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2020.07.07

ブックカフェ2020始めました

ニュース

開講中はコンスタントに開催してきた、好きな本を語り合う「ブックカフェ」。今年は折からの新型コロナウイルス、休校、入校制限で4月以降なかなか実施できずにいました。が、春セメスタ再開が落ち着いた6月にOICが先行してWebでのブックカフェを開催しました。続け!とばかりに打ち合わせたBKCでも、なぜか打合せがブックカフェに早変わり。皆さん、こんな時期だからこそ手に取った本もあるようで、より一層誰かに紹介したい!語りたい!様子です。

もし次回以降「出てみたい!」「私もしゃべりたい!」という方は、各キャンパスの書籍カウンター(衣笠:ふらっと BKC:リンクショップ OIC:OIC Shop)にお問い合わせください。

6月16日(火)OIC6月26日(金)BKC

2020年6月16日(火)OIC リモートブックカフェレポート

暑苦しい6月の日の夕方、オンラインでもOICブックカフェが開催されました。
参加者は、心理2回生、3回生の方お二人、4回生の方お二人、経営3回生の方が三人、政策2回生、3回生と多くの方が参加してくれました。いつもより短い時間でしたが、みなさん、熱く語ってくれました。

こんな本が話題になりました

●加藤シゲアキを追いかけて読んでいます。『できることならスティードで』は初めてのエッセイなのですが、「旅」をテーマに加藤シゲアキが思ったことを自由にセキララに描いたものです。『チュベローズ』は歌舞伎町を舞台に、ホストクラブに誘われた彼が関わる男と女のミステリーです。
◎加藤シゲアキはデビュー作の『ピンクとグレー』もそうですが、とても暗い作風という印象があります。どのへんに魅力を感じているのですか?
◎本人の働いている世界は芸能界で特殊ですよね。それでも書けるという才能を持っていて、最初はどうかと思ったのですが、4作目あたりから作家になってきたなと思えて注目しています。

●有川浩の『旅猫レポート』は、自らの死期を知り、飼い猫を手放さなければならなくなった主人公が猫の引き取り手を求め、銀色のワゴンに乗って旅をする。彼の幼少のころから現在までをたどる旅でもあります。

●『交渉力』は、交渉とは話をまとめる力のことで相手を説得する力や対立する意見をまとめ上げる力が結果につながる、と学べました。
◎『実行力』は、まず人を動かすための人心掌握の方法、本当に事項すべき課題をどう見つけるか、いい結果を出す仕組み作りなど組織の中での有り様を学べました。

●『ジブリアニメで哲学する』はジブリの映画作品、14作品位かな?それを取り上げて、裏の意味などを解説した本です。

◎『風立ちぬ』ではタバコが出てきますが、その意味とか、『崖の上のポニョ』はハッピーエンドなのか、主要なモチーフである「風」「森」「城」「海」などを哲学し、私達が生きる現実世界の本質を解き明かしていっています。
◎『魔女の宅急便』の主人公キキは一人前になるために、一人である町へ行って修行の毎日を送ります。知らない街とは何なのか?それは街の外観だけでなく、そこに惹かれて済むことによって、親しい人もできて人とつながっていく、それが自分の街になるということ、好きになるということです。読んでみてください。面白いです。

●最近は『産業革命』について興味を持っています。みなさんも歴史で学んだように、18世紀後半から19世紀にかけて起こった一連の産業の変革と、それにともなう社会構造の変革のことですね。

●『サピエンス全史』を読んでいます。ホモ・サピエンスは同じ種のサピエンスを滅ぼして発展してきた。自分と違うものを認めず排他的であったりする。最近の黒人の問題にもつながるところがあるかもと思いました。

●あさのあつこ原作のコミカライズの『NO.6』を読みました。日本を舞台にした近未来SF小説で、理想都市に住む少年が主人公。謎の少年に出会ったことから理想都市の裏の真実、隠された本質に気づいていくというディストピアな側面をもった物語です。

●私は経営学部でマーケティングに興味があって大学に入りました。この本は経営学の骨格というか押さえておいて必要なことを学べます。マーケティングは顧客に対する価値創造をするというものなので、その辺がとてもわかりやすいです。

●家にあったので、ひょんなことから北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』を読みました。
これは北杜夫が若い頃に船医をしながら世界一周をしたときの旅日記で、エッセイ風です。
うまくいかないことも多いのに、ユーモアがあってめちゃめちゃおもしろい。お薦めです。

