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2020.12.08

2020年10月のブックカフェレポート

ニュース

秋セメスタ開講に伴って、10月はリモートでブックカフェを開催しました。
残念ながら2回のみの開催となりましたが、キャンパス横断もしながら読んだ本や好きな本を語る時間となりました

10月22日(木)OIC10月27日(火)衣笠

2020年10月22日(木)OICリモートブックカフェ

雨の降るちょっと肌寒い日の夕方、OICリモートブックカフェが開催されました。
とはいえ、今日の参加者はキャンパスを横断し、文学部4回生の方、情報理工学部2回生の方、総合心理学部3回生の方、政策科学部2回生の方でした。

こんな本が話題になりました

●森博嗣の『すべてがFになる』を読みました。第1回メフィスト賞の受賞作品です。ある島に向かった犀川たち研究室の面々は、そこにある研究所を訪ねます。そこでウェディングドレスを着て手足が切り取られた死体を発見します。この殺人の謎はいったい?という物語です。

◎Fというのは、16進法でもっとも大きい数字のことですよね。ぜんぜん理解できません。

◎天才・真賀田四季は殺人犯でグロテスクですが、なんか魅力があります。

◎みなさんはどこで仕掛けがわかりましたか?私は最後に「え~!」と驚きました。

◎私は四季の妹が出てきたところでこれはもしかしたら・・・?と思いました。

●今村夏子の『星の子』を読みました。病弱な女の子が主人公なのですが、彼女を助けるために両親はあやしい宗教のとりこになります。この宗教は霊水を崇めるもので、この水に頭を浸したりします。親の描かれ方がどうかな?と思ったのですが、この宗教は星を見ることがステップアップの1つになっていて、両親は少女を連れて流れ星を見に出かけます。気のない少女は星に関心を示しませんが、両親は共にちゃんと見るようにいいます。少女が寒がって帰りたがっても耳を貸しません。この小説は女の子の気持ちを真正面から書いていません。書かないことで描き出そうとしているものがあるような気がします。揺れる現実そのものを味わる本です。

●小野不由美の『十二国記』を読み始めました。まだ最初のシリーズだけなのですが、女の子が知らないころに連れ去られて試練を課されます。帰りたいと言っても「帰って欲しいと待つものはいない。それは自分に対する幻想だ」というところが怖かったです。

◎我が家では中学生になったら『十二国記』を読め!という掟があって、読みました。ファンタジーはその世界観に入り込めないとつらいですよね。

◎体力が落ちて来て、長い物語にチャレンジする気力が薄れています。

●重松清が好きです。なかでも『青い鳥』が大好きです。これは連作短編集なのですが、吃音の非常勤講師の先生が、様々な学校で様々な子どもたちと出会っていきます。あるお話では虐待されてきた男の子へ「きみのことを名字でなくて、ちゃんと呼ぶ」と宣言します。「人間は大人になる前に下の名前でたくさん呼ばれないといけない。呼んでくれる人がそばにいなきゃいけないんだ」というような泣かせる話が詰まっています。

◎僕は『きみのともだち』が好きです。クラスの中にいる様々なやつ、人を信じないやつ、人気者なやつなどなど。ともだちの意味を探る連作長編小説です。

●『流星ワゴン』は泣けます。すべてを失った37歳男子。ある時、ワゴンに乗った親子連れと出会います。事故で死んでしまった親子に誘われて、人生の分岐点に戻っていく主人公。彼は人生を取り戻せるのかが注目です。

●『疾走』では、西日本にある地方都市で「浜」「沖」の2つの集落に別れ、仲たがいをしていました。とてもグロテスクな物語です。重松清なのに最後まで重たいままで終わります。読むのがつらいです。

●市川拓司が好きです。いちばん好きなのは『ねぇ委員長』です。3作の短編集ですが、どれも恋の物語で、問題を抱えつつもそれに負けることなく立ち向かうとか、それを支える人がいるとか、最高です。不器用だけど純粋で、恋を自覚し始めた高校生たちの物語です。

◎市川拓司といえば『いま、会いにゆきます』で一世を風靡しました。妻を亡くしてひとり息子と暮らす主人公。妻が残した「雨の季節にまた戻ってくるから」の言葉。その通りに1年後、雨の季節に死んでしまった妻が二人の前にすべての記憶をなくして現れます・・。そのわけを知ったとき泣けます。

