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2017年5月30日(火)衣笠ブックカフェレポート

30度を超える夏日となった夕方、衣笠ブックカフェは開催されました。
今日の参加者は、産業社会学部2回生の方、文学部1回生、2回生、3回生、院生の方、そして法学部1回生の方が参加してくれました。就活などで参加ができない人も多かったですが、3人の方が初参加となりました。

こんな本が話題に出ました

  • ヘーゲルの伝記とナポレオンをからました小説を書きだくて模索しています。二人は1歳しか違わないんですよ。関わりがあったはずということで知らべていますが、むずかしいです。
  • 最近読んでいる西尾維新は、新作の『D坂の美少年』と『掟上今日子の裏表紙』です。
    この二つのシリーズは読みやすくて最初の西尾維新本として最適です。
  • 有川浩が好きです。『図書館戦争』から入りました、その中でも小牧教官の恋物語が書かれている「内乱」が好きです。派生した物語『レインツリーの国』も最初は単なるボーイズミーツガールの物語だと思っていたら、あんなに重たい物語とは思わなくて最後には泣いてしまいました、でも有川浩は総じてハッピーエンドですかっとする読後感なので大好きです。
  • 高校の頃はよくミステリーで綾辻行人と有栖川有栖を読んでいました。
    綾辻は汝叙述トリックが多くてギャグもなくて本格派です。有栖川は二人の火村が出てくるシリーズがあってギャグとか出てきます。

  • 谷崎潤一郎が好きです。『細雪』はきれいな物語で、春は花見、夏は蛍狩り、秋は紅葉狩りというあの戦争に向かう昭和11年の時代にブルジョワ生活が描かれています。
  • 『陰翳礼讃』では光と影のほのかなぼんやりとしている様子を日本の美として描いています。美的意識の強い人ですね。もともと東京の人で関東大震災をきっかけに関西に移住されましたが、マゾヒズムの世界を書く人で、女性に支配されることの喜びを描いたのが『痴人の愛』ですし、『春琴抄』においては究極の奉仕精神を描いています。
  • 谷崎潤一郎の特徴としては、つやっぽい文章で無駄の多いのに読ませるという魅力ですね。志賀直哉とか夏目漱石はシンプルな分かり易い文章を書きます。
  • この二人は漢文の素養があったからかもしれませんね、そのへんのところが文体に出ているのかもです。
  • 村上春樹の世界観はやはり変わっていて、書いていることはシンプルですが、海外分に訳した時、伝わるのかという心配があります。また漱石や春樹はたぶんにカフカの影響を受けているのではと思われます。『城』を読みましたが何も達成でいない物語でなんだこれ?って思ってしまいます。
  • カミュ、サルトル。カフカというのが、自分とはいったどういうものかを問う作品を世に送り出していますが、カミュも『ペスト』は、病気の存在が歴史を変えたこともあるかなと思い知らされますし、『異邦人』はわけもわからす殺人を行われ、わけもわからず刑罰が下っておしまいという不条理に満ちたもので、実存主義文学はわからんなという気持ちになります。海外では死神とは死をもたらす人ではなくて死そのものを意味します。そうした文化も関係あるのかもですね。

  • 村上龍の『半島を出でよ』を読みました。自分が九州出身なので知っている地名とか出てきてわくわくしました。北朝鮮に福岡が占領されてしまうという物語です。村上龍は、経済のことも語りますし、いろいろ露出が多い人ですが、面白い作家さんだと思います。『69シックスティナイン』のはじける青春の姿や『ラブ&ポップ』は女子高生の援助交際について書かれた本ですが、あのエヴァンゲリオンの庵野秀明が監督で、無名の仲間由紀恵も出ているという興味がわく作品です。
  • 遠藤周作の『沈黙』は、小説では救いのない内容なのですが、映画では、バテレンが死に際して日本人の妻がこっそり十字架をにぎらせてやって、ばれないまま火に焼かれるという終わり方をします。ちょっと救いがある気がしました。バッドエンドの方が印象にも残って苦しいですが、作品の価値を高めているような気もします。でもハッピーエンドをダメだとは言いたくありません。
  • 同じ遠藤の『海と毒薬』も戦争時代の日本軍の人体実験のことを書いた物語です。
    人間の罪について、追求されていますが読むのは苦しいです。そんな時笑える「狐狸庵先生」のエッセイを読みましょう。バランス取れます。
  • 太宰治の『人間失格』はバッドエンドだと思ったら、主人公は廃人になりますが、最後に知り合いのバーのマダムが「あの子は悪い子じゃなかった。天使のような子」という救いがあります。また最後の小説『グッドバイ』ですがあのはじけたような明るさはどこからくるのかと不思議になります。
  • 山田詠美の『僕は勉強ができない』はクラスのあぶれものであるけれど、主人公には受け入れられる場所があって、それが主人公を強くしているところがありました。
  • 今思い出しましたが、ルナールの『にんじん』も母親、兄、姉に毎日いじめられている主人公が一人だけ名付け親だけが自分を受け入れてくれるというところがあって、人間にはそういうところが本当に必要だと思いました。

  • サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』は主人公が退学するところから始まるのですが、このホールデンという主人公は、白髪が多くてこれが、こどもと大人の象徴と言えます。これはジョン・レノンも読んでいた名作です。僕はもちろん野崎孝訳が好きです。
  • 一人称の作品は夢野久作もほぼほぼそうですが、『ボヴァリー夫人』も一人称で書かれています。医師の妻が不倫と借金の末に自殺してしまう物語ですが、主人公の心情がよく伝わります。
  • 同じような印象の小説は『チャタレー夫人の恋人』ですね。日本では伊藤整の翻訳本が訴えられて裁判になったりしました。
  • 三島由紀夫は興味深い作家ですが、東京都知事候補と高級料亭のおかみとの関係をかいたもので、当時はまったく実際のことを扱った本として評判になったそうです。
  • よく三島は、実際の事件を書きますよね。『青の時代』戦後、木更津の医院の息子が起こした「光クラブ」の事件を書いたものです。
  • 三島のSF作品も面白いですよ。『美しい星』は、空飛ぶ円盤や宇宙人がでてきますが、宇宙的観点から見た人間の物語を描いています。
  • 『舞姫』は、留学先で女性に追いかけられて困った経験をただかっこよく書いてみたような感じで男ってそんな感じかなと思わせます。
  • 歴史を学ぶということは、さまざまな資料に目をとおして、バイヤスをかけず事実であろうことを見出すものですが、司馬遼太郎は資料は見ているのですが、自分の考えの裏づけをする資料ばかりを採用していたのではと思われます。でもそのおかげで竜馬像が確率して日本の宝にはなっていますが・・。

まだまだいっぱい語られていましたが、なかなかうまくピックアップできていなくてすみません。次回は6月27日(火)になりました。お時間のある方いらしてくださいね。