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2020.01.22

12月のブックカフェレポート

ニュース

2019年12月12日(木)OICブックカフェレポート

寒さが厳しく思える日の夕方、OICブックカフェが開催されました。
本日の参加者は、総合心理学部2回生の方が4名、3回生の方が2名、政策科学部1回生の方が1名、2回生の方が2名、経済学部1回生の方が2名、2回生の方が3名という大所帯で始まりました。今日のテーマは1年ぶりのコミックカフェ、大いに盛り上がりました。

こんなコミックが話題に出ました

●『文豪ストレイドッグス』は太宰治、中原中也、芥川龍之介、中島敦、江戸川乱歩といった文豪がイケメンにキャラクター化され、それぞれの文豪の作品にちなんだ名を冠した異能力を用いて戦うアクション漫画です。舞台は架空都市のヨコハマで、入水している太宰治を助けた中島敦は、二人で人食いトラの捜索を手伝うことになります。「人間失格」は直接触れたありとあらゆる異能力を無効化する能力です。太宰治は、死に場所を求める自殺愛好家とされ、元マフィアの幹部という設定です。「独歩吟客」というのは手帳のページを消費することで、書いたものを具現化できるという能力のことです。谷崎潤一郎は、探偵社の使い走りをするような立場で、いつも妹のナオミと一緒にいます。「細雪」という能力は、辺りに雪を降らせ、その空間内をスクリーンのようにして幻影を投影したり、風景や自分自身に背景を上書きしたりすることが出来る異能力をいう・・・などいろいろありますが、闇を抱えている男たちが出てきます。

●『ハチミツとクローバー』は、美術大学を舞台に繰り広げられる青春群像劇です。報われない恋や、自分の才能や生き方について迷う若者たちを描いています。大好きです。

●『スケットダンス』のスケットはイコール助っ人、助け人のことです。「スケット団」という部活で、その日常と活躍を描いています。基本はギャグなのですが、内に秘めた人間ドラマがあります。ギャグの部分ではしょうもないことを明るく底抜けに楽しむことができます。これはその裏側にしんどいことがあるからこそ、より楽しめるのです。現実にある商標の商品を出すのにそのままではダメなので、ちょっと変えて出すセンスがバツグンです。例えば「明治のおいしい牛乳」が「平成のおいしそうな牛乳」になったりしています。依頼を受けて高校の校歌を作るのですが、そのBGMが「笑点」だったりします。

●『ソラニン』は、はアジアンカンフージェネレーションの「ソラニン」という楽曲とコラボしている作品です。売れないバンドが出てきますが、絵が繊細でキレイです。結構バンドメンバーの様子が雑に描かれたりしているのですが、生活感を感じられていいです。社会人2年目の主人公は、将来が見えないまま勢いで会社を辞めてしまいます。主人公の彼女は細々とバンドをやっていて、お互いに励ましあいながらも先行きの見えない様子に焦っています。その後主人公が突然の事故で死んでしまい「彼が生きていたことを証明し続けたい」と彼女はギターのレッスンに励み、あるライブで彼の残した「ソラニン」を歌うという感動物語です。

●『家庭教師ヒットマンReborn』は、うだつのあがらない少年のところへカテキョーとしてやってきた自称ヒットマン(殺し屋)の男が、その少年をマフィアのボスにすべく教育を始めるという物語です。

●『フェアリーテイル』は、主人公の少女が「妖精のしっぽ団」に入って様々な依頼に取り組むというお話です。

●『マギ』は、「千夜一夜物語」をモチーフにした冒険活劇です。登場人物の名前も一部が「千夜一夜物語」から採られています。アリババやアラジン、モルジアナ、シンドバットなどが出てきます。

