TRANSLATE

PickUp

2020.01.06

11月のブックカフェレポート

ニュース

2019年11月7日(木)OICブックカフェレポート

初めてのオープンブックカフェと同じ日、通常のOICブックカフェも開催されました。本日の参加者は、総合心理学部の2回生の方が三人、3回生の方、4回生の方、経済学部2回生の方、政策科学部1回生の方、そして今回は!BKCより経済学部5回生の方が来てくれました。

こんな本が話題になりました

●かっこつけて村上春樹の『1Q84』を読んでみましたが、難しかったです。月が二つある世界に行ってしまって戻れなくなるとか、あやしい宗教団体が出てくるとか。

●『サピエンス全史』はおもしろいです。われわれサピエンスがいまの繁栄を築けたのはなぜか。人間がどうやって動物に勝ってきたのかなど人類史が語られてきて勝てたのは「妄想力」のおかげとか、「農業は市場最大の詐欺である」とか興味を引く話題が満載です。

●『子どもを殺してくださいという親たち』は周囲の圧力に挫折したエリート息子や、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いしゴミ部屋に暮らす娘など現代社会の裏側に潜む家族の闇を描いています。

●朝井リョウさんのイベントに行ってきました。とてもおもしろかったです。『風と共にゆとりぬ』はエッセイですが、超面白いです。エッセイも面白いしイベントの語りも超よかった。
◎『武道館』はアイドルのことを書いた小説ですが、アイドルとは何かを浮彫りにしています。朝井さんのアイドル好きがうかがえます。

●『イノセントディズ』は、死刑囚となった女性をそのまわりの人々の視点から描いたミステリー小説です。メディアで報道される事件の向こう側には何があるのか。とても重い作品です。

●『罄の形』は、障害者をいじめたことで追い込まれる少年の苦しい日々が描かれています。登場人物それぞれに自分の正義があります。そこからの再生の物語です。

●三田誠広の『春のソナタ』は高校生バイオリニストが主人公で、その父はピアニストです。共演を経て彼は父から何を受け継ぐのかという物語です。悩み、傷つきながらも誠実に生きようとする魂を描く音楽青春小説です。一度手に取ってみてください。

●東川篤哉は『謎解きはディナーのあとで』が有名ですが、僕は『放課後はミステリーとともに』が好きです。ある高校には探偵部というのがあって、学園で起こる様々な謎を高校生たちが解き明かすストーリーです。さすがユーモアミステリーの名手だけあって面白さは抜群です。
◎『密室に向かって撃て』は、烏賊川市という架空の地方都市を舞台にした警察ものです。
ギャグが多いのですが、ユーモラスな会話の中に伏線がはられているという仕掛けになっています。トリックよりはプロットと叙述の見せ方によって効果的なラストを見せています。シリーズですが、作品ごとに探偵役が変わるのも楽しいです。

●有川浩の『ストーリーセラー』ですが、彼女は小説を書くのが趣味で唯一の読者である彼と結婚します。そして様々な試練が・・・という物語です。AサイドとBサイドに物語が分かれていて視点が変わるので、おもしろいです。結構刺激的で悲しい小説なので心して読んでみてください。

●万城目学の『プリンセス・トヨトミ』を読みました。400年に渡り、あるものを守り続けてきた大阪の男たちと、調査にやってきた会計検査員たちとの攻防を描いています。キャラが立っていて一つ一つのエピソードも面白いですが、それにつながる歴史的なうねりを感じさせる仕掛けがいっそう面白いです。大阪で一切の活動が休止してしまうのにやられた!と思いました。

●有川浩の『シアター』はすごく面白いです。劇団を運営する弟が本格志向で頑張るために兄に支援を頼みます。3007万円の貸付で厳しい条件をつきつけられた駅団員達が奮闘する物語です。子どもっぽかった弟の著しい成長など、見ていてスカっとします。

●『彩雲国物語』は、架空の国・彩雲国を舞台にした中華風ファンタジー歴史小説です。
唐代がモチーフで、名門の直系であるにも関わらず貧乏生活を送っている主人公が官吏になりたいと思い、それを叶えようとする物語です。