●『図書館戦争』はキャラ読みができる本です。キャラの動きがいいです。この本の登場人物の中では小牧教官が好きです。厳しいところもありなので、マリエちゃんとのいちゃいちゃ・・・そのギャップに萌えます。有川浩さんが大好きですが、初めて読む人にお薦めする場合は短編だし『阪急電車』がいいと思います。心に残るエピソードが満載です。

◎僕は『レインツリーの国』です。男の子と女の子が出会う話ですが、障害者が主人公なので考えさせられることがたくさんあります。たとえば女の子は耳が聞こえないことを隠して男の子と会うのですが、一緒に駆けこんだエレベーターで重量オーバーのブザーが鳴ります。それなのにまったく動かない彼女の姿に「自分が降りるべきなのに他の人が降りて当然ってかよ」と誤解を受けてしまいます。そうしたことを乗り越えての純愛物語です。

◎私は『県庁おもてなし課』が心に残っています。高知県に関わることになった作家があまりにも考えられない県庁のダメぶりに、担当者を叱咤激励して観光地として変わっていくというサクセスものです。

◎有川さんの本で一番大学生に薦めたいのは『キケン』です。これは大学生の今、読まないと価値がありません。はじける青春を感じることができます。ちょっとやりすぎですが、どのエピソードも共感できます。そして最後は泣けます。

●『繊細さんの本』を読みました。これはHSPの専門カウンセラーである武田さんが書いた本ですが、HSPというのはハイリー・センシティブ・パーソンのことで、人一倍繊細な人という意味です。こういう人は気を使いすぎて気疲れをして、生きづらいと感じています。その診断テストがあるのですが、僕もそうだなと自覚しています。そして周りにも多いと思います。今の話題の本ですね。

●さっきの『キケン』じゃないですが、はじける青春といえば万城目学の『鴨川ホルモー』もそうです。ホルモーという謎の競技(鬼や式神が出て来ます)で京都の4大学の学生が争うのですが、陰陽道を取り入れた奇抜な設定といい、テンポのよい作風といい、そしてキャラだちしているところといい、おススメです。

●私がお薦めしたいのは吉田秋生の『バナナフィッシュ』です。ダウンタウンのストリートキッズのボスとして君臨するアッシュが、ある人の指示で「バナナフィッシュ」の謎解きをするところから物語は始まります。そして日本人大学生との交流も素敵です。そこには信頼があります。アッシュは過酷な人生の中でも負けずに生きて来て、自分の場所を作ってきたのに、最後はとても悲しいです。泣けました。

●『フルーツバスケット』は読むべき本だと思います。家族の問題とか、いじめの問題とか、あますことなく描かれています。

●『スケットダンス』は、ハチャメチャでアホなマンガですが、その中に深い理由というか事情を秘めていて、ギャグとシリアスのバランスがよい作品です。

●『スパイ×ファミリー』という本なのですが、主人公は天才スパイで、あるミッションを達成するために偽の家族をしつらえて学校に潜入します。ホームコメディをコンセプトとしており、偽装家族が家族としての日常を送るために、日々のトラブルと奮闘しておもしろいです。

●『オオカミ王子の言うとおり』をはじめ、最近の少女マンガって俺様系のお話が多くありません?どうかと思います??

●子供の頃から読んでいる美内すずえの『ガラスの仮面』ですが、作者が生きているうちに終わってくれるのか心配です。作者は終わり方を完全に間違えていると思います。作品に思い入れがあるがゆえに書き込みたくて仕方がないのでしょう。そこをシンプルに仕上げて余韻を残すとか、別の短編で描いていくとかが良かったのではと思います。

●『エロイカより愛をこめて』は、エロイカという泥棒とNATOのドイツ人将校であるエーベルバッハ少佐を軸に、冷戦下の世界でバトルをしているのですが、ロシアの秘密組織のスパイのコードネームが小熊のミーシャ(知られざる1980年モスクワオリンピックのマスコット)とか、エロイカの会計士がジェイムズくんという恐ろしいほどのケチだとか、ギャグとシリアスの間に笑いがあふれている作品です。

●『図書館の主』は数話で、児童書や童話をテーマとして、そのエピソードが語られ物語が進む軸になっているという作品です。最初は新美南吉が出てきます。

●自分の青春的コミックは、高橋留美子の『めぞん一刻』です。ヘタレで報われない浪人生の五代くんは、下宿屋の管理人である未亡人に一目惚れします。思いっきりキャラたちまくり!の他の下宿人や、恋のライバルや他の女の子が入れ替わり立ち替わりするドタバタラブコメです。でも真面目でせつないところもあり、最後に五代くんと結ばれた管理人さんが「いつの頃からかわからないけれどずっと好きだった」という場面が大好きです。