●『鬼滅の刃』はおススメです。大正時代の鬼狩りの話です。主人公は炭売りなのですが、ある日外出していて家に帰ってくると、家族皆が鬼に惨殺されていたのです。一人だけ息があった妹も鬼になってしまいます。主人公はがむしゃらなタイプで元気で長男風を吹かせます。生き残った妹は人間の血を欲しがるようになります。主人公を含めた弱虫の三人組は、最初はへなちょこで役に立ちませんが、経験を積んで成長していきます。人間たちも鬼も背景がとても暗くて切ないドラマが描かれます。鬼も最初は人間だったのです。単に人間を殺す悪いヤツではなく、人間性を持っているところも描かれています。弱虫三人組の家族もみんな殺されており、虐待などの過去を持っています。漫画の絵がちょっと下手なのが泣かせどころです。持ち味の深さに思いっきり泣けます。

●『BEASTARS』は擬人化された肉食獣、草食獣が生活・共存する世界を舞台に、全寮制の学校「チェリートン学園」へ通う動物たちの群像劇が描かれています。学校では草食獣のアルパカが肉食獣に殺されるという事件が起き、真犯人は見つからないまま肉食獣と草食獣の確執は消えなかった・・・などいろいろなエピーソードが重ねられて楽しめます。

●『ReLEFE』は受験や就活につまずき続けた主人公が、社会復帰の条件として高校生活を送るというコミカルなストーリーです。

●CLAMPさんの作品はすべて読んでいます。『カードキャプターさくら』の人です。

●浦沢直樹の本は大概読んでいます。『パイナップルアーミー』からですが、一番良いのは『Masterキートン』ですね。主人公は大学教師なのに保険の調査員で生計をたて、でも探偵業は順風満帆という生活。歴史のロマンがくすぐられます。

●基本はなんといっても『名探偵コナン』でしょう。コミックスも97巻になるまで続いていますし、アニメや映画版もとてもおもしろいです。
◎新一と蘭の微妙な関係がいいですね。言わないけれど唯一無二の存在ですよね。

●『約束のネバーランド』は非常に重いお話です。ある学園に多くの子どもたちがいて、彼らを管理しているママという存在がいます。彼らは6歳から12歳までここにいて、12歳を迎えると里親に渡されると聞かされています。そこに頭の良い3人の子どもたちがいるのですが、彼らは12歳になると本当は鬼の食用として渡されてしまうこと、鬼は賢い人間の脳を好むことなどを突き止めます。3人の頭の良い子どもたちは11歳です。あまり時間がありません。この子たちが皆で生き延びるために、小学生の年齢とは思えないほど賢さを発揮するのに驚かされます。
◎これの元ネタはカズオ・イシグロの『私を離さないで』ですよね。彼らは臓器提供用のクローンでしたけれど。

●毎日新聞に連載の『桜田です!』はとても面白いです。シニカルなシチュエーション満載で、登場人物の関係性や性格がわかっていればいるほど楽しめます。子どもたちの先生が顔が悪くてヤクザっぽいので警察によく職務質問されるとか、桜田さんの娘さんの同級生がお気に入りなのですが、父親と二人暮らしで正月も休みなく何の楽しみもなく焼きそばを焼き続けているとか。どうぞ一度見てください。

●泣ける本といえば、何と言っても吉田秋生の『バナナフィッシュ』です。裏社会が出て来るのですが、主人公の金髪碧眼のアッシュ・リンクスがとても格好いい!そして知り合いになる日本人の英二との交流がすごく良いです。19巻ある物語ですが、最後は号泣です。取り戻せないものに対する惜しむ気持ちとか、いろいろ混ざって泣けます。

