伏線回収で有名ですが、本当にあっと驚きます。あちこちにヒントがちりばめられていたのになんで気が付かないかな。お薦めです。

●『神のロジック人のマジック』謎の学校に世界中から集められて、奇妙な犯人当てクイズにチャレンジさせられる僕ら。一人の新入生が学校に住む邪悪なものを目覚めさせてしまったとき悲劇が襲います。、驚愕の結末と周到な伏線を楽しめる傑作ミステリーです。

●道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』は変わったミステリーで小学生の一人称で語られるためミスリードされていることになかなか気づけません。

●秀逸なミステリーと言えば、こんなお話は映像では絶対だめだろうと思って読んでいたのに、映画版を見たら、素晴らしく出来がよかったことにびっくりしたのが、伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』です。お薦めです。

●伊坂作品は伏線をすべて回収しきるこだわりがあります。好きな先品は『グラスホッパー』です。人気があるせいか『マリアビートル』と『AX』と続編も作られています。

●ちょっと変わった作品ですが『死神の精度』も好きです。人間の死を判定する死神千葉の物語でいくつかの物語が入っていますが、ミュージック好きで、現れるのは雨の日というシュチエーションも雰囲気があります。

●一番大学生にお薦めなのは『砂漠』です。青春ど真ん中の作品で、キャラも立っています。

こんな大学生活送りたい!と思わせます。「砂漠だって雪をふらせてみせる」「人間にとって最大の贅沢とは人間関係の贅沢ことである」とか名言も満載です。

●僕は『終末のフール』がいちばん好きです。隕石が地球にぶつかって滅亡するとわかって数年たって、暴動とか少しおさまった頃のお話。様々な登場人物がそれぞれの生活をしています。僕は、それでも毎日変わらずたんたんと走り続けるボクサーの話が好きです。

●そういえば前にブックカフェでこの本のことを読み終わるのがすごく惜しいと思った作品です、と言っている人がいました。

●『砂漠』もそうですが、特に理系男子にお薦めなのが、有川浩の『キケン』です。そのはじけた大学生活はうらやましいです。

●私は「お店の子」が好きで、学園祭でのラーメン奮戦記がお気に入りです。そして最後には涙涙......。ノスタルジーを感じます。

●やっぱりドラマチックなのはホラーですよ。短編がお薦めなので『新耳袋』などから入るのもいいかもしれません。これは現代の怪談・怪異譚を百物語形式でまとめたものです。

●コミックですが、昔読んですごく怖くて眠れなかったのが、つのだじろうの『うしろの百太郎』です。死とか霊界とかリアル過ぎました。

●『雨月物語』の「菊花の便り」も死して会いに来るというものなので、怪談になりますか。

●昔話の『のっぺらぼう』ですが、緩和と恐怖がお約束通りで怖さの出し方を学べますよね。

●鈴木光司の『仄の暗い水の底から』は水と閉鎖空間をテーマにした短編集で、実体験もありということで怖いです。

●小野不由美の『残穢』はマンションの部屋の寝室の畳を擦るような音がして気になるところから物語が始まります。その原因はなんなのか...。読み進めるのが怖くなる本です。

●ディストピアものが好きです。中でも伊藤計劃の『ハーモニー』が気に入っています。
ほんとうに惜しい人を亡くしたと思っています。肺がんを病みながらこの小説を書いたこと本当にすごいと思います。

●盟友の円城塔も注目ですよ。『これはペンです』で「文字(もじ)は文字であって文字どおり」と書くようなお茶目なところがあります。

●彼は伊藤計劃がプロットしか書いていないような小説『屍者の帝国』を仕上げたことで有名ですが、最初は伊藤計劃依りで書こうとしていて、でも最後は円城がすごく顔を出しています。

●アメリカの大学に行きたいなと考えたこともあって、今アメリカと日本の大学を比べたりいろいろ調べています。アメリカはとにかく授業料が高いし、政治的な絡みもあるし、学費・生活費の問題や、言語的な壁も解決しないし、困っています。

