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2020.08.06

2020年7月の「リモート!」ブックカフェレポート

ニュース

コロナ禍でご多分にもれず、7月ブックカフェもリモート開催となりました。BKCはなんとOBの方ばかり!となりましたが、これが可能になるのはリモートならではですね。開催方法は「新しい方法」ですが、読んだ本を語るのはいつも同じ。今月もたくさんのタイトルが紹介されました。(※紹介の中には「あらすじ」が語られている場合もあるのでご注意ください)

7月14日(火)衣笠7月17日(金)OIC7月25日(土)BKC

2020年7月14日(火)衣笠リモートブックカフェレポート

小雨を感じる夕方、初めての衣笠リモートブックカフェが開催されました。
参加はささやかな人数だったのですが、久々のブックカフェだったので、熱の入ったひとときを過ごすことができました。参加者は産業社会学部1回生の方、文学部3回生の方、それとこの春の卒業生がお一人参加してくれました。

こんな本が話題になりました

●最近読み返した本で、児童書なのですが『らくだい魔女はプリンセス』シリーズは、魔女のプリンセスが冒険をしたり、その日常生活を描いた物語です。大学生になって読むと小学生の時とは話が違って見えました。敵の悪魔が昔は単なる敵に見えていたのに、裏表に気が付くようになったり、主人公のフウカが小学生とは思えない強さに気がついたりです。

●魔女つながりで、『私のママは魔女』の主人公は10歳の普通の女の子ですが、ママが魔女なのでまわりには不思議なことがいっぱいというお話です。ハラハラドキドキできます。

●昔、『おかあさんは魔女』という本もありました。この本は現代の魔女を楽しく描き、ミステリー仕立てにもなっています。魔女は昔のように魔術や言葉で魔法をかけるのではなく、鍋で薬をグツグツ煮て魔法をかけます。魔女の子供の女の子が主人公ですが、いろいろ仕掛けがあって楽しいです。

●『小さい魔女』は127歳ですが、まだまだひよっこの魔女です。まだ修行中の身で失敗ばかりですが、なんでも一生懸命です。しゃべるカラスとペアで大活躍します。最後はスカッとする出来事が待っています。

●最近、新見南吉の絵本を読んでいます。心に残っているのは『手袋を買いに』です。冷たく冷えた子ぎつねのために、お母さんきつねは子ぎつねを手袋を買いにやります。片方の手を人間の手にして「こちらだけを出すように」と言い聞かせますが、子ぎつねは間違った方の手を出してしまい、でも無事に手袋を売ってもらえたというお話です。

●横溝正史の書いた『人形佐七捕物帳』は人形のようにイイ男の佐七親分が、いろいろな怪事件の謎を解いていく時代小説です。いいなと思うのは人情味あふれる内容で、この男は逃がしてやりたいと読者が思うと、本当にそんなふうに佐七親分はしてやるのです。

●フリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は第三次世界大戦後の世界が舞台ですが、自然が壊滅的な状態で、でも科学技術が発展しているために本物そっくりの機械仕立ての生物が存在しています。その技術によって生み出されたアンドロイドは感情も記憶もあって、自分自身が機会であるとは認識できない存在になっています。この作品で作者は何を描きたかったのでしょうか。

◎結局人間とは何か?ということかもしれませんね。生身の人間も機械仕立ての人間も区別がつかないといことは、人間と人工知能の迷路に入り込むようなものですね。

●『野尻抱影』という本を読み始めています。夜空の美しさを伝え続けた野尻抱影ですが、この本は科学と文学を横断する珠玉の随筆を集めた本です。

●『テニスコートの殺人』はディクスン・カーの作品ですが、これまで絶版に次ぐ絶版だったのがようやく新訳で再版が出るようになりました!不可能殺人を描くのが好きな作家で、密室ものが多いです。横溝正史に影響を与えたといわれています。横溝は名門旧家におけるどろどろな状態を作品にしましたが、作風としては似たものがあります。

●読んだと言えば児童書では『ハリー・ポッターシリーズ』が有名ですが、自分としては入りづらかったです。ドンパチやって親しい人が死んでしまうのはつらかったです。ついていける人とそうでない人もいると思います。楽しい・面白いを押し付けつれるのは好みではありません。

●はやみねかおるさんは昨年、立命館に来られた時に、質問ができてちゃんと答えてくれたのがうれしかったです。はやみね作品はさわやかで、ミステリーなのに人が死なないところがよいです。