●『フルーツバスケット』は旧家の分家宅に居候することになった主人公と、奇妙な体質を持つ分家の方々との交流を描いたコミックです。

●私は宇治出身なので『響け!ユーフォニアム』、おススメします。読んでいないけれど読みたいと思っています。

●『よつばと!』は5歳児とにわか父ちゃんの日常生活まんがですが、面白いです。よつばがとてつもなくカワイイ!!好奇心旺盛で一瞬たりとも一か所に留まっていません。

●『海街ダイアリー』は、主たる舞台は鎌倉ですが何かの関連で倉敷が出てきます。街並みの様子がきちんと描写されています。

●『メイちゃんの羊』はイケメン執事がたくさん出ていますが、そのイケメンの名前が駅の名前になっています。

●『宇宙兄弟』が好きです。絵が見やすいのと、ちゃんと考証して書いているのがわかって読み応えがあります。

●『銀魂』大好きです。宇宙人の襲来を受けるというSFコメディ時代劇風の作品になっています。コメディのドタバタ路線ととてもシリアスな路線が交錯しています。

●『僕のヒーローアカデミア』は、超常能力を持つ者がヒーローとして扱われている世の中で、主人公は無個性でヒーローになるなど無理だと思われてます。しかし諦めることができず、ヒーローを輩出してきた国立高校へ受験をして合格。ヒーローに囲まれた中でヒーローを目指すという作品です。

●『鋼の錬金術師』は錬金術が存在する架空の世界を舞台に、錬金術師として力を伸ばしていく兄と弟が出てきます。母親を蘇らすため行った術で弟は自分自身の身体を失い、兄は左腕を失うことになり、壮大なファンタジーは始まっていきます。

●僕のバイブルは『ドラゴンボール』です。世界中に散らばった7つの球を集めるとどんな願いでも1つだけ叶うというドラゴンボールと、主人公・孫悟空を中心としたとした冒険、夢、バトル、友情を描く作品です。

●『暗殺教室』もお勧めです。テーマは生徒たちが担任教師を殺すことにあります。ある日謎の生物が学校をやってきて、不良生徒達の先生になります。自分を殺せなければ地球を滅亡させると言って、生徒たちに自分を殺させようとします。でもなかなかうまくいかない日常が描かれます。。

●最後に『ワンピース』が実写化するとしたならば、どの俳優に誰を演じてもらいたいですか?を議論しましょう。
◎ルフィは? 神木くん 賀来賢人 小池一平 CMだったら斎藤工だけど
◎サンジは? 坂口健太郎 菅田将暉
◎ロビンは? 沢尻エリカ 中条あやみ
◎ブルック? アンガールズ
◎ゾロ 海老蔵 鈴木良平 オダギリジョー
◎フランキー 鈴木良平
◎エース  賀来賢人 伊勢谷友介 綾野剛 斎藤工
◎ステーカー オダギリジョー
◎どこかに佐藤次郎を使いたいですよね。ナレーションとか、天の声とか。
◎なかなか決定打はムズカシイですね。

あっと言う間の2時間でした。もっと濃い話も出ていたように思いますが、レポーターの実力が足りず、うまく伝えられずにごめんなさい。

最後に今回で卒業する先輩に花束が贈られました。

ブックカフェは誰でも参加できます。次回は皆さんもぜひご参加 よろしくね。

2019年12月19日(木)BKCブックカフェレポート

穏やかな冬の日差しが感じられる日の夕方、BKCブックカフェが開催されました。
本日の参加者は、経済学部1回生の方、5回生の方、理工学部5回生の方、院の方、情報理工の院の方が駆けつけてくださいました。

こんな本が話題になりました

●アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を初めて買って読みました。キャラが立っていておもしろかったです。最後まで謎がわかりませんでした。でも仕掛けがわかるとな~んだ!と思ってしまいました。

●『都市と都市』はこれから読もうと思って買いました。欧州の同じ位置にモザイク状に組み合わさった2つの国で、ある警部補が二国間でおこった不思議な札事件を追ううちに封印された歴史に足を踏み入れていくという物語のようです。

●OB会でも話題になっていた『三体』を買って読みました。三体とはキリスト教の神と子と精霊を表していて、宇宙的なスケールを持った作品です。終末思想に取りつかれたインテリが大暴走をします。ここでは管理社会の重圧があります。そして仕事に振り回されるストレス社会となっています。時代は文化大革命の頃で、主人公の父は殴り殺され、息子も地方に追いやられて浮かびあがることができません。
◎第3部のうちの1部しか翻訳されていないのでしょう?全部出てから読みたいですね。中国語のできない大森望さんが英訳を見ながら翻訳されているそうなので、早く頑張ってほしいですね。