●吉本ばななは母親が好きで知りました。『キッチン』も読みやすいですが、でもこれ何なのって感じです。

●出始めの時、少女マンガ家の大島弓子の世界を体現していると言われていました。

●吉本ばななって『ツグミ』の作者ですよね。少女マンガ的というのはよく分かります。

●夏になると読みたくなる本ってありますが、僕は夏目漱石の『こころ』です。最初の海水浴の場面から始まることもあって、夏を感じて、僕は毎年夏になると読み返します。数年前に購入した文庫が真っ赤ないちごのかき氷の写真だったこともあって、、最後は冬で終わるのに真夏のイメージがあります。

●夏と言えば、ハインラインの『夏への扉』です。主人公はまったくもって友だちに裏切られたり、コールドスリープで未来に送り出されたり、散々な目にあいますが、最後は大団円で終わります。スカッとします。また夏をいつも探しているという猫がいつもかわいいです。

●タイトルに夏がつくと言えば、湯本香樹実の『夏の庭』です。3人の小学生が祖母の死をきっかけに死に興味を持って、近所のおじいさんが死ぬところをみようと観察するようになります。やがておじいさんと小学生は親しくなり、そして・・という物語。ハートウォーミングが満載です。最後の「だって俺たち天国に知り合いいるもんな」が泣かせます。

●坂木司は『ひきこもり探偵』や『和菓子のアン』で有名ですが、『大きな声が聞こえるか』は主人公の成長を描いたサーフィンの物語です。夏ですよね。

●『ぼくたちと駐在さんの700人戦争』は70年代に繰り広げられた高校生と警察官の悪戯戦争を描いたもので心温まる青春小説です。

●夏と言えば『サマーウォーズ』です。これっきゃありません。毎年映画も放送されるし...。
暑さを吹っ飛ばすほどすかっとします。

●時に、西尾維新は最近『宵物語』という新刊を出しましたが、本を出す速度がおかしいですよね。あんなスピードで執筆を続けていけるなんて化物ですよ。これは才能って言えますか。

●彼は、思いついたお話をすぐアウトプットしないと、まとまらず消えてしまいそうで、だから一心不乱に書くしかないそうですよ。中退ですが、僕らの先輩なのですから応援しましょう。

まだまだいろいろ語られましたが、レポートはこのへんで、次回はもう一度7月にみんなと会いたいと言うことで7月30日に開催することになりました。

2018年6月25日(月)OICブック(今回はコミック!)カフェレポート

暑さの増した日の夕方、OICブックカフェ。今回はコミック限定カフェが開催されました。参加者は総合心理学部1回生が2名、2回生が4名、3回生が3名、経営学部3回生が1名、政策科学部1回生が1名、2回生が1名、3回生が2名と大勢集まってくれました。
初のコミックカフェでしたが大盛り上がりでした。

こんな本が話題になりました

●『ワカコ酒』が好きです。26歳の呑兵衛女子がおいしい料理を肴にお酒に親しむ姿を描いているコミックです。酒と肴の相性が合致した時の「プシュー」という感嘆符がイイです。

●『HUNTER×HUNTER』は、主人公がまだ見ぬ父に会うためハンターとなって戦う冒険活劇です。仲間たちとの絆とかグッと来ます。でも残酷で容赦なくて過激です。キャラが作りこまれていて、複雑なので読みにくい人もいるかも。

●『暗殺教室』はテーマが「暗殺」で使命は「担任を暗殺すること」でサスペンスを感じる学園漫画でコメディでもあります。メディア展開もされており、映画もおもしろかったです。

●『応天の門』は平安京を舞台に巻き起こる怪奇事件を有原業平と菅原道真が解き明かしていくという物語です。鬼や物の怪が起こしたとされている事件も真相は人間たちが起こしたもので、歴史的背景も書き込まれていて面白いです。

●『進撃の巨人』は、圧倒的な力を誇る巨人と、人間たちの戦いを描いたファンタジーバトル漫画です。人間が襲われ捕食される、とか残酷な描写が怖いです。

●原作は絵が荒くて読みにくいですが、アニメは綺麗で見やすいですよね。

●主人公のエレンの活躍を応援したくなります。

●『ONE PIECE』は海賊王を夢見る少年ルフィの大秘宝を巡る海洋冒険ロマンです。
バトルやギャクシーンが満載で感動エピソードもある少年漫画の王道を行く物語です。