◎日常の謎のミステリーですね。北村薫とか米澤穂信とか。

●森絵都の『カラフル』は、全国の中学生に生きる力を与えた名作です。死んでしまった僕が、知らない中学生の体に入って人生を再チャレンジする物語です。

●『カザアナ』は監視社会が横行している未来社会が舞台で、頑張る家族が出てきます。それと対比するように、太古から生き続けてきたカザアナという存在があります。この2つの存在があいまって、コメディとシリアスのエンターティメントが展開します。

●ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』は密室を扱ったミステリーの古典と言われています。黄色い部屋で令嬢の叫び声が聞こえて、一同がドアを壊して部屋に入るとそこには血まみれの令嬢が・・。犯人の姿はない。どうやって逃げたのか・・?を解決していく物語です。

◎黄色い部屋には続編もあるんですよ。第三部もあります。

●『タイムスリップ探偵団』というシリーズがあります。主人公がタイムスリップ先で聖徳太子や紫式部、夏目漱石とかに出会って、その時代の謎を解き明かす痛快ミステリー小説です。

●話題の『約束のネバーランド』は面白いですよね。最後はどうなって終わるのでしょうか。

◎このコミックの元ネタは、カズオ・イシグロの『私を離さないで』だと思います。同じ孤児院が舞台ですし、子どもたちが人権を無視された状態で、ある目的のために育てられている設定が同じです。

●『鬼滅の刃』はスポーツチャンバラの流行りを演出していると思います。内容を見ると子どもが憧れるのもわかります。

●私は子どもの頃、南洋一郎訳の『怪盗ルパン』シリーズを読んでいました。決して人は殺さない、しゃれたスマートの佇まいにいっぺんでファンになりました。確かに子ども向けの訳ですが、大人向けの翻訳と比べても変わりない面白さがありました。

●永遠の名作と言えば『名探偵コナン』です。子どもの体にされてしまった困難をものとせず、謎にぶつかるコナンは魅力的ですし、戻れるのかな?とか、蘭と新一の未来はどうなるのかな?とか気になるところがいっぱいです。

●伊藤仁斎という日本の思想家がいるのですが、これまで自然の摂理と人間の動向・道徳などは普遍的に関わるとされていたのに、仁斎は「自然と人間を一緒にするな」と唯一唱えた人でした。

●そういえば道徳の時間に「かぼちゃのつる」というお話を習ったのですが、かぼちゃがどんどんつるを伸ばして、自分の畑内だけでなく道路にまで伸ばしていったら、ある日車が通ってつるぶちっと切れたというのがあって・・・これは、一人だけわがままにしていると見返りが来るということだと思いますが、自分としてはかぼちゃはつるを伸ばすのが仕事で、それを集団の輪を乱すことは悪いと決めつけるのはいかがなものか?と思いました。

●ウェブスターの『あしながおじさん』を愛読しています。主人公の機知と好奇心に満ちた手紙がとても魅力的です。孤児院育ちの女の子が文章の才能を認められて、女子大に出向くところからお話は始まります。お金を出してくれるあしながおじさんへの愛情に満ちた手紙の数々。なかでもジャービスさんと心を近づけていく様子が素敵で、最後の大団円につながります。

●子どものころは、シャーロック・ホームズに夢中でした。「緋色の研究」「まだらの紐」「赤毛連盟」「4つの署名」など派手なものが取り上げられますが、大人向けのシリーズを読むようになると落ち着いた物語も面白いなと思えてきました。ビクトリア朝の雰囲気も味わえますし、でもわかってくるのは「ワトソンって頭いいかも」ということでした。

◎ラストの話で『ホームズ最後の挨拶』というのがあるのですが、ホームズがドイツのスパイをつかまえるためにトリッキーなことをします。あまり出てこなくて話の最後にヒロイックに登場するのが恰好良いのですが、なんかそうした姿に心冷めてくるところもあって・・・ちょっとなぁ~と思いました。

●『銭形平次捕物帳』ですが、これはデスマス調で描かれている時代小説です。人情味あふれる岡っ引きの物語で面白いです。

◎人情味と言えば、藤沢周平の小説とかもそうですよね。

◎藤沢さんは、最初はとても暗くて救いがたいような小説を書いていましたが、ある時から明るいキャラが出てくる人情味あふれる物語を書くようになりました。何かふっきったのかもしれません。