●『わざと見せてる?加茂井さん』は、中学二年生のクラスで目立つギャルの加茂井さんと存在感のない僕の物語です。太ももと胸と下着を見せる加茂井さんのエロチシズムが中学離れしていてすごいです。

●『攻殻機動隊』は、時は21世紀、第3次核大戦とアジアが勝利した第4次核大戦を経て世界は「地球統一ブロック」になり、科学技術が飛躍的に高度に発展した日本が舞台となっています。電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイドが混在する中、犯罪を事前に察して被害を最小に抑える公安9課(攻殻機動隊)の活躍を描くコミックです。

●万城目学の『鴨川ホルモー』を読みました。妙に現実感のあるホルモーというゲームと京都を縦横無人に京産大、龍谷大、京大、立命館が競いあう姿に躍動感を覚えました。こんなことを発想、設計できる万城目さんはすごいなと思いました。

●『ゴリラに学ぶ男らしさ』は、人間の祖先というのはゴリラとオランウータンということで、ゴリラとオランウータンを考察することで人間を考えようとしています。現在人間は少子化高齢化に見舞われていますが、人間のストレスをなくすにはその社会や家族の在り方を考える必要があるとしています。人間は長いこと「男は外に出て女は家事」としてきましたが、ゴリラとオランウータンの世界は決してそうではありません。男と女の役割を明確にはしていないのです。メスも狩りに出向きますし、オスも子育てをします。そもそも人間のオスは傷つくことを恐れて常識や因習から解放されていません。そうしたオスの特徴を解き明かしています。

●『鬼滅の刃』は人によって合う合わないがあるとは思いますが、受ける人には受けるお話です。キャラがけっこう女性っぽいので、作者は女性のような気がします。物語はそこまでアクセルを踏むか!というような感じで、フルスロットで突き抜けています。けっこうこのペースで話が進むと早めに終わりそうですね。

●ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』はアウトでした。長すぎる話と長すぎるセリフ。複雑な名前でもうダメです。

●『調律の帝国』は革マル派で刑務所に収容されている男が命を削りながら書いた本です。刑務所のシステムがあまりにも非人道的。リンチと重労働の毎日と看守に対する絶対的服従を求められる・・・とてもえぐい本です。

●うつマンガってありますよね。『なるたる』は作品そのものはメルヘンで冒険活劇なのですが、書いている時分の作者の精神状態が落ち込んでいて、それが残酷な描写につながっています。でもいろいろあっても最後に地球を救うところがいいです。

●『おやすみプンプン』は鬱漫画として有名ですよね。主人公プンプンの波乱に満ちた人生と日常を描いています。人物や周りの背景など、とても高い描写力を誇っていますが、プンプンの家族だけヒヨコのような落書き的に描かれていて、画面の差がありすぎます。

●『デビルマン』は永井豪が書いた悪魔を主人公としたコミックです。不動明というのが主人公で、とてもおとなしい少年なのですが、ある日友人の飛鳥了に「デーモンが200万年の眠りから覚めて地球を奪おうとしている。デーモンと合体して悪魔と戦える能力を持とう」と言われます。そして明は悪魔の体と人間の心を持ったデビルマンになってしまいます。
それからデーモンたちは明を倒すためにどんどん刺客送りこんできます。最後に人類は滅びますが、神と悪魔が出てくる壮大な物語です。

●永井豪といえば、大地震が起きて壊滅した関東が本州から切り離されて無法地帯となるところから始まるのが『バイオレンスジャック』です。暴力によって支配しようとするスラムキングと大男バイオレンスジャックが出てきます。デビルマンの続編と言える設定を持っています。