●泡坂妻夫の『生者と死者』はありえない仕掛け本です。僕は高校の頃、これでビブリオバトルで優勝しました。なにしろ袋閉じで、最初にそのまま読んだ時と袋とじを開けた時では物語が変わるのです。やられた~と思います。名作です。

●『フルーツバスケット』はある動物憑きの家系に居候することになった主人公が、不思議な体験をする物語です。絵がかわいいのがいいです。

●新聞連載漫画の『桜田です!』の主人公の子どもの女友だちが大好きです。父親と二人暮らしでいつも焼きそばを焼いています。思わず『ジャリン子チエ』を思い出します。貧しいけれどカラッとした感覚が共通しています。

●『神様にいちばん近い動物』は面白くて人生の指針になります。ある物語は三匹の子ぶたの元にやってきたオオカミが童話『三匹の子ぶた』を携えていた、とか。牧場で平和に暮らしていた牛にある日ネズミが囁いたのは「君はこれから皮ジャンになるよ」。どの話も新感覚でエンターティメント満載です。

●水野敬也の『夢をかなえるゾウ』はテレビもいいし、本もいいです。ちゃんと靴を磨こうと思いました。

●『烏に単は似合わない』は、和風ファンタジーの世界観で、世継ぎである若宮の妃選びが始まるという物語です。たくさんの姫たちが出てきます。ミステリーと思えない感じで進んでいって、妃に誰がふさわしいか?というのがミステリーになっています。

●東日本大震災からの復興を描いた『紙をつなげ!』は感動しました。この出版用紙を製造する巨大マシンが止まったままの中、半年での復旧を宣言され、そこから死ぬほどの作業が始まります。震災での絶望、そして復興を描き切ったノンフィクションです。

●『トリマニア』は、日本人の女の子が日本語が公用語であるトリ人間(背中に翼を持つ人々)の国に留学します。トリマニアの人々のトリの習性も描かれていて、どんな哲学を持っているのかもトリ人間それぞれで面白いです。三角関係にもなっていて、読み応えがあります。

●『しろくまカフェ』は、カフェを営むしろくまと常連客のパンダや動物たち、それを取り巻く人々が繰り広げるほのぼの系ギャグ漫画です。動物たちはごく自然に人間社会になじみ、会話も成立する世界観を持っています。

●『首無館の殺人』は、明治の世、没落した貿易商の娘は目覚めると記憶を失っていて、首無し死体と浮遊する首が一つ・・・。異様な連続首無し殺人事件。首に秘められた意味とは何か、最後にカタルシスを感じられます。おススメです。

●沢木耕太郎の『深夜特急』を読みました。怖いけれど一人で旅をしてみたいと思いました。バックパッカーのバイブル的書籍ですが、作者個人の体験記で、その異国の空気感を感じることができます。

ダブルヘッダーで行われたブックカフェ、参加者のみなさま、お疲れ様でした&ありがとうございました!

2019年11月26日(木)衣笠ブックカフェレポート

寒さが厳しくなった日の夕方衣笠ブックカフェが開催されました。
今日の参加者は。産業社会学部の1回生の方、4回生の方、文学部の2回生の方お二人、3回生の方、法学部3回生の方、4回生の方、国際関係学部1回生の方お二人が参加してくれました。そのうち新しく来てくださったのは4名でした。

こんな本が話題になりました

●西尾維新の『新本格魔法少女りすか』の新しい本が17年ぶりに刊行されます。この小説は魔法が存在する日本を舞台に魔法が使えない少年と魔法使いの少女りすかが、りすかの父親を追う中での戦いと冒険を描いています。ミステリー的要素もありです。

●恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を買いました。恩田陸は読んだことなかったのですが、文章で描く音楽表現というのがどんなものなのか知りたくて読もうと思いました。

●ミステリー好きで、昔から『少年探偵団』や『シャーロック・ホームズ』をよく読んでいました。『少年探偵団』は、名探偵が中心にいて語り部の少年探偵が支え手で、バランスがいいです。ホームズが一番頭がおかしいです。ホームズは女性蔑視だし、薬もやっているし。めちゃ性格が悪いです。でもとても魅力があります。