●筒井康隆の『脱走と追跡のサンバ』は、揺らぎ始めた世界で現実と虚構の中を疾走するという物語です。サイケデリックな絶品の作品です。

◎筒井康隆で面白いのは『富豪刑事』です。大金持ちの令息が刑事で、事件を解決するために考えられないほどの金銭を多用する物語です。はじけるエンターティメントです。

◎筒井康隆で好きなのは、七瀬三部作です。『家屋八景』でお手伝いとなったそれぞれの家庭でテレパスゆえの体験が描かれて、『七瀬ふたたび』では超能力仲間たちと出会い、その逃避行が描かれ、『エディプスの恋人』では七瀬は高校の先生に転身しており、そこで同じような力を持った高校生と出会う・・・というお話です。そこでびっくりしたのは、たとえばボールが飛んでくるというような表現を「しゅわんしゅわん」というような音で描くとか、新しい試みがたくさんあることでした。

◎『文学部唯野教授』は途中で挫折しました・・・。

◎文学の講義がたんたんと描かれているとかの表記が退屈とか?

◎この作品はあえて山場を避けて描いているような気がします。だからでしょうか?

◎『パプリカ』は、主人公のセラピストが他人の夢とシンクロして無意識世界に侵入する夢探偵でもあるという設定で、現実と夢が交錯する不思議な物語世界です。

●夏目漱石の『坊ちゃん』を読んでいて思ったのですが、「うらなり」ってなんでしょうか。

◎つるの先の方になるひょうたんのことで,さきっぽのひょうたんは育ちが悪く、元気がないことを表したことばです。

◎キャラが立っていますよね。赤シャツとか野だいことか目に見えるようです。私はこの物語で、無鉄砲で親からも見放されそうな坊ちゃんがまともなのは、ばあやの清の存在があったからだと思います。無条件で自分を愛してくれる存在は尊いです。

◎『それから』は、親の力で優雅な生活を送っている30代男性が人妻を好きになって、親から見限られてしまっても、自分たちの愛を通すお話です。まさに二人のそれからはどうなるのか心配になります。

◎『門』がその後日談だと言われていますよね。

●昔、星新一をよく読みました。あれほど読んだのになかなか思い出されません。地球人の赤ちゃんが欲しいのでカップルを誘拐してきたら、それが同性愛者のカップルだったというオチの話がありました。

◎有名なのは『おーい、でてこい』で、ある時に巨大な穴が発見されます。ある人が「おーい、でてこい」と呼びかけますが、なんの反応もありません。次に石ころを投げてみます。何も返ってきません。試しにゴミを入れていくと際限なく吸い込んでいくことがわかりました。これはいいものがあると、核燃料から何からいらないものを捨てていきました。ある日空から、「おーい、でてこい」と声がしました。次に石ころが落ちてきました・・・。というブラックユーモアなショートショートです。

●『不思議な国の殺人』は「不思議の国のアリス」で始まりアリスで終わるミステリーですが、主人公は特ダネをものにしたと考える新聞記者。その矢先、奇想天外な殺人事件が起こり、彼が警察に追われるという皮肉な展開になっていきます。面白いです。作者のストーリーテラーぶりが注目です。

●アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』は、歌のとおりに招待客がいなくなっていく物語です。その仕掛けは、本当にあっと驚きます。殺されたと思った人物が実は犯人というところに、どこで気づけるか試してみてください。

◎『崖っぷち』いうクリスティの作品があるのですが、男を取られた女が、相手の女性に嫌がらせします。相手の女性は崖から落ちて死んでしまいます。そこで女は自分の行ったことを苛み、精神的に壊れていくというお話です。

◎有名ではないですが『バーカー・パイン』が出てくる物語があります。この探偵は人間関係の悩みをうまく収めるという探偵で、いわばコンサルタント探偵と言えます。例えばお金がありすぎて暇すぎてなんとかしてほしい!とかを違法すれすれのやり方で解決していきます。一番良いのは人が死なないところです。

短いリモートブックカフェでしたが、充実したひと時を過ごせました。まだまだ参加者がすくないので、後期はもっと参加してくれるようにしていきたいです。

7月17日(金)OICリモートブックカフェレポート

少し雨模様の夕方、OICリモートブックカフェが開催されました。
今回の参加者は、総合心理学部3回生の方、政策科学部2回生のお二人に、生協職員が二人でした。レポートが大変な時期に開催設定してしまった為か、少ない参加者でした。
参加者のアクセスを待つ間、OICショップ書籍部のこれからの取り組みなどを相談をしました。各都道府県が舞台の作品を取り上げるのも良いかな~などの案などが出てきました。ブックカフェとしての時間は少なかったのですが、盛り上がったひと時でした。