●世界が壊滅するといえば『ドラゴンヘッド』もそうです。修学旅行の帰途、突然トンネルで新幹線が脱線事故を起こし、外界と閉ざされたトンネルの中でたった3人の生き残りの生徒たちが生き延びるすべを考える。富士山の大噴火による荒廃した世界の中、極限状況に置かれた少年たちのサバイバルが始まるという物語です。

●サバイバルといえば『漂流教室』です。荒廃した未来社会に校舎ごと送られてしまった小学生の生存競争を描いた物語です。突然、未来に送られるという衝撃。生き延びていくことの大変さ。小学生同士の争いの中、時間を超えた母親との愛が胸を打ちます。いろいろあった中、過去に戻ることを切望していた主人公たちだけれど、どうやっても皆で帰ることができません。それで自分たちが未来を甦らすために送られてきたのだと思い、過去に戻ることを諦めます。最後にたまたま巻き込まれて未来に来てしまった幼稚園児一人を過去に戻して物語は終わります。その子は未来の荒廃も争いもすべて見てきたがゆえ、成長し、あんな未来にはしないという決意するという感動のラストです。泣けます。

●前回のお話した『サピエンス全史』ですが、人間が発展した要因として「認知革命」「農業革命」「科学革命」あったと書いてありました。最初の認知革命で人間が虚構の世界、例えば宗教などを作り出したことが大きかったように思います。単に力が強ければ生き残るのだとすればネアンデルタ-ル人やその他の種族の方がたくましかったわけで、そこにはたくましさだけでない生き残りの秘密があったと思います。

●ネアンデルタール人といえば、ネアンデルタール人の出てくる小説を読んだことがあります。『大地の子エイラ』というのですが、エイラはクロマニョン人の子どもです。ですが地震により、一族は皆いなくなり、一人で彷徨っていたところをネアンデルタール人の一族に拾われます。ヨーロッパ系の顔立ちと聡明な頭脳を持つエイラと比べて、ネアンデルタール人たちは言葉も限られていますし、違う文化を持っています。エイラは薬師の女性の元で暮らしていきます。一族の長の息子からは嫌われ、醜いとそしられます。でも5歳だったエイラはすくすくと少女に成長し、狩をして永らえ、ネアンデルタール人との合いの子を産みます。そうした始原の世界を丹念につづった物語です。

●子供の頃よく読んだといえば『ハリーポッター』です。現実の世界ととなり合わせの物語なので、ローファンタジーのくくりでとても読みやすいですし、身近に感じられます。

●ハイファンタジーは世界観を構築するのが大変です。時間がかかります。『指輪物語』の第1巻などは、その説明だけで費やされています。

●『十二国記』もハイファンタジーですが、世界観はとても分かりやすいです。みんなに読み継がれているわけですね。

●僕は『デルフィニア戦記』の方が好きです。異世界ファンタジーですが、前国王の妾の子だったために、貴族の陰謀で王座と国を追われ、追手との攻防をしているときに、異世界から落ちてきた謎の少女が王の助太刀をしていくという物語です。

●女優・遠野なぎ子の『一度も愛してくれなかった母へ』。母に愛されなかった人生の中で代わりのように男と寝て、不満を解消してきた壮絶な人生が描かれています。

●『金メダル男』は1964年の東京オリンピックの年に生まれた主人公が走ることで一等賞の魅力につかれ、その後一等賞が取れなくなっても自分を表現することに取りつかれて生きていく話です。うっちゃんの人生そのものなのかなと感慨深いです。

●芸能人が書いた本で一番いいなと思うのは、山口百恵の『蒼い時』です。彼女の幼いころから芸能生活、そして恋愛、結婚、そしてこれからと自身の手によってあますことなく書かれています。名作です。

●太宰治をいちばん最初に読んだのは『晩年』。デビュー作なのに晩年もおかしいですが、最初の文がたしか「着物の生地をもらった。それが夏物だったので、夏まで生きていようと思った」という感じでした。太宰らしいですよね。ただ私は井伏鱒二の計らいで最初の結婚をしたころの太宰の作品が好きです。たとえば『富岳百景』。富士には月見草がよく似合うが有名ですが、いいと思います。