●89巻までコミックスが出ているほど長く続いていますよね。発行部数もすごいらしいですよ。

●兄エースのお話が泣けます。本当に泣けます。

●手塚治虫の『火の鳥』は不朽の名作です。古代から未来まで縦横無尽に世界が描かれています。人は不死に憧れ、不死鳥である火の鳥を捕まえようとします。様々な人間ドラマが体験できます。

●『NARUTO』は、忍同士が超常的な能力を駆使して闘いを繰り広げるバトルアクションコミックです。主人公のうずまきナルトの成長物語でもあります。

●忍者が楽しめます。4巻でザルザとハクがかばうところがあって、男泣きに泣けます。

●世界でも人気の日本が誇るマンガですよね。

●母親の影響で読み始めましたが、川原泉は面白いです。真面目さとギャグが混在していて楽しめます。

●お薦め商品はいろいろ多いですが、『笑う大天使(ミカエル)』は面白いです。最強のお嬢様学校で猫をかぶって生活をする三人の女子。戯れに作った薬品がきっかけで三人は超人的な怪力の持ち主になってしまって、はてさて?という物語です。

●浦澤直樹が好きです。『パイナップルアーミー』から始まって『マスターキートン』『モンスター』『20世紀少年』『プルートウ』など読んできました。

●『マスターキートン』は名作です。これを読んで歴史に興味を持ちました。

●『ひるなかの流星』は田舎でのんびりと暮らす高校生が、東京に出てきて困ったときに知らない人に助けられたり、転校先の学校で恋心を抱かれたりと物語が進んでいきます。
タイトルは迷子になった時に真昼の空に流れ星を見つけて追いかけたら自宅に辿りついたというエピソードからかな?いろいろありの学園ものです。

●面白いのは『リィンカーネーションの花弁』で異能力のバトルものなのですが、「輪廻の技」と呼ばれる刀で喉を断ち切ることによって歴史的な人物の才能をこの手に得る事が出来るという設定です。主人公は宮本武蔵の才能を手に入れる。それぞれ様々な能力を手に入れたものたちが、それぞれの能力を駆使して闘う。多くの歴史上の人物や罪人が出てくるのでキャラも立ちまくりです。

●『いちご100%』は、ある日、主人公の上から飛び降りてきたいちごのパンツの美少女と出会い、後を追いかけるが、違う少女をその人いだと思い込み、交際にまでたどり着くという恋の混戦模様を描いた胸キュンものです。

●『ブラッディマンディ』は日本の天才ハッカーである高校生がハッキング能力を駆使しながら日本の治安機関と協力をして、無差別殺戮を考えるテロ集団に立ち向かう物語です。

●『パタリロ』はめちゃめちゃ面白いです。パタリロという王子と部下の同じ顔をした玉ねぎ集団。そして情報局のバンコラン、その恋人のマライヒなど入り混じって世界を作っています。読んでいると「パタリロ顔」が目から離れなくなります。

●『東京喰種(トーキョーグール)』は東京を舞台に、人の姿をしながら人肉を喰らうことで生きるグールをテーマにした作品です。女性の喰種に襲われた主人公は何とか逃れることができたが、そのグールの内臓を移植されてしまったために半喰種となってしまう。そして主人公は普通の食事がとれなくなり、恐怖に満ちた日々を送る、という怖い物語です。

●『ドラゴンボール』は世界中にちらばった7つの玉を手に入れるとどんな願いも一つだけかなうという主人公孫悟空の冒険物語。

●『ドラゴンボール』は、本体の物語としては1回終わっているのですが、アナザーストリーがいろいろあって、いろいろな世界が描かれていきます。

●『スラムダンク』は主人公の不良少年のチャレンジと成長を軸にしたバスケットボール漫画です。インターハイの途中で終わってしまうという変わった漫画ですが、作者の意図としては第一部完ということであり、続きはやりたいとされているそうです。

●『スラムダンク』はバスケをやらない人には人気ですが。本当にバスケをする人からは少しなぁと思われているみたいですよ。

●『バガボンド』は『スラムダンク』と同じ作家さんですが、戦国末期から江戸時代に宮本武蔵を主人公にした作品です。剣の時代に終わりを告げる頃の武蔵の青春記はとても面白いです。原作は吉川英治ですが、作者のオリジナルなアレンジがたくさんあります。