こんな本が話題になりました

●辻村深月の『クローバーナイト』を読みました。ある家族の物語、イクメンの父親、起業した母親、二人の子供、ママ友の不倫疑惑、過酷なお受験、驚愕の誕生日会、普通でないことが普通になってくる様子が恐ろしいと感じました。

◎辻村深月だったら『ツナグ』が好きです。ただ一度だけ、死者に会わせてあげられる能力を持った主人公が、依頼主の悲しい切ない思いに触れていく物語です。最終話では主人公の問題がクローズアップされます。読後感が極めてイイです。

◎僕が好きなのは『凍りのくじら』です。周りをちょっと冷めた目に見ている女子高生が主人公で、藤子不二雄の「S・F少し不思議」をもじって周りの人を称していて、例えば、少し・不安、少し・不満、そして自分は少し・不在、という感じです。行方不明の父と病床の母、そして関わって来る元彼。様々な出来事のエピソードの合間にドラえもんが語られます。読み応えがあります。

◎いろいろ悲しいこともあるけれど、最後はファンタジー小説のような気がして読み終わりました。

◎辻村深月だと『ぼくのメジャースプーン』が心に残りました。小学生が主人公だけれど、罪と罰ということについて考えさせられました。人を立ちあがれないほどにしてしまう残酷さと、そういう人を完膚なきまでに痛めつけて良いのかをある不思議な力を持った小学生の主人公が問うていきます。重いです。

●有川浩の『レインツリーの国』が好きです。障害のある人との恋愛の難しさを感じました。

◎耳の聞こえない彼女が、それを隠すためにさま音楽を聴いているかのようにイヤホンをつけていることや、エレベータに乗って自分が乗ってブザーがなったことに気が付かなくて人間性を疑われるとか、心に迫ってきました。

◎最後まで読むと「あれ?これってハッピーエンドなのかな」って思いました。ちょっと疑問符形の終わり方だったので・・・

◎僕はハッピーエンドだと信じています。

◎やはり大学生には『キケン』でしょう。理系男子のはじける青春エンターティメントです。好きなのは学園祭のラーメンを売るところ、躍動感があって良かったです。最後のノスタルジックを誘う終わり方も良かったです。

●『虚構推理』は城平京のミステリー小説で、あやかし達を司る知恵の神となった少女と不死身の男子2人の物語です。神になるために片目・片足となった少女が暗い過去を引きずっているのにも関わらずハイテンションで、男の子に相手にされていないのに言い寄っています。ペンネームを見てもわかるようにこの著書の方は奈良県出身です。

●瀬尾まいこさんの『卵の緒』は家族の形というのは血のつながりだけでない、日常の積み重ね・愛情を重ねて一緒に過ごした時間が関係を強くしてくれるという家族のお話。もう一編もひょんなことから一緒に暮らすことになった異母姉弟のお話。どちらもほのぼの来ます。

●朝井リョウさんの『何者』ですが、この間読み返しました。読む時期を間違えたなと思いました。

●『彩雲国物語』は、架空の世界を舞台にした中華風ファンタジー小説です。内容は主人公が官吏になるために切磋琢磨してのし上がっていくお話です。

●仙台に行ったとき、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を携えて行きました。『重力ピエロ』も良いですよね。

◎『重力ピエロ』は「春は2階から落ちてくる」という書き出しが良いですよね。そして最後に罪を犯しても罰を受けない終わり方がスカッとします。

●僕は皆さんの読書体験と同じような体験をマンガで行ってしまっています。『ドラゴンボール』『スラムダンク』や『ワンピース』です。友情や努力、頑張ったことの達成感などです。

●80年代コミックでいえば、高橋由美子の『めぞん一刻』が好きです。冴えない浪人生が管理人さんに恋をして、数年・・。初徹貫徹する物語です。いろいろありましたが、最後の管理人さんの、いつの頃かわからない程前からあなたのことが好きだったというセリフに泣かされました。

◎『らんま1/2』は、水をかぶると女の子になってしまう主人公とその彼女とのドタバタラブコメ格闘家漫画です。面白さは飛びぬけています。

●昔、学校で流行ったのが『タッチ』です。連載が始まって間もなくかっちゃんが死んだ時、みんなで泣きました。かわいい女の子とそれをめぐる二人の男の子のラブコメだと思っていたのに、急にシリアスになって、高校野球のポーツ漫画になっていきました。