●まだ全部読んでいないのですが、ウェブスターの『あしながおじさん』を読み始めています。きっかけは世のなかにある「あしなが基金」とかに触れたことです。
◎私も大好きです。シンデレラストーリーというだけでなく、主人公の人柄や発想がユニークで物語世界にすぐ入り込めてしまいます。全編手紙形式なのがすごいです。

●最近面白いなと思ったのが、コミックの『静かなるドン』です。主人公はある下着会社の冴えないデザイナーですが、実は広域暴力団総長の一人息子でもあります。三代目総長に指名された主人公のカタギ人生とヤクザ人生の奮闘の様子が描かれています。
◎タイトルだけだと思わずロシアの大河小説かと思いました。

●小川糸さんが好きです。『ツバキ文具店』は、祖母が行っていた文具店と代筆屋業を引き継ぐことになった主人公が様々な人に関わるうちにその思いをすくい取り、思いを届けることで、祖母の意志にも寄り添っていくという物語です。小川さんの小説は静かに沁みとおっていくやさしさがあります。
◎本屋大賞の何位かになっていた『ライオンのおやつ』も死を前にした女性の話ですが、小さな余韻が積み重なっているような本です。

●森絵都さんの『カザアナ』は、近未来の日本が舞台です。管理社会の中、負けじとタフに生きる家族たちが出てきます。その家族が太古から始まる悠久の歴史の中を生きてきた「カザアナ」と出会うことで、変化が生まれます。コメディとシリアスが同時に存在する極上のエンタティメントです。

●『ラン』も面白いです。「生きる」を「走る」に変えて走り続ける主人公が、ある日今もいなくなった家族に出会います。現実と非現実が交差する物語ですが、あの世までの距離を考えればいつだってなんだってできると励まされるお話です。

●みんなでお薦めの本があれば発表しませんか?私のお薦めは、谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』です。昔、教科書で一節を読んだだけですが、とても惹かれました。谷崎の小説はあれというかあれですが・・・魅力的だと思います。

●必ず買う作家は、夏川草介さんです。『神様のカルテ』シリーズにとても影響を受けました。主人公の真面目な一途さや、命を守ろうとする行動に惹かれました。

●『フェルマーの最終定理』ですが、数学がわからなくても、文系でも難なく読める本です。

●僕は西尾維新の戯言シリーズをお薦めします。1巻の『クビキリサイクル』は、僕が僕の周りで起きるミステリーを解決していく物語です。第2巻の『クビシメロマンチスト』が一番お薦めです。世間を騒がせる連続殺人犯と邂逅した主人公がまた事件の謎を解くために活躍します。西尾維新の魅力はキャラが立っていることと言葉遊びです。もちろん舞台の大学は立命館大学としか思えない鹿鳴館大学です。

●「乙女の本棚シリーズ」と言って、名作にイラストをつけた小説としても画集としても楽しめるシリーズがあるのですが、その中で、泉鏡花の『外科室』がおすすめです。文語調の文章のリズムとちょっと恐ろし気なファンタジックなイラストがあいまって見ごたえがあります。

●僕は、東野圭吾の『流星の絆』です。幼少時、両親を惨殺されるという過酷な運命を背負った三兄妹が詐欺を働きながら、時効が迫る14年後に真犯人を追い詰める復讐劇ですが、コンゲームや恋愛もあって見逃せません。

●僕は旅に行くときにその街に関わりのある作家さんの本を持っていく習慣があって、例えば仙台だと伊坂幸太郎なので『ゴールデンスランバー』を持って、例えば岐阜だったら朝井リョウの出身地なので『時をかけるゆとり』を持って出ました。『ゴールデンスランバー』は首相暗殺の濡れぎぬを着せられた男の2日間に及ぶ闘争劇を描いたものです。『時をかけるゆとり』は、ばかばかしくて豪快な笑えるエッセイです。でも人前で読むとおかしすぎてよくないかもです。

●本多孝好の『MOMENT』は、病院でバイトする主人公が人生の最後にかなえたいことをかなえてあげる物語です。人は人生の終わりに誰を想い、何を願うのかが描かれています。『WILL』は、前回の主人公の友人が主人公です。葬儀屋を継いでいる彼女は、葬儀店に持ち込まれるやっかい事を解決していきます。死をテーマに描かれた本です。

●マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』を読み始めています。「スカーレット・オハラは美人ではなかったが、一度その魅力にとらわれてしまうとたいていの男は美人でないことを忘れてしまった」から始まる物語で、とにかく主人公のたくましく生き抜く力が魅力的です。最近は黒人のいろいろな問題で攻撃もされていますが・・
◎この物語はあの当時あった農場主たちの南部貴族社会の崩壊を描いたものです。南部白人の視点で描かれたこの本は、書かれた当初から「奴隷制度を正当化し、白人農園主を美化している」として根強い批判と抗議を受け続けていたようです。
でも名作なのは間違いありません。激しい気性のスカーレットが魅力的です。打ち明けた相手に受け入れられないとあてつけに違う男と結婚したり、戦後自分で店を経営したり、逞しさに感銘を受けます。レットに振られて本作を終わりますが、願わくばレットを取り返すという続編『スカーレット』はこの世にないものとして扱ってほしいです。

●みなさんの小説を選ぶ基準ってありますか。私はこの人のは絶対買おうと思っている作家以外は、バイト先の本屋で見て気になった本とかですね。

●僕はミーハーなので、本屋で今月のベストとかで大きく扱われている本を手に取ります。

●帯などのレビューを参考にします。またタイトルが面白そうだなと思った本はめくってみて中がよさそうだったら買います。

●表紙のイラストとかジャケ買いをしてしまいます。

●本を読むきっかけは、高校の時に携帯を落として、デジタル生活がストップしてしまったとき、アナログで行くには本を読むしかないと思ったことです。

●みんなの本棚見てみたいです!!

●コミック以外は文庫派です。単行本はかさばります。

<せっかくリモートでみんな部屋から参加しているので~ということで、雑多な様子から!整理整頓された棚まで!!見させていただきました・・・♩>

●みなさん、書店でつけてもらうブックカバーってそのままですか。

●私は本のタイトルが見えなくなるのがイヤなので外します。同じ本を買ってしまう予防でもあります。

●僕は外しません。電車とか他で読むときに他人からタイトルとか何を読んでいるのかわかるのを避けたいです。

●僕は本自身のカバーと帯を外して読みます。

参加者の様々な読書生活も垣間見えたブックカフェでした。思いがけず楽しかったので、来月も行おう!ことになりました。

2020年6月26日(木)BKC「プレ」ブックカフェレポート

この日、本当はBKCでのリモートブックカフェの開催を相談するために集まったのですが・・・やはり本のことを語りたい!ということで、本番前に1時間ばかり急遽ブックカフェを行いました。今日の参加者は理工学部M2の方と情報理工学部の方です。

こんな本が話題になりました

●スティホームの機会に小野不由美の『十二国記』を既刊全部揃えて読み通しました。
全編にわたってつらいシーンの表現がうまいなと思いました。精神的にしんどいシーンが続くのですが、そのあとで必ず救われるカタルシスのシーンがあります。良いファンタジー小説というのは、歴史の厚みが感じられるかというところがあるかと思いますが、これまでその世界で起こってきた歴史を感じられるというのは、その世界観の構築が細かくしっかりしたものだと言えます。

●お気に入りの『ドラゴンラージャ』を全巻読み返しました。ある架空の国で征伐軍を出して戦ったところ、ボロボロになって帰ってきます。多額の身代金を要求された主人公達は、その内容を伝えるために首都を目指して旅をするという物語です。

●関西の電力会社に就職が決まったこともあって『エネルギー産業の2050年』を読みました。電力システム改革は、電力業界だけの構造改革に留まらず産業の枠を超えた新たな産業創出に寄与する問題である・・・と書かれている本です。

●変わった料理の本なのですが、『Cooking for Geeks 』を読みました。
「風味」とは何かを語ったり、70度で湯がくと温泉玉ができることは誰もが知っているけれどそれを理論的に解明したり、「味覚」と「嗅覚」は打ち消しあう効果があるとか・・・。かなりマニアックに、プログラマー的に遊べる感じです。特に役に立ったのは、「包丁の研ぎ方」を始め、料理道具のメインテナンスを書いた部分です。