●『黒子のバスケ』は、ある中学に10年に一人という天才が5名いたとされる「キセキの世代」のうわさがあって・・というところから物語が始まります。

●『アヒルの空』は、高校に入学した背の低い主人公が苦労をしてバスケ部で頑張っていく物語です。部員同士の不和や指導者との軋轢、部員の退部、イジメなど、普通にある問題を取り上げてあり、プラスしてバスケ部員の学校生活、恋愛、心情、家庭の問題などが細かく描写されるところがいいです。

●『アオアシ』はJユースを本格的に扱ったサッカーマンガです。緻密なストーリーと人間の描写、リアリティの高さなどで評判になった作品です。

●『銀魂』はSF時代劇の体裁をとった人情コメディです。ギャグがたくさんなのに感動系です。江戸時代末期、地球は天人(あまんど)と呼ばれる宇宙人の襲来を受けます。
十数年地球人と天人の攘夷戦争が続いた後、江戸幕府は天人の要求を飲み、あっさりと開国してしまいます。天人の襲来から20年後、江戸の治安を担当する真選組や様々な人物が交錯して物語が進んでいきます。

●『メジャー』は主人公の成長を描き、彼と共にチームが一丸となって目標に向かって前進するという野球漫画です。セカンドは主人公の息子が出てきます。

●『ドラえもん』は、みんな読んでいると思いますが、未来からやってきたネコ型ロボットのことで、なにをやっても失敗するのび太との少し不思議な日常生活を書いたマンガです。

●四次元ポケットから取り出す秘密の道具はわくわくします。

●映画の「のび太の恐竜」は白亜紀を舞台に恐竜ビー助との交流を描いた作品です。恐竜をうまく擬人化しています。

●ドラえもんは「のび太の結婚前夜」が超感動的でした。しずかちゃんが結婚に不安になって、お父さんを前に困っていたとき、お父さんが「のび太くんは人の幸せを喜び、人の不幸を悲しむことのできる人だ。お前の選択は間違っていないよ」と語るところがよかったです。

●『ジョジョの奇妙な冒険』は、仲間たちとの絆を大切にして、強敵との死闘を繰り広げながらも、個性的な表現方法で人気のホラーサスペンスです。

●結構大人向けの絵柄で自分には読みにくいです。

●主人公が特定していなくて部ごとにテーマも変わるところがあります。自分は現代的な第4部が好きです。

●舞台設定として、19世紀後半から21世紀現代までが描かれています。吸血鬼や超能力者が存在する世界ですが、一般には知られていないという設定です。ハマると面白いです。

●高橋留美子の『犬夜叉』は戦国時代を舞台にした作品で、半妖怪の犬夜叉と女子中学生のかごめの一行が玉のかけらを捜す旅に出ます。攻撃的な描写も多いですが、ギャグもあって楽しいです。

●『テラフォーマーズ』は、科学的な生態系にのっとった作品です。地球に住めなくなった人類は、火星への移住を考えます。凍った水を溶かすことで大気が出来るということで、太陽熱が集中できる黒いもの=ゴキブリを送り込むことにします。そしてはてしない時間が経ったあと、ゴキブリは進化して人型ゴキブリになります。そのゴキブリを駆除するために、特殊な手術を施された人間との戦いを描くコミックです。

●『リボーン』は、殺し屋や頼りないボスの家庭教師もしているという設定で、クールで独特の美学を持つ主人公が魅力的です。

●『ハチミツとクローバー』は美術大学を舞台にした青春群像劇です。登場人物それぞれの片思いの恋愛を描く一方で、芸術というモンスターに取り込まれた主人公を描く物語でもあります。

●この物語は出てくる食べ物がおいしそうでたまらなくなります。映画もテレビドラマもよかったです。

●『3月のライオン』は幼い頃家族を失った主人公が将棋と出会うという物語です。いろいろ恵まれないことも多い主人公ですが、人との出会いを通して変化が生まれ、成長していきます。

●『マギ』は、「千夜一夜物語」をモチーフにした冒険活劇です。絵がきれいでそれがとてもいいです。読みやすいですよ。

●単行本は出ていないのですが、毎日新聞に毎日連載されている『桜田です!!』がとても面白いです。キャラの魅力が爆発しています。父と母、子どもが出てくる家族の物語です。ただ初めて読む人にはわかりにくいかもしれませんが、親しんでいくと離れられなくなります。僕のお薦めはたまに出てくるコーヒー店の店主なのですが、報われない人生で可哀想すぎて注目してしまいます。一度読んでみてくださいね。