●漫画で時間がわかるのが『こちら亀有駅前派出所』です。長きにわたったその時々の時代感を出しています。この時こうだったな~と思い出に浸れます。

●『スケットダンス』は人助けを目的とした高校の部活動「スケット団」の活躍を描いた学園漫画です。ギャグを中心に、たまにシリアスありで読ませるコミックです。

●10年に1回とか恋愛小説の大ヒットが生まれているような気がしますが、例えば『世界の中心で愛を叫ぶ』ですが、私のお薦めは『いま、会いにゆきます』です。妻を1年前に亡くして最愛の息子と二人暮らしの主人公は、妻が死ぬ前に残した「1年たったら、雨の季節になったら戻ってくるから」という言葉が気になっています。果たして妻は戻ってきたけれどすべての記憶を失っていた・・。どうして妻は戻ってこれたのか。その謎が明かされる時に、失ってしまったものの大切さに泣くしかありませんでした。

◎もう一つお薦めは『四日間の奇蹟』です。指を失ったピアニストがサヴァン症候群の少女にピアノの才能を見出し、二人で演奏旅行を続けている。そんな時に出会った女性と親しくなるが、彼女は落雷による事故に見舞われて意識不明となります。残された4日間で何が起きたのかという奇蹟の物語です。

1時間ちょっとの時間でしたが、たくさん語り合いました。そして次回は8月にもういちどOICブックカフェをリモートで行い、9月は3キャンパス合同開催にチャレンジしよう!ということになりました。

7月25日(土)BKCリモートブックカフェレポート

雨模様の日の夕方、BKCブックカフェをリモート開催いたしました。
この日の参加者は、OBの方ばかりでした。
2004年、2010年情報理工学部入学の方、2002年理工学部入学の方、2012年生命科学部入学の方、2014年経営学部入学の方が来てくれました。どうしても来てほしかった在校生は今回残念ながら0名でした。が、OBの方々を見ると、ブックカフェが長く続いていることを実感!です。

こんな本が話題になりました

●『日本沈没2020』は小松左京の名作をアニメにしたもので、沈みゆく日本を前に、人々は希望を持ち続けることができるのかを問うた物語です。かつての映画化作品とは異なっており、それはまず物語の中心になるのが市井の人々で、絶望的な状況の中パニックに巻き込まれていきそれでも一丸となってサバイバルしていきます。本になっているのは、コミカライズされたものです。

◎日本三大SF作家と言えば、筒井康隆、小松左京、星新一で疑いはないですね。

●そういえば村山由佳の『おいしいコーヒーのいれ方』が完結したって聞いたのですが、どうなって終わったのでしょうか。

◎二人が結ばれた第2シリーズの初め頃までは読んでいたのですが、離れてしまいました。

●『たゆたえども沈まず』は原田マハの歴史ものの作品です。出てくるのはゴッホと弟のテオ、そして日本人の画商です。その3人に友情が芽生えたら・・・?という視点で描かれています。ゴッホは27歳の時に弟の薦めで絵を描き始めたのですが、たった10年の間にあれだけの絵を描いたことになります。ゴッホ展に行ったのですが、最初は落書きみたいな絵で、それがどんどんゴッホらしくなっていく様子が魅力的でした。

●テッド・チャンの『息吹』を読みました。これは9作品が入った短編集ですが『千夜一夜物語』の仕組みを使い、科学的に可能なタイムトラベルを書いた作品など、どれも魅力的です。新しい科学の発見で今までの常識がひっくり返されたら・・・などのアプローチも楽しめます。実は人間にとってもっともな本質的な問題を投げかけているようにも感じました。

●『三体』はメチャ面白い小説です。日本的価値観から離れて、儒教的考え方(年上に従うのは当たり前)がベースにあります。エンタメ力の強い出来となっています。ただ、最初はとっつきにくいです。でも読み進めるとキャラが立ってきて面白いです。そのうちきっとハリウッドとかで映画化されると思います。1巻がダメだったら、2巻から読める自由さもあります。『三体』はガウディの建築物のような印象です。ものすごく大きくて、なのに細部まで細かく作りこまれている。緻密さとスケールの大きさが魅力です。とんでもない存在と言えます。

●『オレンジだけが果物じゃない』は両親からキリスト教的価値観を仕込まれ、世界はすべて神の教えに基づいて成り立っていると信じてきたジャネットが、ある時一人の女性と恋に落ちてからその人生が一変するというお話です。