●東野圭吾を読みますが、「ガリレオシリーズ」がおすすめです。湯川准教授のキャラがいいです。ミステリーが好きです。純文学などは、落ちがなくていらいらします。その点ミステリーはいいです。伏線が回収されスカッとします。
◎東野圭吾は、デビューしてなかなか売れなかったのですが、『秘密』で評判になりました。スキーバスで事故にあった妻と娘。妻は死んだけれど娘が生き残ってくれたと思ったら娘の身体に宿っているのは妻の心だった。妻なのに娘、娘なのに妻、夫は混乱の中で過ごします。二人の未来は・・?という物語です。

●もう冬ですが『金魚』という本を読みました。金魚の写真がいっぱいで楽しいです。

●知念実希人の作品が好きです。『誘拐遊戯』は女子高生が誘拐されて、その犯人のゲームマスターのミッションに警察が振り回される話です。衝撃のラストが味わえます。『レゾンデートル』は末期がんを宣告された医者が不良に襲われたことによって切り裂きジャックとの関係ができてしまい、そして一人の少女が現れ物語は思いもしない方向に・・・というミステリーです。でも一番好きなのは天久シリーズです。診断不能といわれた患者たちの思いもよらぬ病を解き明かすミステリーです。

●OB会で話題になっていた本ですが、話題の中国ミステリー『三体』。とある三重星系には、生きと滅びを繰り返す三体星人がいて、その中のもっとも新しい世代の三体星人は地球文明の科学技術より数倍先の先端をいっているというのが設定で、文化革命のときに、異星人を探すための秘密基地があった・・・という壮大な物語です。

●最近、芥川龍之介を読んでいます。今は『芋粥』の途中で、どうなるのかと思っています。
◎芥川だったら『藪の中』がいいです。誰の証言もすれ違っていて、全然別のことを言っています。何が真実なのか皆目わからないところがいいです。
◎『鼻』もおもしろいですよね。悩んで悩んでがんばって、でも最後は元のさやに落ち着くという説教的な感じです。

◎『河童』は現代社会を皮肉っているところがいいですよね。
◎『奉教人の死』は芥川のキリスト観を表していると思います。最後にそうなんだといわせるヤラれた感もあります。

●先輩に勧められた伊藤計劃の『虐殺器官』。後進国では内戦と民族対立が横行し、それを止めるために先進国は戦争犯罪人の暗殺を行うようになり、その暗殺を命じられた主人公が体験した中身と世界の変化を描く物語です。
◎後日談の『ハーモニー』も併せて読むといいですね。虐殺と対立の世界が終了すると幸福と健康を推進する世の中になります。
◎『死者の帝国』も・・・・。あっ!あれはほぼ円城塔の作品でしたっけ。

●カミュの『異邦人』を読みました。不条理を描いた小説です。
◎殺人の動機が「太陽が眩しかったから」というのは読んだ当時、惹かれてしまったのを覚えています。不条理三兄弟としては、カミュ、カフカ、阿部公房ですね。

●みなさん、出身地はどこですか。出身地を紹介しながら、縁のある本を紹介しませんか。
◎神戸の垂水ですが、おすすめは『好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く』。ある女の子が一人の男性を好きになるのですが、うまくいかなくていつもシャンプーをしてもらいながら、美容師の男性に慰められています。
そうしているうちに、もしかしてあの人よりこの人が好きなのかも?となっていく物語です。
◎岡山県なのですが、自分のところはあまりゆかりの作家さんがいないので、倉敷の横溝正史にします。もちろん『悪魔の手毬唄』がおすすめです。
◎僕は鹿児島なので、自信を持って『翔ぶが如く』です。明治という国家を作った西郷隆盛と大久保利通の友情と戦いの記録を描いた歴史小説です。
◎大阪ではいちばん上品な街!堺市の出身です。古墳はあるのですが、作家さんや小説はないです。
◎僕は広島なのですが出身の作家さんが思いつきません。いたら教えてください。
(井伏鱒二とか東川篤哉とか?)
◎私は京都出身なので、筒井康隆(同志社出身)とか森見登美彦とかとかたくさん・・。
『二十世紀電気目録』は明治時代、二十世紀を迎えた京都が舞台です。街に電気の明かりがともり始めたその時代、伏見の酒造業の跡取り娘と、これからは電気が日本を救うという少年が出会って、奇書「電気目録」を探し回る恋のものがたりです。
◎また京都ですが、林真理子の『六条御息所』はとても面白いです。源氏物語は、「あさきゆめみし」しか知りませんが、女性の描き方が違うなと思います。夕顔なんて楚々としたイメージなのにエロッぽい感じがありますし、人を恨む御息所もかわいそうな感じでとらえています。
◎僕は台湾生まれなので、小説でなくて歌でいうとテレサ・テンですかね。
◎いいですね。「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」「別れの予感」「空港」~♩
◎僕はイギリスで生まれたので、強いて言えば『指輪物語』ですね。難しいですが、全てのファンタジーの元になっています。
◎『青春鉄道』(あおはるてつどう)は、全国の鉄道路線が出てくるコミックです。鉄道路線の擬人化がされていて面白いです。

