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2021.03.15

2021年1月26日リモートブックカフェレポート

ニュース

1月は1日程だけの開催となりましたが、リモートのおかげでキャンパス横断で8名の方が参加してくれました。
今回はテーマが「絵本・児童書」。皆さんも読んだことのある本が紹介されていませんか?

※2020年度の開催は1月で終了しました。
新年度の開催は現在未定です。決まり次第、店頭等でご案内いたします。

2021年1月26日リモートブックカフェレポート

とても冷え込んだ日の夕方、ブックカフェが開催されました。テーマは「絵本・児童書」で、思い出に残る会となりました。本日の参加者は、総合心理学部3回生の方お二人、産業社会学部2回生の方がお二人、政策科学部3回生の方、理工学部院の方、文学部3回生の方、4回生の方の8名の参加でした。

こんな本が話題になりました

●はやみねかおるの『都会(まち)のトム・ソーヤー』は、中学生2人が主人公のお話です。 一人はおばあちゃん子で、おばあちゃんの知恵を使いこなしています。もう一人は大富豪の御曹司で、とても賢く、2人でゲームを作ることを目指しています。でも物語の中では全然ゲームを作らなくて、それよりも5人のライバルたちとの闘いがメインとなっています。

●あまんきみこの『車のいろは空のいろ』というタクシーの運転手さんが主人公の連作シリーズがあるのですが、その中の「白いぼうし」というお話があります。6月の暑い日、運転手さんは田舎から届いた「夏みかん」を車に積んで運転している途中で、道路に白い帽子が落ちているのを見つけました。手に取ってみると、ふわっと何かが飛んでいきます。モンシロチョウです。小さな男の子が捕まえて帽子をかぶせておいたのでしょう。困った運転手さんは、夏みかんを置いてそこに帽子をかぶせます。男の子が母親を連れて戻って来ています。車を走らせた運転手さんは「帽子を取ったら蝶ではなくて夏みかんを発見してどんなに驚くだろう」とほほ笑むというお話です。可愛らしくて爽やかで、とても素敵な物語です。

●『らくだい魔女はプリンセス』は魔女のお話で、イメージとしてはライトノベルに近い感じです。内容は魔女フウカの冒険ファンタジーですが、いろいろな描写がとてもわかりやすいので、すぐこの物語の世界観に親しめます。

●私が大好きなのは『ぐりとぐら』です。お料理すること、食べることが何より好きな二匹の野ねずみが主人公で、森で卵を見つけたところから物語が始まります。なにを作ろうか悩んで、カステラを作ることにします。おいしい匂いが森を包んで動物たちが集まってきます。とても可愛らしい話です。

●これを聞いて『しろくまちゃんのほっとけーき』を思い出しました。まあるくて大きくてふわっふわのほっとけーき。焼きたてほかほかのほっとけーきが本当においしそうで、わくわくします。作る喜びと、おいしいを共有する喜びがいっぱい溢れていて心に沁みます。

●『ダレンシャン』はダークファンタジーと言えますが、とても面白くて夢中になって読みました。命が危なくて選択肢もないままヴァンパイアになってしまった主人公。心は人間なのに人の血を吸う吸血鬼になったことに悩みます。細かい世界観づくりとキャラが立っているところが魅力です。

●ズッコケ三人組のシリーズはすべて読みました。3人の小学生がトラブルに巻き込まれてしまいます。3人は決して賢くはないのですが、力をあわせて解決していきます。安心できるところがすごくいいです。

●昔、自分で選んで買ってもらった本ですが、すごくヒット作でした。『いやいやえん』というのですが、主人公の男の子がきかんぼうで、なんでも「いやいや」と言っておかあさんや保育園の先生を困らせています。そこでなんでもいやいやが通る保育園に出されてしまいます。そこで男の子は「赤なんて女の子の色だからイヤー」と言います。すると赤い消防車で遊ぼうと手をだしても「赤はだめだったわね」と触らせてもらえません。その日のおやつはとてもおいしそうな真っ赤なりんごでした。でも「赤はだめだったわね」と食べさせてもらえません。ほかにも山登りとかいろいろエピソードがあってとても面白いです。

●『ちいちゃんのかげおくり』です。戦時中の物語です。お父さんとお母さんとお兄ちゃんと一緒に暮らすちぃちゃんはお父さんから「かげおくり」という遊びを習います。手を広げて空を見つめているとその姿が空に映るという遊びです。お父さんが出征したある日、空襲で逃げたちぃちゃんは、お母さんとお兄ちゃんと離れ離れになってしまいます。声をかけてくれる大人もいたのですが、ちぃちゃんは焼け落ちた家の壊れた防空壕に留まって動きません。皆を待っているのです。お兄ちゃんと一緒にやっていた「かげおくり」を何度も続けます。ある時「皆 そこにいたのね」と、空に三人の姿が映って見えたのです。それがちぃちゃんの最後だったというお話です。悲しくて仕方ありません。