もっといろいろな本も紹介されましたが、とりあえずはこんな感じで初のコミックカフェが開催されました。次回OICでは、いったん普通のブックカフェに戻って10月11日に開催予定です。

2018年6月28日(木)衣笠ブックカフェレポート

暑さの増す日の夕方、衣笠ブックカフェが開催されました。本日の参加は、産業社会学部3回生の方、文学部4回生お二人、文学部3回生お二人が駆けつけてくれました。

こんな本が話題になりました

●ビブリオバトルの時に谷崎潤一郎の『細雪』を紹介した人がいて、その時に「四人姉妹のお話ということは『百合』が出てきたりしますか」と聞いたら「『百合』なら『卍』の方が...」と言われたので今『卍』を読んでいます。時代は大正明治で、主人公は既婚者で芸能学校に通っています。いろいろあって、ミツコさんという人と知り合い、その人とただならぬ関係ではと噂されます。そんなふうに言われているのなら私たち友達になりましょうと言って関係が出来てきます。この頃の結婚は個人の感情は関係なくて、家的なもの、コミュニティ間の問題で進んでいたのですよね。

●三島由紀夫の『美徳のよろめき』は人妻の姦通(婚姻外の恋愛)を描いたもので、男友達と関係を持ち、官能に目覚めたヒロインの背徳を優雅に表現しています。もちろんヒロインは苦しむのですが、結果的にしれっとしている印象を受けてしまいます。

●『細雪』だってエロティックな描写は多くて、たとえば次女の婿が、嫁の妹の三女を見つめていたり、結婚が決まった時に喪失感に襲われたり、細かな描写で描かれています。さすがの谷崎ですね。

●勝手と言えば『ボヴァリー夫人』なんかもそうですね。この女はすこく自分に酔っていた感じがします。お医者さんと結婚して人がうらやましがる生活をしているのに満足できない。いろいろ夢を見て自分の理想に当てはめた男に言い寄っていきます。そしてとうとう子どももないがしろにしていきます。救いどころがありません。

●自由な恋愛と言えば平安時代の『源氏物語』ですよね。主人公 光の君の女性関係は暇(いとま)がありません。

●一応関係のあった女性はめんどうをちゃんと見ていますよね。ただ紫の上に関する裏切りはどうかと思います。穏やかな日々を送れるようになったと思ったら、女三宮を正室として迎えるとは手ひどい扱いです。

●光源氏の心情を思えば、女三宮が源氏の慕っていた藤壺の女御に似ているかもという期待があったのではと思います。

●元はと言えば藤壺は母親の桐壷似であるわけで、この物語の宿命は光源氏がマザコンなところですね。

●源氏を巡る女性たちで、いちばん賢そうなのは花散里ですよね。容貌はそれほど美しくないけれど温和で慎ましい性格が好ましいですね。

●花散里というのは、源氏の詠んだ「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ」から来ているのですよね。

●私は田辺聖子の『新源氏物語』を昔読んで知ったつもりになっています。紫の上というのは、容姿と共に知性、性格などでも最高級の女性として描かれています。源氏にとっての永遠の女性である藤壺の縁者であるために、藤壺と生き写しの姿に源氏は惹かれるのです。紫の上は自分に執着して手に入れたことの訳を知っていたのでしょうか。そこに不幸の要因がありますよね。

●平安時代の女性は結婚も通い婚ですし、立場が弱いですよね。

●僕は、本でもいろいろ読みますが、自分自身結婚しそうに思えません。結婚ってデメリットが多いような気がします。

●その気にならなければ結婚する必要はないし、ただ何かデメリットがあっても「こいつを手放したくない、一緒にいたい」と思えるかというのは大事だと思います。

●僕は反対に、そういう一過性の情熱が危険なのではと思ったりします。

●情熱がいっぱいいっぱいでなくても一緒にいて落ち着けるとか、空気のように気にしないでいられるとかは大事な要素かもしれませんね。

●まんがで『かみあり』というのがあるのですが、10月の出雲は「神在り月」ですよね。出雲の人間は神様が普通に見えていて驚かないという設定です。ここの神とは人の心を具現化したものとして表れています。