●津田左右吉の歴史ものの本ですが、読んでいると万世一系なんて嘘やろ!と思います。最初から継体天皇で一度来ていますし、その特別感を誇りたいだけなのかなと思います。そもそも明治天皇でさえ、国体のために作られた存在ですしね。

●湊かなえの『告白』はよくできた作品だと思います。とても暗くて重い話ですが、とても印象的です。

●最近は荘子とか中国の本を読んでいます。文庫を買うとき、原文・読み下し文・解説文の3つがあるのを選ぶか、読み下し文を止めるか、価格が違うので悩んでいます。

●『百人一首』くらいだと読み下し文はいりませんよね。

●『ちはやふる』でだいぶ学びました。競技かるたの世界って不思議ですよね。

●斎藤孝の読書の本にはいつも学ばせてもらっています。世界の広がりや、自分の内面との対話を考えさせられます。

●小谷という中学生みたいなおっさんがいるのですが、自分より売れている人は全員死ね!と言っています。その作家が書いた『芥川賞の偏差値』は芥川賞第1回から最近までの受賞作をランク付けするという作品です。おまえの見方は正しいのか?とつっこみが入りそうな本ですが、一読には値しそうです。

あっという間の2時間でした。いろいろ話があちこちにいって盛り上がりました。
ブックカフェはどなたでも参加できます。お時間のある方ぜひいらしてくださいね。
 

★番外編

突然ですが・・・クラシックな花束。

今回のブックカフェ参加を最後に卒業されるお二人。とても喜んでいただけました。今後はOB会でお会いしましょう!!

2019年12月24日(火)衣笠ブックカフェレポート

クリスマスイブの日の夕方、今年最後のブックカフェが開催されました。今日の参加者は文学部1回生の方、2回生の方お二人、3回生の方、4回生の方お二人、5回生の方、産業社会学部1回生の方お二人、2回生の方、4回生の方、法学部3回生の方、4回生の方、国際関係学部1回生の方お二人で、なんど総勢15名の方が駆けつけてくださいました。
あふれるばかりの盛り上がりで、3人のご卒業を祝う会となりました。

こんな本が話題になりました

●『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』はいつも一人でいるひねた高校生が、それを見かねた教師により「奉仕部」という部活に入れられてからの高校生活を描いたラブコメディ作品です。本当に長い時間をかけて完結したので感慨深いです。

●最近ウェルズの『タイムマシン』を読みました。時間旅行者である主人公の科学者は、80万年後の未来に出かけます。そこはイーロイと呼ばれる民族が幸福に暮らしている時代。知能が退化した人種で何の争いもないように見えたこの世界ですが、しばらくするうちに真実を知ることになります。有閑階級はイーロイになったけれど、抑圧されていた労働者階級は地下で過ごし、モーロックと呼ばれる食人種に進化してイーロイは食べられていたのでした。滅亡しようとする地球の最後の生物を目にした科学者は帰途についたのですが、その後再び旅に出て今度は永遠に姿を消すというストーリーです。

●最近はレイ・ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』を読みました。夏に仕込まれたたんぽぽのお酒、12歳の少年の輝く毎日を夢とファンタジーに乗せて描いています。
◎ブラッドベリは『華氏451度』が有名ですよね。
◎活字と本の価値を発見する物語ですよね。文化の破壊の様子が描かれています。これは有川浩の『図書館戦争』の元ネタですよね。

●スティーブン・キングの『ペット・セマタリー』を読みたいと思っています。キング自身あまりの恐ろしさに発表を控えていたという作品で、愛するが故に呪いの力で死んでしまった家族を蘇らせようとするお話です。入ってはならない領域に踏み込んでしまう人間の愚かさを描いているということで読むのが楽しみです。