●僕は『モチモチの木」が大すきです。少年は夜はお手洗いにいけないほどの弱虫で、特に「モチモチの木」と名付けたトチの木が怖いのでした。でもある晩、ジイサマが腹痛で苦しんでいました。お医者様を連れてくるために夜道に飛び出した少年・・・。無事にジイサマを助けた少年の眼には、モチモチの木に雪明かりが灯り、勇気のある者だけが見られるという「山の神の祭り」を見ることができ、でも、ジイサマが治ったら元の臆病に戻りましたとさ・・・というお話です。信じられないくらい前からのロングセラーの本です。

●ここで中島敦を出すのも変なのですが『山月記』です。高校の教科書に出ていたので誰もが知っている本だと思います。「尊大な羞恥心」のくだりはとても有名ですが、発狂して虎になってしまうところは震えてしまいます。今でいうと「自意識の高いこじらせ男子」ですよね。完全に虎になって人間の心を失えば幸せなのか?などいろいろな問いがこの物語には隠されています。

●『ずっとずっと大好きだよ』は、少年とだんだん弱っていく犬を描いています。少年は何度も何度も犬に寄りって「大好きだよ」と語りかけます。そこがとても良いです。

●読んでいてとても泣けるのは『ごんきつね』です。最後に鉄砲で撃たれた時「ごん、お前だったのか」というところで泣きます。もう取りもどせないという喪失感でいっぱいになります。

●東山魁夷は、教科書に載っていた『泉に聴く』という文章を読んだのが最初のきっかけで、青い森の中に静かにたたずむ白い馬の絵が印象的でした。この本は東山魁夷の絵と文章のコラボ作品です。とても心に残っています。

●『東京から来た女の子』は東京からきた女の子が見栄をはって嘘をついてしまう、そんな物語です。日々の様子が細かく描かれています。ラストがよくて感激しました。

●谷川俊太郎との出会いは文庫の詩集『空の青さをみつめていると』ですが、その中に「二十憶後光年の孤独」があって、「万有引力とは引き合う孤独の力である」というところに惹かれました。ピーナッツシリーズは、谷川俊太郎の訳でずっと読んでいました。チャーリー・ブラウンの呟く「ためいき」がとても哲学的でハマったのを覚えています。

●山田詠美の『晩年の子供』に収録されている「ひよこの眼」というお話。中学生の女の子が、転校生の瞳を見て「この目どこかで見たことがある」と既視感を覚えます。それからとても気になって何回も見てしまいます。お互いに好きかもとなった時、家でうさぎを飼ってもらえない理由として母親から「あなたはかつて、夜店のひよこでさえ死なせたのに」と言われます。そこで「あの目はひよこの眼だ。死んでしまったひよこだ」と思い出すという回想型の物語です。

●こんな時に『舞姫』はどうかと思うのですが、これを高校の教科書に載せていいのか。
こんな男子、日本の恥ですよね。どうして教科書に載せるかな~。

●教科書に載せるかな~と思うのは、夏目漱石の『こころ』もそうです。たいがい先生の遺書のところしか載せていませんが、主人公が故郷に帰って騙されるとか全体を知らないと先生の遺書の意味も変わってくると思います。

●『夢十夜』は良いですよね。一番良いのは、第1話の「百年の恋」ですね。美しいです。第3話は子どもがだんだん重くなっていく・・・とかホラーですね。

●『注文の多い料理店』は、怖くて、それでいておかしみのある作品です。読み手の方は早くから料理店の意図がわかっているのに、食べられそうな主人公たちはなんだかのんびりさんに見えます。そのギャップが面白いです。

●『よだかの星』は切なくて、暗くて、思いに押しつぶされそうになるお話です。小学生に読ませて良いのかなって思います。

●『走れメロス』は太宰にしては明朗闊達な小説です。果たしてメロスは戻って来れるのかというドキドキ感はありますが、独裁者である王様を見ても、リアルな怖さはマックスではありません。太宰は最初の結婚した頃は精神状態が良かったようで、『富岳百景』の「富士には月見草がよく似合う」のくだりなど秀逸だと思います。

初めてのテーマ「絵本・児童書」でしたが、思いがけなく熱量が高く盛り上がりました!まだまだ語りたかったような面々でした。

別の日ですが、卒業する二人が挨拶に来てくれました。花束でご卒業のお祝いをしました。
社会人になっても読書を続けて欲しいです!