◎高橋留美子のラブコメエンタテイメントの一番は『らんま1/2』だと思います。水をかぶると女の子になっちゃうところや、あれやこれやと詰め込んだところが素敵です。

◎みなさん、萩尾望都って知っていますか?(知らな~いの声)今の少女マンガの直接の始祖とも言える人ですが、最初の出世作に『ポーの一族』というのがあります。これは貴族の愛人の子であるエドガーとメリーベルが森に捨てられて、バンパネラ(吸血鬼)に育てられます。ある時、養い親の正体を知って、エドガーはまだ14歳なのに吸血鬼の仲間にされます。その後、妹を失い、孤独な男の子アランと出会い、2人で200年の時をさすらいながら生きていきます。彼の血縁の人々や、周りの人々とのエピソードが面白いです。何より主人公がキレイ。絵がとてもうまいのです。ため息が出ます・・・

●『11人いる!』はSF少女マンガの傑作です。宇宙大学の受験生たちが集められて最終試験に臨みます。10人の受験生たちが様々な場所で、ある期間過ごすことを求められます。主人公のタグのチームは、ある宇宙船で過ごすことになったのですが、宇宙船に入って自己紹介をしょうとしたとたん、11人いることに気が付きます。誰が異分子なのか、疑心暗鬼の中で物語が進みます。様々な星域からやってきた人種の表現がおもしろいです。読んで損はありません。

●この間、BKCの方から熱心に進められていた『アルジャーノンに花束を』は読みましたか?(まだで~すの声)翻訳ものは読みにくいものもありますが、これはそんなことありません。特にアルジャーノンの日本語訳は原作を越えていると思います。ぜひよろしくね。

●『ベイスターズ』というコミックですが、これはオオカミが主人公です。彼らは肉食ですが、ふだんは薬で肉食の欲を抑えているのに、あるとき草食動物を食べてしまいます。本来の姿が出てしまい、肉食獣・草食獣があいまって戦々恐々となります。そんな中オオカミは、草食獣のうさぎに恋をしてしまいます。さぁどうなっていくのでしょうか?

●『博士の愛した数式』なのですが、博士の記憶が30分しかもたないということは、どういうことなのか考えてしまいます。最近起こったことはすべてが初めて、毎日来る家政婦さんと知り合いになることはなく、いつも「初めまして」です。これはすごく怖いことだと思います。いつも自分は覚えていない、知らないということを自覚して生きることは過酷です。そんな中、数式がすべてをつなげる助けになります。人とは何かを色濃く考えさせられます。

●恩田陸は、ホラーミステリーでデビューしたはずなのに『夜のピクニック』が出世作です。高校生の女の子が関わりのある男の子とのよんどころない関係をなぞらえ、変化させていくところが力強いです。

●『Q&A』は語り手がいません。登場人物の視点で語られていきます。一人の語りではこうだと感じられた世界が、次の視点で語られると違ってきてしまいます。優しそうな人も違った目でがてしまうようになります。それぞれの章でそれぞれ殺人が起こりますが、次の章ではその人は生きていて別の人が殺されます。Q&Aだけの文章で何かが解き明かされるのか面白いです。

●『蜜蜂と遠雷』は大傑作です。クラシックが全面に出されて迫力があります。主要人物の4人はそれぞれの立場からコンテストを受けますが、その背景や音楽の才能の現れ方など繊細な描写に驚きます。僕はクラシックが好きで、特にベートーベンが好きなのですが、1万人の第九に参加して充実感を覚えました。ベートーベンは他の作曲家と比べて精神性が深いというところが魅力的です。

あっという間の2時間でした。世の中にはたくさんの本がありますね。自分のお気に入りが、このブックカフェを通して見つけてもらえたら嬉しいです。

2020年10月27日(火)衣笠ブックカフェレポート

良く晴れた明るい日の夕方、衣笠リモートブックカフェが開催されました。
今日の参加者は、産業社会学部2回生の方、総合心理学部3回生の方、文学部4回生の方、それから卒業生の方が参加してくれました。