◎京都でいうと『がっこうくらし』は突然ゾンビに襲われて、襲われた人も同族と化してほとんど崩壊状態となった中で、わずかに生き残った女子高校生たちが学校に立てこもって暮らすというお話です。ホラー・サバイバルものであるにも関わらず、女の子たちはかわいらしく、ストーリーは日常系で、ほのぼの系の絵柄で描かれています。

●僕は奈良出身なので、万城目学の『鹿男あをによし』です。大学の研究室を追われた主人公が奈良の女子高の臨時講師に就任するのですが、そこで鹿に選ばれてミッションを行うという物語です。受けざるをえない事情が鹿によって、鹿の顔にさせられる(自分しか見えない)というのがあって、奈良の古い良き歴史も感じられる作品です。

●『ともだち同盟』2人の女の子と一人の男の子がともだち同盟を結びます。ホラーあり、ミステリーありのダーク青春ストーリーです。

●この間のOB会のときに『アルジャーノンに花束を』はハッピーエンドかバッドエンドか?というお話が出ていたのですが、みなさんはどう思われますか。このお話はチャーリーという知的障害者が、家庭で疎まれているとか、職場で馬鹿にされているとかなど気がつかないで幸せに生きています。あるとき知性を取り戻す実験の被験者に選ばれます。チャーリーは賢くなるともっと幸せなれると思って実験に同意します。先に実験を受けたねずみのアルジャーノンはすごく賢くなっています。その後チャーリーは変わります。どんどん賢くなって天才ともいえるほどの知能を持ち、大学でも研究をはじめ、恋愛さえします。あるとき、チャーリーは気が付きます。アルジャーノンの知性に衰えが出ていることを。そして自らの末路を悟ります。前以上に知能が遅れた状態になってしまうことを。賢くなったからこそ味わえた人生。でもそれは一過性のものですぐ失われてしまうのです。最後にチャーリーは、今はお墓に眠っているアルジャーノンに花束をあげてほしいと願うのです。自分の衰えを自覚しながら抗う術がないのは悲劇です。でも元にもどったチャーリーはそんな記憶もなく穏やかに過ごすのです。何もなかったかのように。

●ディケンズの『クリスマス・キャロル』は世の中のすべてのクリスマスの始まりです。
クリスマスツリーの下でものを贈りあうなど、すべて『クリスマス・キャロル』から始まっています。

●『ライ麦畑でつかまえて』を村上春樹が訳した『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。どこから見ても村上春樹だなと思います。サリンジャーというより春樹の文体、文章になっています。それが春樹たるところですね。

◎春樹の作品でいえば『パン屋襲撃』と『パン屋再襲撃』を読んだら楽しいですよ。
『パン屋襲撃』は僕と相棒がおなかをすかしてパン屋に行って、一文無しだけれどパンをくれといいます。パン屋の店主は食べていいでも君たちを呪うからなと言います。なんとなく現実感のないお話です。『パン屋再襲撃』はその後、夜中におなかがすいた夫婦がかつてのようにパン屋を襲うことを考えますが、今は真夜中、パン屋は開いていません。そこでマクドナルドを襲いに行くというお話です。
◎さっきの出身地のゆかりのある本のお話ですが、高校時代を過ごした木更津では、戦後、東大生たちが金融業に手を出して、詐欺まがいのことをして破綻するという事件がありました。その一味のリーダー的存在が、当時母親がピアノを習っていた先生の弟だということで、その土地では有名な医者のお家でした。高木昭光が『白昼の死角』で三島由紀夫が『青の時代』という作品で描いています。