●大江健三郎の『僕が本当に若かった頃』は、50代の大江が大学に入った頃の生活をフィクションで描いたものです。

●東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を読みました。コソ泥の二人が逃げ込んだナミヤ雑貨店で一晩を過ごしているうちに、相談の手紙が投げ込まれます。そこに答えようとするところからお話が始まります。感動ものです。

●『ラプラスの魔女』は温泉の硫化水素のガス中毒でなくなった男が殺人なのかどうかというワクワクの展開の物語です。

●西尾維新ですが『戯言シリーズ』を読み始めました。まだよくわかりません。
◎初めての西尾維新に戯言はハードルが高いですね~。

●小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』は、一つの謎が解けたのにまた謎が出て終わりがなく続く感じで、まるでマトリョーシカのようなミステリーです。

●芥川龍之介が好きなのですが、一番好きなのが『羅生門』です。人間の本性が書き込まれてそのドロドロさが好きです。自分にとって理想のドロドロですね!

●畠中恵の『とるとだす』は「しゃばけシリーズ」の16作目です。あやかしと人間の合いの子である若旦那には、あやかしが見えています。そんなことから様々な事件が舞い込んできたわけですが、今回はおとっつあんが死んだ!!という衝撃なところから物語は始まります。病弱若旦那の活躍が期待できます。

●柳広司の『饗宴』は、ソクラテスがホームズのような立ち位置で登場するお話です。ソクラテスとクリトンがある祝宴に招かれた先で貴族の青年が奇妙な死を遂げます。また異国風の青年のバラバラ死体も発見され、ソクラテスは都市国家アテナイの名を懸けて謎を解いていきます。おもしろいです。

●坂口安吾のエッセイに、「好きか嫌いか考えずに、のうのうと生きているやつ」とかいろいろ刺激的なセリフがいっぱいあって楽しめます。

●サークルの先輩が良いよというので『虐殺器官』を読み始めています。アメリカが中心の終末世界を描いた物語ですが、敵との闘いにワクワクします。

●有川浩の『キャロリング』は奇蹟のクリスマスを描いたハートフルな物語です。
◎クリスマスといえば、アガサ・クリスティはクリスマスに合わせて新刊を発表していました。こだわりがあったのでしょうか。

◎村上春樹の『ノルウェイの森』はクリスマス発売だったから、赤とグリーンの表紙になったそうですよ。
◎『クリスマスってなあに?』は待ち遠しいクリスマスを楽しむ子どもの姿が可愛いらしく描かれている絵本です。プレゼントに最適です。

●『境界線上のホライズン』は、神代の時代に汚染した地球を修復するため保全システムを作り上げ、人々が遥かなる天上へ旅立った後の世界です。天上での争いに疲弊し、安らぎと復活を賭して再び戻った人類を迎えたのは、環境システムの過剰修復により過酷な環境となった地球。黎明の時代に多くの人と技術が失われ、また争いにより人類は種の存亡の淵に立たされていて、過去の人類の栄光の歴史を再現する「やり直し」をすることとした・・・という壮大な物語です。

●『ソードアート・オンライン』は、ソードアート・オンラインという架空空間を楽しむユーザたちがいて、そのゲームは勝手にログアウトは出来ず、脱出するにはクリアしないとだめなことを知らされます。この絶望的なデスゲームに勝ち抜いていく少年が主人公です。

●『きみはいい子』はいろいろな小学校生活のエピソードが語られますが、心に残ったのは「僕の家にはサンタさんが来ないんだ」という小学生の話です。

●『急行北極号』は、ある日現れた北極号に乗り込んだ少年がそこでパジャマ姿の同じ年ごろの子どもたちと出会います。北へ北へと向かう列車は、サンタの工場へ。ここで選ばれた子どもはサンタのプレゼント第1号をもらえるといいます。大人が読みたい絵本として選ばれた1冊です。