こんな本が話題になりました

●森博嗣が好きです。やはり『すべてがFになる』が一番だと思います。謎が謎を呼び、伏線が伏線を呼び、最後に回収されるのが快感です。

●京極夏彦は興味がありますが、あまりにも長い作品が多いので、手を出しかねています。

◎短めでお薦めなのは『幽談』です。これは本当に怖いものを知りたいある男が、本当に怖いものを知っているという男の屋敷を訪ねます。果たして本当に怖いものは何なのか?というお話です。ホラーなのですが不思議なテイストですし、結論も独自な感じです。何より読後感がとても良いです。

◎京極夏彦の文体が好きです。現代語っぽくなく古めかしい言葉遣いですが、それが作品世界の彩りを決めています。

●恩田陸の『夏の名残りの薔薇』では、三姉妹がパーティを開きます。この物語は視点の人物を変えながら進みます。それぞれ違う事実を持っています。三姉妹は頭の中でリアルに殺人を犯しますが、それが現実なのか空想なのかわからなくなってきます。パラレルワールド?と思えるほど浮遊する現実があります。

◎『夜のピクニック』は、ただただ歩く中で人々の思いが交差します。希望を感じられるラストが良いと思います。

◎『蜜蜂と遠雷』は物語の中から音楽が流れてきます。ハードなコンテストの中身を一瞬一瞬切り取って、登場人物を色濃く浮かび上がらせています。傑作ですね。

◎この作品は成功例ですが、恩田陸はたまに風呂敷を広げすぎてまったく回収できず、広げっぱなしになっている作品がけっこうあります・・・。

◎私も傑作と駄作の差が大きい作家だと思っていました。設定はいいのに広げすぎて・・という作家は、私にとっては松本零士です。『銀河鉄道999』とか。でもとても惹かれて心に残っている作品です。謎の女・メーテルが魅力的です。ヤマトでのイスカンダルのスターシャも双子のように似ています。

●辻村深月で一番お薦めしたいのは、『僕のメジャースプーン』です。主人公の小学生が賢すぎてスゴいです。罪を犯した犯人に対して、罰を与えるべきか考えているところが鬼気迫ってコワイです。人よりもちょっと能力があって、出来のいい子なのに、ある事件をきっかけにダークに変わっていきます。それは守りたいものがあるからです。小学生版「罪と罰」が描かれた読み応えのある一冊です。一度読んでみてください。

●辻村深月といえば『凍りのくじら』が良いです。藤子不二雄のいうSFとは「ちょっと不思議」のこと。それになぞらえて主人公の女子高校生は、まわりの人を「少し不安」「少し不満」と言い、自分は「少し不在」と語る。元彼、病気の母、行方不明の父、やるせない環境の主人公は周りに合わせて生きてきた。だがそれも追い込まれてきている。ドラえもんのオマージュが満載の少し不思議な物語です。

◎辻村深月は、デビュー作の『冷たい校舎の時は止まる』がメフィスト賞を取っています。この作品ができた時にやっと自分の名刺代わりの作品ができた、と言っていました。学園のミステリーものなのですが、学校の中になぜか閉じ込められてそれを解決しょうとする様子を描いています。私は登場人物が多いので迷わないように、人物名をフルネームで書いていったらどうしてもフルネームにならない人物がいて、途中で仕掛けがわかっちゃいました!

●『漱石先生の事件簿』は『吾輩は猫である』のオマージュ的咋品です。漱石先生の家で書生としてくらすことになった僕。先生はとんだ変人で癪癇持ち。抱腹絶倒の日常系連作ミステリーです。

◎元ネタの『吾輩は猫である』は長すぎて、読みたいけれど進んでいません・・・。

◎これは新聞連載で一斉を風靡したということですから明治の読者は教養があったのかも。

●やはり柳広司と言えば『ジョーカーゲーム』シリーズです。飛び抜けて面白いし、主人公がメチャメチャかっこいいです。スタイリッシュな存在です。でも最初の2冊はで出てくるスパイたちがいろいろやり遂げて、やった~という気分で読んでいましたが、終わり2巻になると失敗してうまくいかない話もできます。それは戦争末期の日本の様子が色濃く出ているのかもしれませんね。情報をあげているのに採用されないとか。

●『准教授・高槻彰良の推察』シリーズはお薦めです。民俗学をベースに都市伝説や怪談の謎解きをしていきます。

●私の伊坂体験は『ガソリン生活』でした。小学校の頃なので記憶があったりなかったりですが、交通事故で死んだ女優をある兄弟が事故の直前に車に乗せていた。果たして事件の真相は?というお話です。この本のれっきとした主人公は兄弟の愛車、緑のデミオです。