●小学校の時に母親から『動物農場』と『1984』を読めと言われて戸惑ったことを覚えています。読んでもわけがわからず、反抗心が芽生えました。
◎『動物農場』って人間の支配に抵抗をした動物たちが、リーダーをたてて自分たちの体制を作ったつもりが、リーダーの豚もいつのまにか人間もどきになっていたというお話ですよね。『1984』にしてもディストピアものは、もっと年が行かないと味わえないですよね。

●『ごんぎつね』って泣かされますよね。一瞬の過ちでもう取り戻せない切なさを感じます。
◎でもあのごんが殺されるラストは新見南吉がつけたしたそうですよ。ドラマチックにはなったけれど悲しいですよね。

●『王様ゲーム』は、ある日高校のクラス全員に王様から命令のメールが届きます。次第にそれは命を懸けた王様ゲームになっていくというお話です。モバイル版と小説版に少し違いがあります。

●さっき村上春樹の小説の話がでましたが、いちばん春樹らしいのは『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』かもしれません。謎が説かれていくようで謎のままにされる部分もありで、そもそも「世界の終わり」と「ハードボイルドワンダーダンド」の2つの世界を行ったり来たりします。ハードボイルドワンダーランドは計算士の主人公が、自らに仕掛けられた「装置」の謎を解いていくお話で、「世界の終わり」は一角獣が生息し、壁に囲まれた街に入ってしまった僕が、街の謎と街が生まれた理由を探し求める物語となっています。

●『ずっとずっと大好き』は家で飼っている犬が死にそうなときに、家族みんなが「ずっとずっと好きだよ」と呼びかけます。とても泣けます。

●もう亡くなりましたが、さくらももこの『もものかんづめ』は読む人みんなを笑いの渦に巻き込む爆笑エッセイです。読みやすい、視点が独特の愉快で楽しい本です。

●山田詠美の独特の視点があると思います。『僕は勉強ができない』はサッカー好きの高校性が主人公。勉強はできないが、女性にはよくモテる。学校に居心地悪さを感じながらも元気溌剌な高校生の青春ストーリーです。読んでみて見てください。

あっという間の2時間が過ぎました。誰でも参加でいます。次回もよろしくね。

2019年11月28日(木)BKCブックカフェレポート

小雨の降る日の夕方、BKCブックカフェが開催されました。今日の参加者は情報理工学部2回生の方、経済学部1回生の方、5回生の方、理工学部3回生の方、5回生の方、M1の方が参加してくれました。

こんな本が話題になりました

●塩野七生の『十字軍物語』を読みました。ローマ帝国が滅亡して、「暗黒」とも呼ばれる中世の時代、カトリック協会はイスラムの勢力下にある聖地エルサレムを奪還すべく「十字軍」を構成するが・・・?という物語です。各国の王が参戦し、200年続いた十字軍は多くの戦いと破綻を生んだ。この事件が歴史にもたらしたものは何だったのか?を考えられる本です。

●松本人志の『愛』を読みました。この人はホラーとウソしか言わないと思いました。すごい天才であるのは確かです。

●『まおゆう』は何人かの漫画家の手によってコミック化されていますが、作者によってクオリティの差が激しいです。マンガにするときの力の差とも言えるのでしょうか。構成力、構図、原作のどこを切り取るのかというところでまったく雰囲気の違うものができてしまってます。原作をしっかり読み込んで、論理展開をしっかりしているといいなぁと思います。そして設計したものの表現力の差をとても感じます。

●『魔法科高校の劣等生』は、これもコミカライズに差のある作品です。一人の作家は劇画調で、もう一人はコメディよりの画風です。コメディの人はかわいい女の子が書けます。劇画調の人は女性が無表情になっています。合わないのに選ばれた作家さんがかわいそうだと思います。

●村上龍の『無趣味のすすめ』ですが、男はカッターシャツを着てればいいような言いきりがあって面白いです。コツや秘訣を覚えても無駄だということで、何か得るためにはどうするのかを指南しています。

●蓮實重彦の『伯爵夫人』は、開戦間近の時代、卒業試験を前にした主人公が謎めいた伯爵夫人の色香に迷い、性への昂ぶりを覚えていく。まわりにはさらに主人公に挑発を仕掛けます。魅惑的な文章で読者を未知のエクスタシーへ誘います。