●『自殺する種子』を読みました。農業関連生命工学企業が遺伝子工学を駆使した生命特許という方法で、種子を独占し、世界の食を支配しつつあるということが書いてあります。遺伝子組み換え技術は食の危機を呼び、積極的に関わる企業として『モンサント』という本も出ています。遺伝子組換えというのは1カロリーを得るのに10カロリーを消費する技術で作物に負担もかかるし、実りもよくありません。そうしたところがたくさんありますが、その技術を是非として食を支配しているのがモンサントです。

●大資本の食糧メジャーが世界を支配する方向にありますものね。

●怖いですね。JRで考えると北海道や四国なんて赤字だらけですし、一部儲けているのは新幹線のみ。前に池上さんが「民営化はみんなが株を買うようになるのでバブルになる」と言っていましたよね。、見えないところで危機はたくさんあるのかもしれませんね。

●僕は日本史の近世文化史を専門にしています。『河竹黙阿弥 歌舞伎全集』というのがあるのですが、河竹さんというのは歌舞伎の作者で幕末から明治の時代に活躍した人です。
そういう時代なので「ざんぎりもの」と言われています。明治の風俗を取り入れた市井(しせい)ものです。昔の歌舞伎というのは庶民の娯楽で、歌舞伎役者自身も河原ものとして地位が低い存在でした。ヒエラルキーのピラミッドの中には入れなくて、その周辺の被差別民だったのです。でも明治を迎えて、上昇を試みて成功したのです。今や歌舞伎役者はセレブです。もう歌舞伎に行くとなればちょっとステイタスのある出来事です。すごいですね。そして「能」はもともと権力者の配下に発展してきました。成り立ちが少し違うのです。

●そういえばインドでコンピュータの従事者が多いのは、もともとカーストの職業にないものなので、誰でも従事できるところにあります。社会的な位置での職業選択はやはりありますよね。

●差別されると言えば、ユダヤ人もそうですよね。でも不思議なのはユダヤ人という人種を特定できないことです。千年以上も彷徨える民というのは不思議な存在ですよね。キリスト教を敵に回したからでしょうか。

●ユダヤ人は金融でも才能を発揮していますし、芸術家も多いですね。メンデルスゾーンとかも音楽の才能が発揮されまくりです。

●ニクソンの時代、アメリカの国務長官で活躍したキッシンジャーもユダヤ人ですが、彼はアメリカだから自分が生かされたと言っていましたよ。

●世の中のはぐれものと言えば「鬼」の存在があります。『鬼のレストラン』はいろいろな鬼の伝承が書かれています。山に暮らす鬼に豆まきをすると鬼が怒って人を襲い始めるとか、豆まきをすると祟りが起きてそこの土地では豆まきの風習がなくなったとか。

●鬼というのは流れ着いた外国人が山に入って鬼と呼ばれたとか、いろいろありますが、昔は鬼と神って同義語でしたよね。不可侵の恐ろしい存在を神や鬼というと言いますね。

●日本は菅原道真もそうですが、追い込んで苦しめた人の祟りが起きたとなるとその人を神と崇めるという伝統がありますよね。

●ローマだって、統治した皇帝を亡くなった後に神にするのはよくあることでした。

●『桃太郎』の鬼征伐も勝手と言えば勝手ですよね。鬼の生存権も無視して襲って、財産を全部奪って、めでたしめでたしとは...。

●それは昔、岡山地方で何かの敵対する民族をやっつけたことを正当化するための物語だったからでしょうか。

●歴史っていろいろな形で残っていきますからね。本当は意味あるのに、もうわかっていないことも多いのではないしょうか。

●キリスト教の話ですが、堕天使ルシフェルというのは、信仰が深くてそれは神を敬っていたのに、神がイエスを敬えと言ったときに、神への信仰心が深すぎて、敬いの対象を変えられなくて自ら地獄に落ちたと言われています。

●堕天使の話ですが、天上の四天使といえば、ミカエル、ガブリエル、ラフィエル、ウリエルですが、その中でウリエルは、庶民の信仰が深くなり、見せしめのために地獄へ落とされたとされています。