●伊藤計劃の『虐殺器官』を今さらながら読みました。世界中でテロや戦争が激化した近未来を描いています。暗殺が横行する中、主人公は後進国で暗殺を指揮しているアメリカ人の暗殺を命じられるという、戦いに次ぐ戦いの壮大な物語です。

●『ハーモニー』はアメリカ合衆国で起こった暴動をきっかけに、全世界に戦争と未知のウイルスが蔓延し現政府は崩壊、新たな高度医療系社会が構築されます。そこに生きる人々は社会のために、健康・幸福であることが求められますが、この高度な社会を憎悪する人間も現れ、それは集団自殺事件になってしまいます。

◎ディストピアと呼ばれますが、健康や幸福も人から押し付けられると幸福ではないということでしょうか。でもすごいのは、この物語を作者は癌で死の床で書いたということです。生きていたらどれほどの成果を残していたでしょうか。

●映画『ジョーカー』ですがこれは傑作だと思います。バットマンというのはお金持ちで水戸黄門のような存在ですが、この映画にはバットマンは出てきません。ブルース・レインというバットマンの本名の、それも子ども時代の存在だけが出てきます。ジョーカーはなぜジョーカーになったのかというと、精神病を患っていて、その世間の無理解によって犯罪を犯すという構造があります。何気なく渡された銃で犯罪を行ってしまう場面がありますが、意識のない行動によって、最後の引き金が引かれてしまうという描写が、そのテーマ性を浮き彫りにしています。また原作はまったく救いがないのですが、映画は小さなブルース・レインという男の子の存在が救いとなっている気がします。

◎70年代のテレビの「バットマン」は、バットマンとロビンが悪をやっつけてヤッター!というようなエンタメでしたが、80年代からはシリアスになっていったのですね。

●『月人荘士(つきひとおとこ)』は、聖武天皇の真実を探っていく物語です。時代は奈良時代、東大寺大仏開眼供養から4年の頃です。道教についてこれほど掘り下げられた本を知りません。文章がキレイでさらっと読めます。奈良時代の風景が目に浮かびあがるようです。

●『風に舞い上がるビニールシート』なのですが、森絵都の作品の中でこれが一番好きです。6つの短編集なのですが、自分のための大切な何かを生きる人々を描いています。明日はどんな日になるのだろうと思わせる珠玉の短編集です。

●『君のいる町』は広島が舞台のコミックで、高校生の主人公の家に東京からヒロインがやってきます。主人公は同じ家に暮らす彼女と、気になるクラスメイトの彼女の間でつかず離れずの存在となり・・・というようなラブコメですが、時に心折られる場面もありです。

●『みつどもえ』は小学6年生で、日本一似ていない三つ子の女の子のお話です。いろいろなパロディも出てくるギャグマンガです。同じことを会話しているはずが、違う趣旨に勘違いして騒動につながって行くというのがありがちなパターンです。

●平野啓一郎の『マチネの終わりに』を読みました。若き天才ギタリストの主人公は、あるときジャーナリストの女性と出会い惹かれあう。困難がありながらも、ちまちまと長く二人の物語が繰り広げられるというお話です。

◎『日蝕』でデビューされた方ですよね。ルネッサンス前夜の南仏で、若き神学僧が体験したものとは・・。ルビ満載の難しい言葉だらけの文体が評判を呼びました。

●『遥かなる時空(とき)の中で』は、元は恋愛アドベンチャーゲームですがコミカライズもされています。ヒロインはある日、同級生と後輩の男子とともに古井戸の中に吸い込まれる。目覚めるとそこは「京」と呼ばれる平安時代に似た異世界で、ヒロインにはある役割が課せられていた・・というお話です。

●『ぼくたちは勉強ができない』は、同級生のヒロインたちを志望大学に合格させるために主人公の男子高校生が教育係として奮闘するラブコメディです。

●ラブコメと言えば、私の中ではちょっとドタバタ寄りではありますが、『めぞん一刻』が好きです。頼りない浪人生が保育士の仕事を見出す成長物語でもありますし、恭子さんをめぐる恋愛バトルもさることながら、下宿人や周りの人々のサイドストーリーも笑えるし、なかでも純情一直線のところが良いです。最後に五代くんが恭子さんと結ばれた時に恭子さんが「いつの頃からかわからないけれど、ずっと前から好きだった」と言ったときは泣けました。