●『サピエンス全史』は、人間がどうやって進化したかを描いた通史です。具体的に書かれていてとても読みやすい本です。人類は7万年前に「認知革命」を体験しました。これは概念を発明したということで、虚構を語れるとか、コミュニケーション力を持つとか、幻想力を持つとかです。1万年前には農業革命、この500年では科学革命を体験しました。資本主義が生まれる中で競争社会が生まれ、今に至っていますが、人類は今、本当に幸福を問われているのかを問うています。

●『リリース』は男女同権が実現した世の中で、同性愛者がマジョリティとなり、異性愛者は迫害され、人工的な出産が日常となっています。小説の内容の中で、哲学に絡み合っている場面を見受けられます。ポピュリズムを地で行っているところがあります。

●『日蓮主義とはなんだったのか』は、これまで日本では宗教という概念はなかったのですが、明治から戦前にかけて一大ブームが起こります。これまでと何が違うかというと多くの人に声をかけて信心を促したのです。日蓮の信徒は自ら進んで布教を行ったのです。話によると2・26事件もうっすら日蓮と関係があるように聞いたように思います。宗教パワーってすごいな。

●岡部磨里の『あの日見た花の名前を僕達は知らない』ですが、めちゃ好きです。6人は小学校からの友達でしたが、ある日、一人のメンバーの事故死でそれぞれの距離は疎遠になってしまいます。中学卒業後のある日、一人のもとに死んだ友だちがでてきて「お願いをかなえて」といいます。彼女のお願いはなんなのか、5人は思いをめぐらします。過去の痛みや罪の意識、淡い恋などが丁寧に書かれています。
◎『空の青さを知る人よ』で、両親のいない主人公は自分を犠牲にして育ててくれた姉を気にかけていました。姉はともに東京へ行こうと誓った恋人とも一緒に行けず、時は巡り再会の日が近づこうとしていた・・・そんなお話です。妹は姉の恋人の昔の姿の男の子と出会ったり、ちょっと不思議な要素もあります。
◎『心が叫びたがっているんだ』は、前の二つの作品と同じように映画化されています。三部作とされています。自分の他愛ないおしゃべりが原因で両親を離婚に追い込んでしまった主人公は、現れた王子さまにおしゃべりを封印されてしまう。時が流れて高校2年生になった彼女は、他者とはメールか携帯メールでしか話せなくなっています。そこで担任からクラスメイトとともに「地域ふれあい交流会」実行委員に指名されて、ミュージカルを成功させるために頑張るというお話です。いずれも過去に何か問題を抱え、心のひっかかりを持ちながら、その問題を解決していきます。作者はもともと引きこもりで、作品に描かれているような学園生活は送っていません。自分ができなかったことを書いているのです。
◎『コインロッカーベイビーズ』は、コインロッカーに赤ん坊の時捨てられた二人の男の子が、最後は人を殺す権利が自分たちにはあると思って、「今からぶっ殺しにいく」といって終わります。こういう疾走感は良くて、突き抜けていってほしいと思います。

●できたみらんなに読んでほしいという古典があります。スタンダールの『赤と黒』、ドストエフスキーの『罪と罰』、トルストイの『戦争と平和』、そしてアナトール・フランスの『神々は渇く』です。これらの作品は、同時代感があります。
◎『赤と黒』は田舎の貧しい青年が頭の良さを武器に、貴族の家庭教師をとっかかりに夫人との不倫を経て成り上がっていく物語です。階級闘争を通して人間を描写するという中身になっています。