●僕は伊坂では『オー!ファーザー』です。父親が4人で、しかもみんな一緒に仲良く暮らしているというのがすごいです。

●私は『グラスポッパー』を始めとする殺し屋のシリーズが好きです。くじらとかスズキとか何人かの登場人物がそれぞれ登場して、それが一つの大きな物語につながっていきます。粋な感じの本です。

●『アヒルと鴨のコインロッカー』も面白いです。時間軸の違う物語が一緒に語られるのですが、その中で、留学生が日本人を語っているところがあって、映像化されたときどう描くんだろうと思ったら、私自身も騙されてしまい、すごいなぁと思いました。

●森見登美彦の原点的作品『四畳半神話体系』ですが、これはパラレルワールドのお話です。森見さんの世界は、現実なのか、幻想なのかよくわからない魅力があります。

◎いちばんお気に入りなのは『有頂天家族』です。京都にはあんな狸がいるように思えます。キャラの濃い兄弟たちもいるいる!と思います。おかあさんが宝塚好きとか、ちょっとした表現も笑えます。

◎『熱帯』は最近の作品ですが、今までのカラーとは違い、大人しか出てきません。ある本をめぐって熱烈に探索する物語です。いろいろ不思議なこともあって、解釈はいろいろできるのですが、ある読書会で森見さんが「読者がどのように読んでもらっても、これはこういう解釈だよね、と考えてもらってもかまいません。世に出た本は、本は読者のものですから」と言っていました。なんだか格好良いですね。

●ゼミに使っている本なのですが『仕事の未来』という本を読みました。人間の出来る仕事の幅や、AIの登場によってどのように変わるのかなど細かく解説されていて、読みやすかったです。ただ最後のところで、どのように仕事につくべきか、仕事とは何か、のところでさら~っと語って終わりで・・・そこをもっと書いてもらいたかったです。

◎『自動人形の城』という本はAIの限界性について書いた本です。ある命令をこなすときに単純にそれだけを実行する、その次のことなど考えない、配慮できないことが挙げられています。確かにAIは将棋などルールが固く決まっている分野はかなりの実力を発揮しますが、ルールがあいまいでその時次第のゲームなどは勝ち抜けなかったりします。AIの優位性も弱点もわかって、使いこなすのが人間の役割のような気がします。

●横溝正史が好きです。古い表現ですが、それが過去の因習に取らわれた舞台設定とあいまって、おどろおどろの世界を味わえるのが快感です。

●僕は横溝より江戸川乱歩の方を読みます。『屋根裏の散歩者』は明智小五郎シリーズの代表作として有名な作品です。ある学校を出ても定職につかず、何事にも興味がわかず、退屈な日々を送っていた男が、素人探偵・明智と出会ったことで「犯罪」に興味をもち、殺人を犯してしまうお話です。

◎乱歩と言えば『人間椅子』ですよね。ある女性作家に届いた一通のファンレター。家具職人である差出人は、ある時、人間が一人入れるほどの空間を持った椅子を作成します。そんな椅子が自分の家にあることを知らされて主人公は動揺します。それからどうなるのか・・・。とてもよくできた短編です。最後にあっと驚きます。

●ホラーですが、怖いという感覚が日本と世界ではまったく違うように思います。日本は柳の下で手を前に出して「うらめしや~」というようなイメージですが、例えばストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』を読むと違います。吸血鬼が蝙蝠になって夜空を飛ぶとき、冴え冴えとした冷たい夜の空気感の中にこの世のものとは思われない怖いものが潜んでいるような感覚を覚えてぞっとするような・・。そんなしんしんとした怖さが描かれているような気がします。

●『神様のカルテ』ですが、365日24時間救急医療を受け付けるということは、コンビニの環境で医者をやっているようなものです。人を救うというのは大事な仕事です。主人公が働いているのが地方病院だからこそ、大学病院が受け入れない治らない患者も受け入れるし、看取ってもらえる場所です。ただ書かれているのは理想とも言える姿です。人間性がキーとなる職場です。だから憧れます。

●作者の夏川さんは漱石好きですが、『草枕』についてこう言っています。「あまりお勧めしない」。多岐に渡って芸術論が書かれていて、小説とは別世界のものです。

◎僕は漱石の中では『三四郎』が好きです。1回生の時、授業の課題で出たことをきっかけに読みました。九州から出てきた若い男が東京大学に入り、人の多さに辟易しながらも様々な人物と出会い、様々な体験をする物語です。