●スポーツラブコメと言えば『タッチ』です。双子の男の子と幼なじみの女の子が主人公です。ふたごの片方はカッコよくて努力家、片方は頼りない適当派。でもあんなに序盤でかっちゃんが死ぬなんて衝撃過ぎました。でもこれがあったからこそ今も語り継がれるのかもです。その後のたっちゃんの変化には愛しいものがありました。

●島本和彦の『アオイホノオ』は芸大生の主人公がマンガ家デビューを果たそうとするコメディ作品です。実在の有名人が実名で出てくるのもすごいです。このマンガだったかどうかわかりませんが、作者が「世間は評価しないだろう。かわいそうなあだちみつる」と言っていて・・・「おいおい、世間は評価しまくりだよ!」とちゃちゃを入れました。

●『風立ちぬ』で、宮崎監督は「これ以上作れない」と引退を表明しましたが、たぶんまた復活すると思います。アニメ映画に取り憑かれているような気がします。

●ゲームですが「ドラゴンクエストⅤ」の登場人物フローラが好きです!ストーリー上は明らかにビアンカが目立っていますが、僕は応援しています。

●ミステリーで一番の作品は、島田荘司の『占星術殺人事件』だと思います。猟奇的な事件を関係者の手記で書き表す構成となっています。2・26事件の日、ある画家が殺されます。現場に残された遺書から6人の処女のそれぞれの体の一部分を切り取り完全な肉体を持つ女性を作るというものでした。迷宮事件となりましたが、その10年後、事件は動き始めるという物語です。結末を読んだ時、あっ!と驚かされます。

●これだけ日本にミステリーが定着したのは『名探偵コナン』の影響が大きいのではないでしょうか。

●きっと「火曜サスペンス」の影響は大きかったでしょう。

●学級文庫に置いてあった手塚治虫の『火の鳥』に感銘を受けました。これは火の鳥という不死鳥を中心に置いた地球や宇宙を舞台に描かれた壮大な物語です。人間の本質や生命の真実は手塚治虫の独特の思想の元に展開していきます。黎明編で過去、未来編で最終的結末を描くというように、過去と未来が縦横無尽に描かれる構成となっています。未来編は一番過去とも未来とも読めるため、作品自体が無限に繰り返されるような印象を受けます。とても影響を受けました

●SF作品で一番と言えば、ハインラインの『夏への扉』でしょう。1956年発表もすごいですが、タイムトラベルを使った初期で作品で、タイムトラベルの命題「自分との遭遇」「未来からのタイムトラベルによる過去の変更」「タイムトラベルをつかった将来の出来事を変えることが倫理的かどうか」についても描かれています。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のアイディアのもとになったことでも有名です。

◎猫が魅力的ですよね。

◎時代は1970年。人工冬眠が実用化されて、未来への片道旅行が流行っている時代です。主人公は幸福の絶頂でしたが、恋人や友人に裏切られて全てを失ってしまいます。そこで失意のまま主人公は猫とともに人口冬眠で30年後の未来へ行くことを選択します。途中で考えを改めて二人に復讐をしようとしますが、返り討ちに合い、そのまま冷凍睡眠で未来に送り込まれます。西暦2000年目覚めた主人公は、タイムマシンの存在を知り、2001年から1970年に跳ぶことに成功!製図機などの発明をし、会社を興します。助けてくれた夫妻にこれを託し、2001年に冷凍睡眠で戻って幸せを手に入れるというお話です。とてもロマンチックなので、読者に人気のある作品です。

●『SF飯』は、中央星域の大富豪の主人公は騙されて辺境の宇宙港へやってきます。それで出会ったのが食堂を再開させようとがんばるヒロインで、二人は食材不足の中、サイボーグや異星人に向けて料理を出していくというお話です。

●僕の中のSF一番は、小川一水の『第六大陸』です。これは近未来の月開発をテーマにした技術系SFです。タイトルは月を5大陸に続く(南極大陸に代わる)第六の大陸と位置付けたものです。時代は2025年、化石燃料が枯渇が深刻な問題となり海底にドーム都市が作られています。主人公は月に結婚式場をつくるという途方もない計画を立て、実施していく成長の物語です。