◎有名な『罪と罰』ですが、貧しい大学生のラスコーリニコフは、「選ばれた非凡人は、社会道徳を逸脱する権利を持つ」という理論の元に、金貸しの強欲老婆を殺害し世のために役立てようとしますが、その時たまたま居合わせた老婆の妹まで殺害してしまい、罪の意識にさいなまれるようになります。やがて彼よりも悲惨な生活を送り自己犠牲を捧げる生き方に触れ、彼は改心し自首をします。理想と現実の乖離や論理矛盾や崩壊を描いています。
◎判事プリフィーリィの容赦のない追撃が印象に残っています。ラスコーリニコフの信じていた世界が壊れる瞬間ですね。推理小説とも読めるし、娼婦ソーニャとの恋愛小説とも読めます。
◎『戦争と平和』はナポレオン戦争の時代に、ロシア貴族の3つの一族の興亡を描いた作品です。主人公のピエール(本来はピュートルだが、ピエールにすることでこの当時の貴族にあるフランス文化を表せている)は、貴族の没落の中、大地でたくましく生きる農民の生きざまへの傾倒など、彼の魂の遍歴が描かれ、合わせてナターシャとの恋愛も描かれます。登場人物は559人に上るとされ、例を見ない群像劇になっています。
◎『神々は乾く』は、フランス革命の動乱に巻き込まれた青年が人々を断罪して死刑台に送る側から、送られる側に陥り死んでいく悲劇を描いた歴史作品です。理想を掲げていく中で、感情がどんどん失われて行く様子が怖いです。

●フローベルの『感情教育』は、二月革命前後のパリを舞台に法科学生フレデリックの青春を描いた作品です。彼は故郷に帰る船の中、美術商アルヌーと出会い彼の妻にひとめぼれをします。彼はパリでさまざまな人と出会い怠惰な生活を楽しみますが、ある日、実家の家計が非常に悪く、パリの生活もあきらめなくてはならなくなります。失意の数年を送りますが、突然彼の叔父の遺産が転がり込みます。再びパリに戻った彼は、アルヌーの妻と再会し愛を打ち明けます。その後いろいろなことがあり、堕落していきますが、晩年に彼は旧友と「あの頃はよかった」と語り合うのです。

●トルストイの『アンナ・カレーニナ』は、政府高官の妻である美貌のアンナがある日青年将校と出会い、お互いに惹かれあいます。不倫という神の掟を破る行為に走ったアンナ。自分の気持ちに正直に生きたアンナを世間は許さず、あんなは死に追いやられます。トルストイはリアリズムの巨匠と言われていますが、この作品でも瞼の描写一つ、肉体の動きの一つ一つなど、細かく書いています。そのことによって人間の心理描写を表現するという手法を取っているのです。これがなければ彼の作品の量は半分以上減ったかもしれません。

●同じトルストイの『復活』は、若い貴族の主人公がある殺人事件の陪審員として裁判に出席したところ、昔弄んで捨てた女と出会います。罪の意識に目覚めた彼は、彼女の恩赦に奔走し、ついには彼女の再生に人生を捧げるという物語です。社会の偽善を告発しています。

●ナチスの時代に優性思想というのがあって、障害者が追われた過去があります。いわゆる「灰色のバス」ですね。マルサスの『人口論』は、第一に食料が人類の生存に必要としています。第二に、異性間の情欲は必ず存在するとしています。マルサスは人口の増加が生活資源を生産する土地の能力よりも不等に大きいと主張し、人口は制限されなければ幾何級数的に増加するが、生活資源は算術級的にしか増加しないので、生活資源は必ず不足するとしています。

◎『ベルリンは晴れているか』ですが、これはこの時代を過ごした人間の姿、あったはずの街の姿を刻み付けておこうという作者の思いを感じました。戦後のストーリーと交互に語られる過去のエピソードが相まって、謎が提示されます。この物語にも灰色のバスが出てきます。主人公の身近に過ごしていた子供が障害児で、ある日突然連れていかれるのです。父親の落胆が描かれています。
◎『安楽死を遂げた日本人』だけでなく安楽死はいろいろな本でも取り上げていますが、死を法律化するのは難しい問題です。延命治療の問題もありますし、国家が人間の生死に関わっていいの?という疑問があります。でも実際にスイスに行った日本人もいましたよね。共感性は危険です。
◎この本で末期の痛みとかだけでなく、筋肉がだんだん動かなくなっていく病気にかかって、頭はクリアなのに体は人を介してしか生きていけなくなる。そういうわけでその希望を持っている人が法律に狭められて希望が叶わないのも嫌だし、どんどん死んでいいよというのも嘘だと思うし、考えきれません。どっかの議員のように「生産性がない」と一切を否定するのも間違いだと思います。

あっという間の2時間でした。今回は大作が多く出ましたが、ブックカフェはどのジャンルの本でも、大丈夫です。本の好きな方、これから本を読もうとしている方、誰でも大歓迎です。お時間のある方よってみてくださいね。