●大江健三郎が25~26歳の時に書いたという『セブンティーン』は、『性的人間』という本に収録されていますがこれは前編の部分で、後半に当たる部分はあまりの内容ということで長く発禁になっていました。最近の大江の全集刊行でようやく日の目を見ました。大江は左寄りとされていますが、本を読むと右翼的な感じもします。
◎なぜノーベル賞を取れたのでしょうか。不思議ですよね。
◎本当は安部公房が候補だったけれど死んでしまったからと言われていますよね。

●安部公房の『水中都市』を読んでみたいと思っています。SFの短編集らしいのですが興味があります。

●幕末から明治にかけての歌舞伎について書いた河竹黙阿弥の本を読みました。庶民のものであった歌舞伎がいつから芸術として持ち上げられるようになったのかなどおもしろいです。

◎古典から発展したスーパー歌舞伎とか面白いですよね。
◎『ワンピース』とか『ナウシカ』も歌舞伎でやっていますよね。『鬼滅の刃』もやったらいいのにって思います。
◎宝塚も『銀河英雄伝説』とか『ルパン三世』とかもやっていますよね。『機動戦士ガンダム』とかも見てみたいな。

●横溝正史の『悪魔の手毬唄』は傑作です。田舎の空気感といい、家族が一族のおどろおどろの関係性といい、ハマってしまいます・・・。

●『南総里見八犬伝』は、呪いに打ち勝つために8つの玉から8つの犬士が生まれて戦う物語ですが、リライトをたくさんされていておもしろいです。あの有名な『ドラゴンボール』の着想のきっかけも『南総里見八犬伝』です。

●『緋色の研究』はシャーロック・ホームズの最初の本ですが、ワトソンとホームズの出会いが描かれていて、ワトソンがホームズの観察力と推理力に驚くところが描かれています。ホームズはあまり動かない探偵ですし、あまりにも女性蔑視が激しいところがあります。

●有名な『一休さん』ですが、有名なために日本全国の民間の伝承が集まってきた経過があります。つまり一休さんのことだと言われていても、本当はまったく関係がないわけです。

●父親に読め!と言われたのが、橋本治の『桃尻娘』です。性に対して奔放なヒロインの高校時代から早稲田大学のキャンパスライフまでが描かれています。女子学生のおしゃべりそのままで書かれています。

◎それと同じく父に勧められましたが、国語の試験がうまく解けないといったときに清水義範『国語入試問題必勝法』を読め!と言われました。まったく役に立ちませんでした。これは国語が苦手な受験生に家庭教師が現代文の解き方を教えるというものです。小説のあとがきに、この解法はでたらめと作者自ら書いています。他の機会で作者が必勝法を明かしていますがそれを見ているととても面白いです。

●大学入試ではたくさんの小説からネタが出ていますが、あるとき『源氏物語』が出たときは落ちた~!と思いました。
◎『あさきゆめみし』しか読んでいませんものね。
◎あれは出てくる女子の顔に区別がありませんが、『源氏物語』を知るためには秀逸です。

◎ある時、よしもとばななの『TUGUMI』が出ました。告白の場面だったかな。興味を持ってあとから読みました。

◎良くなかったのは『君の名は。』が出て来て盛大なネタバレにあったことでした。ちょっと良くない思い出です。

あっという間の2時間でした。あまりにも人数が多かったので、一人のお話の時間が短くて残念でした。でもぜひたくさんの方のご参加、お待ちしています。
 

<オマケ>
今回卒業される3人の方への3つの花束。

文学部の5回生の方は、毎秋開催している作家さんを呼んでのトークイベントで、2回に渡って学生の代表質問を務めてくれました。

文学部4回生のお二人。お一人は歴史が堪能でいつも知らなかったことを教えてくれました。もうお一人は谷崎潤一郎や大江健三郎のオーソリティーで、初めての衣笠オープンブックカフェの報告者として活躍してくれました。
今までどうもありがとう!というお礼の花束で卒業をお祝いしました。これからはOB会でお会いしましょう。お仕事がんばってくださいね。

最後に読書マラソンコーナーの前で記念写真を撮りました。