●芥川賞をとった『爪と目』、読みにくいところはありますが、興味深い本です。すべての文章が、「あなた」で語られます。夫とその再婚相手と子どもの3人家族ですが、「私」である夫から、妻である「あなた」をただひたすら語っていくという物語です。語られていくうちに、なぜ結婚したのか、どういう出会いだったのかなどわかっていきますが、「私」の感情は表されません。行間ににじみ出るものを読者が読みとるという形になっています。でも語り口調の文体が好きなので、けっこう好きな本です。

●文体で言うと固めのやつが好きです。福田晴敏さんの『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』は男たちと戦艦ものですが、その固い文体と、それなのになぜか読みやすい内容でかっこいい仕上がりになっています。

●湊かなえは、女性の目線で女性の感情を描くのがうまいと思います。『告白』なんかもそうですね。
◎『贖罪』などもそうですが、一人の目線で他の人のことが語られ、それが順番に進んでいって小さなピースがいつの間にが大きな輪になって全体像が見えてくる・・・というお話が多いですね。最後に見えなかった謎が浮き出てきます。

●森絵都さんの『カラフル』は日本中の中学生が読んで感動しまくり!という本です。
あるとき、死んでしまった中学生が天使の導きによって現世の中学生の体にホームステイをする、という物語です。罪を犯してしまったという主人公は再チャレンジの機会を得ます。見知らぬ家族や学校の人々との間で、少しづつ生きることを実感していきます。そして最後に訪れるハッピーエンドには涙がでます。
◎『ラン』は、あるとき主人公の少年が自転車で走っていると今はもういなくなった家族に会います。それから会いたくて走り続けるというお話です。現実と非現実が混ざり合うファンタジー小説ですが、あの世のまでの距離を想えば、現実の世界はどこだって行ける、生きていればなんだってできるというお話です。
◎『DIVE!!』は、高さ10メートルから時速60キロでダイブし、技の正確さと美しさを競うダイビングのお話です。わずか1.4秒のために努力を続ける少年たちの姿を描いています。おもしろいですが、最近は青春小説はもう読めないなと思っています。

●浅野いにおさんってご存じですか。『おやすみぷんぷん』などを書いている漫画家さんですが、年を取った人が若いころを振りかえって「もっとできたのでは」と思うような、ノスタルジーというかモラトリアムの世界を書いています。読むとその一日動けないほど心に来ます。自分を見つめなおす機会になる作品です。
◎うまくいかないときも、うまくいかない自分を抱きしめて生きていこうと思います。

●最近体を動かさねばという意識になってきて『シヴァナンダヨーガ入門』を買いました。やってみるととてもしんどくて、最初は目の運動、首の運動から始まるのですが、だんだん難しくなります。基礎筋力をつけようという目的の本ですが、できるようになるのはまだまだです。

●いちばんおもしろかった小説は山崎豊子の『白い巨塔』です。大学の付属病院の実態や政治的な関係、善と悪の対比など良かったです。テレビドラマの方は東教授の娘にツッコミを入れていました。妻子もちの医者に告白するわ、裁判で大学の相手方の味方になるわ・・どうかなと思います。

◎『不毛地帯』は、ロシアから復員してきた主人公がビジネスシーンでのし上がっていく物語です。骨太の小説です。
◎『沈まぬ太陽』は、労組活動をやっている主人公が世界各地大変なところにいやがらせで追いやられているのですが、第3巻は日航の事故で現地に行かされてしまう主人公の活躍を描いた物語です。不屈の魂が描かれています。

●『都市と都市』は、SF小説です。2つの都市がモザイク状に混在しているのですが、片方はもう片方を意識的に見ないようにして過ごしています。そこで殺人事件が起こるのですか、死んでいるのはもう片方の都市の住人だというところがわかって、さぁどうなるのかというところまでしか読んでいないので、これからが楽しみです。

●『ストレンジャーシングス』は、1980年代に少年4人組がいて、でもその一人が失踪して代わりに怪しい女の子が現れるのですが、男の子の失踪も女の子の存在も街にある研究所のせいではないか?となってきます。映画版は他の映画のオマージュも多く、「遊星からの物体X」のポスターが張られていたり、ある場所でエクソシストの音楽が流れていたり、映画好きにはたまりません。

