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2016年10月27日(木) BKCブックカフェレポート

肌寒くなった秋の午後、BKCブックカフェを開催いたしました。
今回の参加者は、理工学部2名、薬学部1名、生命科学部1名、経済学部1名の参加がありました。

こんな本が話題になりました

  • 『「イスラム国」最終戦争』はイラクはアメリカの爆撃を受けて大変なことになったときにイラクの難民を受け入れたのがシリアです。でもシリアは独裁政治の国だったのでいろいろ摩擦が生じてこれがイスラム国誕生のきっかけになりました。最近はリビアとか北アフリカにもイスラム国の勢力が拡がっていて心配です。
  • 『難民問題』もそうした現代社会のひずみを書いています。読むのはしんどいですね。
  • 『きつねのはなし』はユーモア&妄想小説の森見登美彦の変わったホラー小説です。京都の妖しさを描きながら、その怖い現象の謎解きをいっさいしないという物語です。現実世界と異界のボーダーが分からなくなります。
  • 『虐殺器官』は先ほどのシリア問題にも匹敵する近未来の出来事を描いています。どこか遠くの果てしない未来の話でないところが現実感を感じさせます。
  • 司馬遼太郎は歴史をあまりにも独自解釈しすぎです。でもそのおかげで坂本竜馬は国民的にアイドルにもなったし、『燃えよ剣』も土方歳三を人間的に描いて名作です。滅びの美学というか、滅びるものを最後まで書いているところがいいです。
    いうなれば歴史的エンタティメント小説です。
  • SFでいちばん好きな作品は『海を見る人』です。これは標高によって時間の流れる速度が違う世界の話です。山の上に住む男の子と海側の平地に住む女の子があるとき出会います。女の子はまた尋ねることを約束してわかれるのですが、男の子が2年たっても3年たっても会いに来てくれません。ようやく来てくれた時に、「なぜもっと早く来てくれなかったの?」と問うと不思議な顔をされます。女の子の時間は1週間しかたっていなかったのです。あるとき女の子が海に落ちてしまいますが、流される時間があまりにゆっくり過ぎて、山の上の男の子が老人になってもその様子を毎日見ているというせつない話です。
  • 『玩具修理者』は、ある女性と知り合った学者がどうしてもその人と会いたくて脳の手術をして時間の観念を変えたら会えると思い込んで手術を実行してしまいます。でも眠るたびに様々な過去や未来に飛ばされてしまうようになってしまうのです。悲劇ですね。

  • 『考えるヒント』は、例えば将棋の人口知能と人間の対決ですが、人口知能は常に勝つことを考えて、定石でないところから打つという方法を取ります。
    ロボットが心を持てるのかとか、人間がロボットのように完璧にどこまでいけるのかなど、もはや夢物語のSFでなく、現代社会の命題だと思います。
  • コンピュータやロボットは人間が作ったものなので、その限界や可能性について見極めたいという意思があるのではと思います。ムーアの法則というのがあるのですが、あと30年、2048年にはコンピュータが人間の性能を超えるといわれています。ロボットや自分を作る、増殖して発展していく現実もありなのかもしれません。
  • コミックの『からくりサーカス』は、自動人形の話です。兄の恋人を好きになった弟が彼女を連れて逃げるのですが、彼女が死んでしまいます。そこで弟は、彼女に似た人形をつくるのですが、どうしても人間の感情を理解できない。人形は笑うことができません。でも人間の命令を聞きたい人形は笑うことを自分に課すのです。そして・・。読んでみてください。
  • 寺田虎彦は、科学者ですが随筆がすこぶる面白いです。まず『柿の種』から読んで見てください。
  • 『十二国記』は、ファンタジーですが、中華系を基盤に作りこまれた世界が書かれているので、最初読み進めるのはしんどいですが、名作です。
  • 齋藤孝にはまっています。『孤独のチカラ』は本を読みたいと思ったきっかけの本です。最初は不遇な自分の過去を憂えているのですが、その後のしんどい時に何もやっていなくてあがいていた過去が価値となって自分を支えているとありました。
  • 『読書力』は読書をスポーツに例えて、反復運動として訓練することが読めるようになる早道だと書いています。
  • 『雑談力が上がる話し方』は、人との関係を円滑に進めるのは雑談力で、その引出しの蓄え方や一つの話題を通り一遍に扱うのではなく深める力・・。どんどん話を変えていく力は必要だと思いました。最近はSNSばやりで思考が水面的になって、深くはないけど広いつながりが形成されています。
  • 読書は深く下へ下へ行く作業ですよね。読み続ける体力と読める知性とがあれば、読み終えたときのカタルシスを味わえます。

  • 平野啓一郎さんの『私とは何か』はそれぞれ人間を2つ以上のコミュニティを持っていて、例えば学生だったら、大学にいる自分と高校の時の自分と違いがある、そうした2つのコミュニティに戸惑う自分について書いてあります。
  • 村上春樹はそのスタイリッシュな様子がどうしても好きになれません。
    『1Q84』を中学生の時に読んで以来読んでいません。翻訳ものやエッセイは楽しいのですが・・。
  • 伊坂幸太郎はお薦めです。大学生ならまず『砂漠』がお薦めです。文中に「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」という記載があります。
  • アドラーの『嫌われる勇気』は、すべての悩みは人間関係から始まる。続著の『幸せになる勇気』は宇部手の幸福は人間関係から端を発するという主張があります。そうだなぁと思います。アドラー心理学の読み方はここです。

今回も熱烈な本への愛情ほとばしる会話が続きました。
次回は11月24日(木)になりました。みなさんよかったらのぞいてみてくださいね。