◎私は『それから』が好きです。30にもなって健康なのに働きもせず、父と兄のお金で悠々自適の生活を送る男が主人公です。書生も雇い、朝にはトーストと紅茶を嗜むような生活をしています。その男が、あるとき自分の友人の妻となった女に思いを寄せ、奪い取ります。友人からは絶交、父と兄からは勘当され主人公は一文無しです。今後の二人のそれからはどうなるのか心配になる終わり方です。

●いちばん有名な『こころ』は授業で一部分だけを読むに留まっています。

◎先生がなぜそんな過去のことに逡巡するのかわかりません。同時に同じ人を好きになることはままありますし、出し抜くことだって日常です。やはり先生はKの気性や人間性を知り抜いていて、「精神的に向上心のないものはばかだ」などと精神的に追い込んでいたことを自覚していたからとしか思えません。

◎『図書館の神様』という本があるのですが、その中で『こころ』を読む時間がありました。それにつられて『こころ』を全部読みました。だからといって何を感じるでもありませんでしたが・・・。

◎先生の遺書がカバンに入らないくらい長くなったのは。これが新聞小説で、次に書く作家がなかなか書けなかったので、あれほどの量になったという話があります。その書けなかった作家とは谷崎潤一郎です。(ありがちですね~)

●森鴎外の『舞姫』なのですが、あんなの教科書に載せていいと思いますか!?男としてダメな奴の物語ですよー。文語体で書いてごまかしてはいますが・・。

◎同意します!それより『春琴抄』とかを載せてほしいです。

◎鴎外の娘で森茉莉というのがいるのですが、これがお転婆で結婚した先でも落ち着かず2回離婚を繰り返す有様ですが、50過ぎて書いたエッセイがとても極上で、みんなに知ってもらいたいです。『贅沢貧乏』は彼女の一級品の感性を楽しめます。

●谷崎潤一郎の『春琴抄』を読みました。三味線の師匠の春琴と、献身的に師匠を支える丁稚・佐助の物語です。二人の被虐的な関係を描いた耽美的な世界を描いています。

◎私は谷崎だったら『細雪』が好きです。大阪船場の大店の四姉妹が織りなす物語で、昭和11年から物語は始まります。上流階級の春は花見、夏は蛍、秋は紅葉狩りといった優雅な中に、また何度見合いしても決まらない三女や四女の恋愛騒動を描きながら、戦争に向かっていく時代を描いています。

●太宰治は『走れメロス』が良いですよね。友情を感じます。でも思わず森見版を思い出して笑っています。

◎『人間失格』はダメ人間の話ですよね。いっさいが通り過ぎていったら、もうそれでいのか!と突っ込みたくなります。

◎『斜陽』も良いですよ。戦後、旧体制が変わっていく中で、貴族のお母さまが豆のスウプをスプーンをうまく使ってひらりひらりと飲む描写があるのですが、これだけで失われようとしている時代が表現できていて凄い!と思いました。それに太宰は文章がうまいです。そしてリズムがとても良いです。

●『ワールドトリガー』というコミックは、異世界からの侵略者と防衛組織との闘いを描くSFアクションです。とても面白いです。絵もきれいだし、いつも見えるところに並べて読み返しています。

●『性別「モナリザ」の君へ』の世界は、生まれたときは性別がなく、12歳くらいでそれぞれ性分化が起きるところです。幼なじみの2人はそれぞれ女性と男性に変わっていったのに、相変わらず変化のない主人公は2人から告白されたりするけれど、性的欲求もなく、恋愛感情を持てないまま過ごしてしまう物語です。

●『ゆびさきと恋々』は絵や雰囲気がきれいで優しいコミックです。聴覚障害の女の子と世界を旅するのが好きな男の子の物語です。

●『トーマの心臓』はキリスト教をベースにした学園のお話です。あるとき寄宿生の学生が死んで、舎監をやっている学生は自分に向けられた手紙を読んで悩みます。そんなとき死んだ学生とそっくりな転校生が現れます。果たして・・・?というお話ですが、とても絵がうまくてきれい。ドイツ風の異国情緒が味わえる、著者の萩尾望都が波に乗っているときの傑作です。

●『王国の子』はエリザベス一世の「影武者」として生きる主人公を中心に描かれています。恐ろしいことにエリザベス一世の姉や弟、父にもみんな影武者がいます。絵もキレイだし設定の妙もあって、ゼッタイ読んで損をしない作品です。

今回も無事に語り合いが終了しました。11月も3回開催します。みなさん、いらしてみてくださいね。