●『バタフライエフェクト』は、主人公は記憶だけ過去に行ける能力を持っています。自分の過去を変えて、人生をより良くしようとします。また彼女の人生も向上させようとしますがうまくいきません。最後は二人とも幸せにはなりますが、2人が結ばれる運命にはなりません。ある日、街で2人が通りすぎるのですが、彼女は忘れてしまって気が付きません。
でも彼には過去の記憶があります。気が付きます。でもじっと耐えて追いかけないのです。
僕はけっこう、ハッピーエンドよりビターエンドというか結ばれなくておそれぞれの道を行くような終わりが好きです。これはまさにそうです。
◎やけぼっくいに火というのは嘘ですね。その時選んで別れたものをひっくり返すのはよくないですね。

●『バック・トゥザ・フューチャー』は有名な時間旅行ものですが、車がタイムマシンになっているというのが新しいのと、身近な問題を解決して未来を変えるというのがわかりやすい物語です。地上波に流れるとカットが多くてがっかりします。もはや古典と言えます。

●『リプレイ』は、主人公が何度でも思い通りの場所に戻って人生をやり直す話です。
より良き人生を得るためにリプレイをしているのに、うまく結果が出ません。何度も繰り返すうちに、人生はたった一度だけ、その人生を真摯に生きてくべきでなないのかということになっていきます。あの時人生や選択を変えられたら・・・と思うのはありがちですが、やりなおせないのが人生ですよね。

●タイムスリップものはたくさんありますよね。映画化された『戦国自衛隊』とか。戦国時代にタイムスリップをした自衛隊が、ある武将と結託して戦いを勝ち抜いていくのですが、この戦国時代が自らの知る戦国時代の歴史とは違うことに気が付き、どのような役割が自分たちあるのかと悩み、そのうち物資もそこを突き、自衛隊員もどんどん殺されていきます。
この時代にはいなかった織田信長の代りという役割を実際に果たしてしまった自衛隊は、タイムパラドックスを修正してしまったという物語です。

●小林泰三の『玩具修理者』に収録されている「酔歩する男」という物語があるのですが、設定として時間というのは流れているようで実はとびとびで、それを脳にある器官がうまく整えており、流れがあるように見せているという設定です。主人公は医学部で、脳内でタイムスリップをする技を身につけます。だけれど、時間は飛ぶということを把握していなかったために、朝と思ったらすぐに夜になったり、突然、準備もまだなのに、研究発表する直前になって発表を失敗したり。なぜか医学部受験の前に飛ばされて、勉強をしていないので落っこちて、そもそも医者ではなくなってしまうとかいろいろなことが起きてしまいます。それで眠るのが怖くて(眠るとタイプスリップしてしまうから)、夜中に酔いながら歩き続けているというお話です。

●筒井康隆のデビュー作『お助け』は、主人公の時間は早く動くようになって、ついには周りの人間がいつも止まっているくらいになってしまうというお話です。最後に危機をむかえるのですが、誰にも気づいてもらえない悲劇があります。

●『サイボーグ009』の主人公島村ジョーは奥歯に加速スイッチがあって、そこを押すと人より早い時間を手に入れられます。あるときそれが暴走して、戻らなくなるというエピソードがありました。

●実は森茉莉が好きです。森鴎外の娘である茉莉は50過ぎて、鴎外の著作権が切れたために食べられなくなって書き始めたのですが、そのエッセイが秀逸です。視点といい、辛口の切り口といい、読んでいてスカッとします。1903年生まれですが、センスに満ちた貧乏暮らしを描いた『贅沢貧乏』がおすすめです。

●アガサ・クリスティの『検察側の証人』はおもしろいです。ビリー・ワイルダー監督が『情婦』というタイトルで映画化していましたがこれも名作です。
金持ちの有閑マダムを殺した罪で逮捕された男の妻が、検察側の証人になって男のアリバイを否定し、そのうえで他の男と暮らすために容疑者を陥れようとする手紙の存在で見事に男は無罪となります。実際に罪を犯した男は妻の働きで自由を手に入れた時、愛人が出て来て妻を置いていこうとします。その結末は?映画の最後には「けっしてこの結末を話さないでください」としています。法廷ものとしては秀逸です。

打合せのはずが「せっかくだからちょっと本のこと話しましょうか」と始めた短いブックカフェですが、盛り沢山の内容となりました。
が、ちゃんとBKCでのリモートブックカフェの計画も立てましたよ!

7月25日(土)17時から
何人かのBKCブックカフェOBの方にも声をかけて実施しようということになりました。