●私が一番好きなSFは、レイ・ブラッドべりの『火星年代記』です。SFといってもサイエンス・フィクションではなく、サイエンスファンタジーのような作品です。地球人の三度に渡る火星探索で地球人のウイルスが蔓延して火星人は死に絶え、そのあと次々と行われる地球人の火星への入植。そして核爆弾による地球の滅亡・・。好きなエピソードは2つあって、一つは先に入植した若夫婦が、押しかけてくるはずの地球人のために「ホットドック」をせっせと作ります。そんな時地球が爆発してなくなります。そこで若奥さんが、「オフシーズンになったわ」と一言言うのが効いています。そして最終話なのですが、家族で爆発前の地球から命からがら家庭用のロケットで火星にやってきた一家の男の子が父親に何度も問います。「ねぇ 火星人はどこにいるの?」あるとき父親は出かけた先の緑麗しい湖を覗きながら、「ごらん、これが火星人だよ」と自分たちの姿を指さします。しみじみと深く静寂を感じる良い終わり方だと思いました。

●『7回死んだ男』は同一人物が何度も殺され、そして蘇ります。殺される祖父を救おうと少年が立ち上がります。どうして殺人は防げないのか?に少年探偵が立ち向かいます。同じ一日を何度も繰り返すタイムリープものです。

●同じような設定で『リプレイ』という小説がありましたね。自分の人生に満足いかず、何度もやり直しをしますが、結局、一つがうまくいっても違う何ががうまくいかず、主人公の望みは果たせないというお話でした。

●北村薫の『スキップ』は時間が飛んでしまうタイムトラベルものです。主人公は17歳の女子高生で、ある日学校から帰り、午睡の夢から目覚めるとそこは25年後、自分は42歳の子持ちの中年女になっていたというお話です。この本の中では物理的な説明は何もありません。ほんとうに時間が飛んだのか、それとも主人公が記憶を失っているだけなのか、えてしてこういう小説には救いがあって、主人公は苦労の末に元に戻れるとかあるのですがこれは残酷すぎるほど救いがありません。経験するはずだった受験、大学生活、初恋、就職、恋愛、結婚、教師としての毎日、そのすべての記憶がないのです。それなのにこれからを生きていくしかないのです。主人公がすべてを受けいれて前向きにこれからを生きていこうとする姿に最後は励まされます。

●『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は壊れかけのロボットとの出会いが止まっていた男の人生を再び動かし始めるという物語です。妻にも見限られたダメ中年男とレトロなロボットの珍道中が面白いです。

●カズオ・イシグロは読みましょう。有名なのは『わたしを離さないで』ですが、これはジャンプ連載のコミック『約束のネバーランド』の元ネタとして注目を浴びています。そうでなくても名作です。

●カズオ・イシグロの『忘れられた巨人』はイングランドと呼ばれるブリテン人の世界にアングロサクソン人が侵入してきた時代で、新入するサクソン人も興亡を広げたというアーサー王が亡くなった後の話です。ブリテン人の老夫婦が旅をする話でファンタジーと不思議さの中にある小説です。

●初めて人に薦められて東野圭吾の『容疑者Xの献身』を読みました。めちゃめちゃおもしろかったです。映画では削られた原作エピソードも多いということで、原作を読むしかないですよね。

◎ガリレオシリーズの中でも秀逸の出来だと思います。でもこのシリ-ズ、最初は湯川先生は小太りでそんなにイイ男ではなかったのに、作品が進むうちに人物描写が「福山」に寄って言ったというのは有名です。

●『小倉百人一首』を1句づつ覚えていったことがありますが、「人はいざ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほいける」・・・他の人は知らないけれど、昔なじみのこの里では梅の花だけがかつてと同じいい匂いをさせていますよ・・・という意味で、気に入っています。

◎春の歌で心惹かれるのは「君がため春の野に出て若菜摘む若衣でに雪は降りつつ」ですね。

●令和で万葉集が注目されましたが、舒明天皇の国見の歌で「大和には群山あれどとりよろふ天の香具山のぼりたち國見をすれば国原は煙立ち立つ海原は鴎立ち立つ美し国ぞ蜻蛉島大和の国は」というのがあり、大和の美しさを描写した心に残る歌です。あとは「恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くして長くと思はば」は「恋焦がれてようやくお会いしたときだけでもせめて愛しい言葉のありったけを言い尽くして聞かせてください。二人の間が長く続くようにとお思いならば」という愛の歌です。百人一首でも「逢いみての」などの恋の歌が好きです。

●高校生によって編まれた短歌ですが「問十二 夜空の青を微分せよ 街の明かりは無視してもよい」は美しい短歌だと思います。夜空を微分というのは、現代天文学の基礎となるもので、単にロマンチックなだけの歌ではないと思います。

さすがOBの方々、ここにまとめられた以外の話題もたくさんありましたが、秀逸なひとときでした。次回はぜひ在校生に語りつくしてもらえるようにがんばります。