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2019.11.13

2019年11月7日(木)オープンブックカフェレポート

ニュース

明るい陽射しのが少し陰った夕方にオープンブックカフェが開催されました。
本日登場してくれのは、総合心理学部4回生の設楽春貴さん。「しだらさんが語る本を読むカルテ」と題して、自分の読書人生の変遷と、様々な読書の可能性について語ってくれました。参加は17名の方が駆けつけてくれました。

これまで好きなのは東川篤哉さんや森身富彦さんです。コープクラブの書籍部の初代部長をしていました。書籍部では本の中を見られないようにして、ラッピングをした本のお薦めのコメントを見て買ってもらうというジャケ買い企画などをしました。他に好きな本について好きなことを語るというブックカフェやビブリオバトルの活動もしています。この活動を通じて誰かと繋がるための本を読むということをしてきました。

これまでの読書歴としては、奈良で過ごした小学校では本が大好きで、授業中でも読み続けているくらいでした。図書館もよく行っていました。この時よく読んでいたのは『デルドラ・クエスト』です。中2病をくすぐるような内容でした。また日本の歴史を15巻くらいにまとめたマンガを読んでいました。あと『ドラベース』は21世紀のドラえもんの世界で野球をやるマンガです。中学では野球がメインでした。街の図書館にも出入りしていました。『謎解きはディナーのあとで』や『大きく振りかぶって』で、現実ではできないであろう野球を楽しんでいました。星新一もよく読みました。村上春樹の『1Q84では、ハルキ読む自分カッケー!と思って読んでいました。
高校では野球の隙間時間に本を読んでいました。『いちご100%』や『聲の形』を読んでいました。『聲の形』は耳の聞こえない女の子と男の子の話ですが、いじめてしまったことでの贖罪の気持ちなど刺さりました。
『嫌われる勇気』は人生を支えてくれたバイブル的本です。大学では辻村深月の『凍りのクジラ』が、ドラえもん好きにはたまらなくて好きでした。藤子・F・不二雄さんが、SF(サイエンスフィクション)のことを「少し不思議」と呼んでいるので、主人公も人のことを「少し〇〇」と呼んでいます。「少し腐敗」とか、自分のことは「少し不在」など。『夜は短し歩けよ乙女』にあるように、京都の雰囲気を楽しんできました。お寺巡りとか。この頃から『ジョジョの奇妙な冒険』を読み始めます。
僕は2部が好きです。『トリマニア』というコミックですが、あるトリの国に日本人の女の子が留学してきます。空を飛べるのに速度制限ありとかで、道を歩いていたりして現実的な世界です。ここでは三角関係が描かれていますが、大人な恋愛です。冷めているようで温かいところが魅力です。

一人で読む本の面白さを味わえるのは、どんでん返しがよかった『陽だまりの彼女』です。
最初はあまあまの恋愛だなと思って読み始めたのですが、だんだん様子が変わって来て、ラストに来て「そうだったんか」となりました。2度読むと伏線を見つけられますし、3回目は安心して楽しんで読めます。東川篤哉さんの『完全犯罪に猫は何匹必要か』は一つの謎を追求していって、最後に「こういうことやったんか」と楽しめます。お薦めです。
江戸川乱歩の『人間椅子』は10ページくらいしかない作品で、読みやすく逆転につぐ逆転で驚かされます。最後はうまくだまされますが、これで本当か?という謎も残ったままで深いです。とにかくコスパがいいです。10ぺージで深く楽しめます。
筒井康隆の『残像に口紅を』は、ひらがなが1字ずつなくなっていく世界を描いていてたとえば「つ」ということばがなくなると、「妻」や「爪楊枝」などの言葉もなくなります。その言葉の概念がなくなるのです。
1冊読むと他の本も楽しくなります。『4月はきみの嘘』という作品がありますが、主人公はピアニストなのですが、トラウマで弾けなくなります。ヴァイオリンを弾くヒロインと一緒に乗り越えていきます。「あたしと心中しない」というセリフが出てきますが、これは『いちご同盟』で死んでいく女の子がお見舞いに来た男の子に言うセリフです。『いちご同盟』から引用されているわけですね。知っていると別の作品も味わい深くなります。『名探偵コナン』の中にはシャーロック・ホームからの引用もたくさんあります。こうして別の作品がおもしろくなるのです。