●天使の存在はあまりよくわからないですが、悪魔はキリスト教が他宗教の神を悪魔と特定してしまうなど自分本位のことをしていますね。

●キリスト教は十字軍とか見ても身勝手ですよね。一神教の限界でしょうか。

●宗教の世界のことは分かりにくいですね。そういえば映画の『最後の誘惑』はイエス・キリストを悩める人間として、ユダの裏切りを神の使いとして描いた作品です。キリストが天使の使いの言うことを聞いて幸せに生きていたけれど、実はそれが悪魔だと気付いたとき、神の本意は受けるべき受難を示唆していたという難しい作品でした。キリスト圏の人間でない方が楽しめるかもしれません。

●どっちにしてもキリスト教は心が狭いという印象しかありません。

●『聖書』ですが、ルカ伝やマタイ伝などイエスの弟子たちが言い伝えたということになっていますが、パウロの一派が書いたのではとも言われています。パウロというのはローマの属州生まれのユダヤ人ですが、初めはイエスの信徒を迫害していましたが、回心してキリスト教徒になり、キリスト教発展の基礎を作った人物です。

●神という存在ですが、立花隆の『宇宙からの帰還』は宇宙に行くとはいかなる体験なのかを描いたノンフイクションです。帰還した宇宙飛行士の内的変化が分かり易く書かれていて、「超越的なものの存在を感じるようになった」人が多数。地球がローカルな存在であると感じることによって、大いなる存在を信じるようになるという目からうろこの本です。

●ミトコンドリアが意志を持つという『パラサイト・イヴ』はミトコンドリアの反乱を描くSFホラー小説です。太古の昔に存在した利己的遺伝子である「イヴ」が生物に寄生して何億年も生き伸びていたという設定で、ミトコンドリアは人との生き残りをかけて争います。理性である脳ではなくて細胞や遺伝子が意志を持つというのがとても怖かったです。

●田中芳樹の『銀河英雄伝説』はとても面白いです。遠い未来の銀河系を舞台に数多くの英雄たちによる攻防をラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーの二人を軸に描くSF小説です。貴族が支配する銀河帝国と庶民の抵抗で生まれた自由惑星同盟の戦いを描いている一大叙事詩です。

●異星人というか、宇宙人は出てきませんよね。

●もしかしたら登場人物全員が宇宙人とか...。

●我々も宇宙人とするならきっとそうですね。

●主人公2人も決して恵まれていない人生の中、闘いの素質があって台頭していくというストーリーがいいです。ラインハルトなんてすこぶるイケメンですしね。

●アニメはキャラもビジュアルで分かり易いですしいいですよ。

●宝塚だって上演していますしね。

●『テラフォーマーズ』は火星を暮らせるようにしようというミッションから始まる物語ですが、太陽熱を使って大気をつくることによって人が生きられるようにしょうとします。でもそのために黒いものであるゴキブリを投入します。するとあっというまにそれが人型の生き物に変化していきます。ドラマチックです。

●『鉄血のオルフェンズ』は新しガンダムですが、単純な勧善懲悪ではなくて、子どもたちを主人公に日常からの戦いを描いています。でも設定が生かし切れていない気がします。

●ファーストガンダムやその後のガンダムに続いて新世代のファン層の獲得を目指していたと思います。

●やはりファーストが好きで、悲哀のストーリーを持っているシャア・アズナブルが魅力的で好きです。

●さっきの『テラフォーマーズ』の火星ですが、ブラッドベリの『火星年代記』は始めから暮らせる場所として火星を描いています。最初は火星人が暮らしていましたし、地球人の持ち込んだ細菌で火星人が死に絶えた後、地球人が入植して暮らしていきます。核戦争で地球がなくなった後、家庭用ロケットでからくも火星に逃げ込んだ一家は森や湖のある火星で徐々に暮らしを作っていきます。そんな中、息子が父親に聞きます。「ねぇ 火星人はどこ?」父親は何も答えません。でもある時、湖に映る家族の姿を指さしながら息子に語りかけます。「ごらん これが火星人だよ」ここで生きていく自分たちこそが火星人なんだと知らしめるのです。

今回のブックカフェは、遅れてくる人が多かったですが、本から派生した様々な話題で盛り上がり、楽しいひとときを過ごすことができました。次回は7月31日(火)に行います。