本を読むと自分のキタない感性を受け止めてくれます。朝井リョウさんの『何者』ですが、主人公は就活をしている同級生を一歩離れたところで観察して小バカにしています。人の気持ちのダークな部分が描かれます。正しい人しか出てこない小説が多いです。例えば取り柄がないと悩んでいる人に「他人を思いやれることが君のとりえだよ」という感じですが、世の中的に人間は正しいばかりではありません。この『何者』は汚い感性が描かれていて人間味を感じます。東野圭吾の『手紙』は強盗殺人を犯した男の弟の物語ですが、関係ないのに家族を叩いて、バッシングする人々が描かれています。湊かなえの『白雪姫殺人事件』もそうですが、SNSに見もしないこと、知りもしないことを書かれて表面上の理解でバッシングを行います。この物語はナレーターなし、心理描写なしで、セリフだけで進んでいきます。
本には日常をひきたてて、気持ちについてくる読み方が出来ます。『夜は短し歩けよ乙女』は黒髪の乙女に恋した先輩が出てきますが、彼は「眺め作戦」というのを取ります。なるべく彼女の目に留まるようにふるまう、食堂や廊下で偶然あってしまう演出です。彼女は気づいているけれど気づかないふりかなぁ。この作品には「ニセ電気ブラン」というのが出てきますが、これは「バームーンウィーク」(京都&大阪)で飲めます。飲むとめっちゃおなかの中に花が咲くというところがいいなと思います。日常で思い出す思い出の一節です。有川浩の『阪急電車』は日常が舞台の小説です。特別でない日が描かれています。
本に救われた経験についてですが、自分に生きる意味や生きる方向性を教えてくれたのが、アドラーの『嫌われる勇気』です。この本はアドラーが書いたそのままではなくて訳者が再構築した本です。人と理解しあえないことがあります。他人のために生きるとか、他人が自分とどのように関わるかとかいろいろありますが、他人に嫌われても自分を通す生き方を選びたいとこの本で勇気づけられました。

もう一度『聲の形』について話しますが、主人公が耳の聞こえない女子を苛めて、最初はまわりも容認していたのに、ある時主人公一人が責められて、小学生にして生活が崩壊してしまいます。回りは敵ばかりだと主人公は内にこもってしまいます。女の子への贖罪に生きる。一歩ずつ進んでいきます。そこで他にマネ出来ない表現として、顔に×がつくという表現が出てきます。最初は自分を攻撃してくる人たちだけにだったのに、関わり合いのない人が笑っても、自分のこと言っているんだと×がついていくのです。人と関われない自分と重なって感情移入しました。そして皆を信用できるようになって×がとれます。その瞬間めちゃめちゃ浄化されます。
誰かと繋がるために読む本ということでお話します。一人で読むことは自分一人で完結します。本について人と話すと新しい「気づき」が生まれます。世界が拡がるし、好きなものを共感しあえます。コミュニティの研究を専門としていますが、本を通じて人どうしがつながることができます。熱狂的な本好きと会えるのがブックカフェです。ここに出て、けっこう本を読んでいるつもりでしたが、まだまだ読んでいないことに気が付きました。本の魅力や熱量の大きさ、もっと発信したいという気持ちがでて、もっと読みたいと思いました。ブックカフェでは中世ヨーロッパや純文学などコアな話も出てきます。コミックカフェの時もありましたし、恋愛がテーマの時もありました。
いろいろな人が来てくれて、いろいろな方向性が提示されて、そこには本に救われた人たちがいます。昔出た発言ですが「自分の抱えている思いを本が実行してくれる。そして自分の感性を浄化してくれる」というのがありました。その通りだと思います。本によって経験し、自分は救われるのです。ブックカフェで共感できてよかったなと思います。
本とは人と関わるいいツールだと思います。自分しか知らないマニアックさえも共有できるかもです。これ読んでた!という懐かしさを共有できる場面もあります。会社の面接も本でつながれます。カフェ&バーでのバイトでお客さんと本で仲良くなって奢られました。本は人と仲良くなるツールです。本を語るというのは共感してもらえるし、自分でも「言語化」をすることで自分の気持ちをはっきりさせることができます。アウトプットすることは大切です。やはり読みたい本が増えます。本を読むことは、自分の知らない世界を手に入れられます。本棚というのはその人の人生をあらわすものです。人となりやその人の価値観さえも分かります。シェアハウスをしているのですが、3人の本棚をまとめてみたところ、それぞれだなと思いました。

トークはこれで終りましたが、次にいくつかの質問を受け付けました。

いちばん大切にしたい本→『ドラえもん』
人生のバイブル→『嫌われる勇気』
就活に役立つ本→『何者』+啓発本

だそうです。設楽さん、ありがとうございました!